神の名前と一緒に検索されている言葉を調べると、新しい発見があるかもしれない。
世の人々が神の名前を何と紐付けているのかを知るため、「神話SS」に登場する神々の名前と、検索結果に表示された関連ワードを調べてみました。

▼参考:SSに登場する神々の一覧

今日のテーマは、「シタテルヒメ×〇〇」です。

  • シタテルヒメはオオクニヌシと宗像三女神の一柱タキリビメとの娘であり、タカヒメ(高比売)とも言う。アジスキタカヒコネの実の妹だが、後にその兄と瓜二つの容姿を持つアメノワカヒコと結婚する。つまり、兄であるイザナギと結婚したイザナミや、弟のスサノオにデレデレなアマテラスと肩を並べるレベル……かはわからないが、かなりのブラコンであることは確実と言えるだろう。
  • そんなシタテルヒメのブラコンっぷりが垣間見えるのが、夫・アメノワカヒコの葬儀の際のエピソードである。
    ――アメノワカヒコは、葦原の中つ国平定の命を受けて天降りしたものの、シタテルヒメと恋仲になり8年経っても復命しなかった。あげく、高天原からの遣いである雉の鳴女に矢を射かけ、タカミムスヒの返し矢に当たって命を落としてしまう。夫を亡くしたシタテルヒメが悲しみ泣く声は、遥か高天原まで届いた。
    ――シタテルヒメの泣き声を聞いたアメノワカヒコの父・アマツクニタマやアメノワカヒコの妻子たちは、居ても立っても居られずアメノワカヒコの葬儀を執り行うために天降りする。しかし、義弟の葬儀に駆け付けたアジスキタカヒコネを見つけるや否や、アメノワカヒコが生きていたと勘違いして騒ぎ出し、アジスキタカヒコネを怒らせてしまう。
    ――怒ったアジスキタカヒコネは喪屋を切り倒してその破片を蹴散らし、名乗りもしないまま飛び去ってしまうのだが、そこに現れたシタテルヒメが彼に代わってその名を明かし、賛美する歌を詠う。その歌は次のとおり。
    ――『天なるや 弟棚機(おとたなばた)の うながせる 玉の御統(みすまる) 御統に あな玉はや み谷 二渡らす 阿遅志貴高日子根神ぞ』
  • “夷振(ひなぶり)”と呼ばれるこの歌は、ざっくり言うと「天の機織女が首に掛ける玉飾りの玉ように、谷を二つ渡るほどの輝きを放つあのお方は、アジスキタカヒコネノカミです」といった意味らしい。こんな歌を恥ずかし気もなく詠ってのけるシタテルヒメ、やはりブラコンである。

福岡

  • オオクニヌシ一派の拠点と言えば出雲だが、上述したとおりシタテルヒメは宗像三女神の一柱であるタキリビメの娘であるため、九州とゆかりがあるようだ。
  • 福岡県福岡市博多区にある下照姫神社はビル街の中の小さな神社だが、縁結びの御利益があるとのことで、博多っ子たちからはパワースポットとして親しまれているらしい。「パワースポット」と言うとなんとなく軽薄な印象を持たれるかもしれないが、約1,700年の歴史を持つ、由緒正しい神社であるとのこと。
  • 現在は筑前國一之宮 住吉神社の境外摂社となっている上記の下照姫神社だが、約1,700年の歴史というのが本当であれば、もしかすると創建は住吉神社よりも古く、元々は博多周辺の守り神はシタテルヒメだったのではないか……?とも考えられる。推測どころか妄想レベルの話ではあるが、ロマンを感じたっていいじゃない、人間だもの。

卑弥呼

  • ご存知、邪馬台国の女王卑弥呼さん。日本人なら誰もが知っている知名度の高さとは裏腹に謎の多い彼女だが、その謎の多さゆえにシタテルヒメとの関連性についても考察されている模様。
  • 卑弥呼の正体について現在どういった説が有力視されているのかはわからないが、昔から有名なのは「卑弥呼=アマテラス説」であろう。これは、卑弥呼とは即ち「日巫女(ヒミコ)」を意味し、日本史上で太陽を司る高貴な女性と言えばアマテラスを置いて他にないため、「卑弥呼=アマテラス」である!というようなロジックであったと思う。では、シタテルヒメと卑弥呼の間にはどういった関連性があるのだろうか?
  • ここで、シタテルヒメの漢字表記に着目してみると……「下照比売」……天照大御神と同じく“照”の字が入っている。そうすると、シタテルヒメも「日巫女」としての性格を供えていたと考えられなくもない。また、『ホツマツタヱ』という文献ではシタテルヒメは天照大御神の妹・ワカヒルメ(稚日女尊)がオモイカネとの結婚後に改名した名であるとされている。そして、『ホツマツタヱ』では記紀と異なり天照大御神は男神とされているので、天照大御神自身は「日巫女」ではない。ならば「日巫女」となり得る女神の第一候補は、その妹・シタテルヒメであろう。
  • ……と、無理矢理関連付けてはみたものの、そもそも『ホツマツタヱ』は偽書であるというのが通説であり、記載内容は眉唾物である。とは言え、わざわざ『ホツマツタヱ』を持ち出さなくても、上述したとおりシタテルヒメは福岡にゆかりがあり、卑弥呼のいた邪馬台国も福岡周辺にあったとする説が比較的有力であることとを掛け合わせれば、シタテルヒメは邪馬台国の姫であったという推測も一応は成り立つだろうか……?

登場した神々の名は。



「漢委奴國王」のゴム印を一つ持っておくと、卑弥呼気分に浸れるのでおすすめです。
興味が湧いたら、神話SSを読みつつ、神々の名前で検索してみてはいかがでしょうか。