神の名前と一緒に検索されている言葉を調べると、新しい発見があるかもしれない。
世の人々が神の名前を何と紐付けているのかを知るため、「神話SS」に登場する神々の名前と、検索結果に表示された関連ワードを調べてみました。

▼参考:SSに登場する神々の一覧

今日のテーマは、「コトシロヌシ×〇〇」です。

恵比寿

  • コトシロヌシはオオクニヌシの御子であり、古事記では母はカムヤタテヒメ、日本書紀では母はタカツヒメことタギツヒメとされる。コトシロヌシが物語に関わってくるのは国譲りの段。タケミカヅチがオオクニヌシに国譲りを迫ったところ、オオクニヌシは自分では返答せず、息子のコトシロヌシに返答を委ねる。そこでタケミカヅチがアメノトリフネを遣わして三保関に釣りに行っていたコトシロヌシを呼びつけ、改めて国譲りを迫ったところ、コトシロヌシはそれに従う意思を示した。
  • ということで、タケミカヅチに立ち向かったタケミナカタと比較してなんとなくヘタレ感のあるコトシロヌシだが、オオクニヌシが真っ先に返答を委ねるくらいなので、オオクニヌシチルドレンの中でも屈指の実力者であったことは間違いないだろう。実際、国譲りが決まった後もオオクニヌシは、コトシロヌシを天津神に仕えさせれば自分の百八十(ももやそ=めっちゃたくさん)の子らは反逆せず服従するだろうとタケミカヅチに告げている。つまり、コトシロヌシは決してヘタレではなく、優秀であったがゆえに瞬時にタケミカヅチの力量を推し量り、負け戦をするよりも早々に服従した方が良いと判断して最善の選択をしたということ……たぶん!!
  • さて、そんなコトシロヌシだが、ご存知七福神のエビス様と同一視されている。エビスの正体はイザナギ・イザナミの最初の子であるヒルコのことであるとする説も有名だが、大黒天がオオクニヌシと同一視されていることから、それとセットのエビスはオオクニヌシの縁者であるコトシロヌシが妥当であるとする説も有力なようだ。そして、竿を持ち、鯛を抱えたエビスの姿は、三保関で釣りをしていたコトシロヌシの姿をモチーフにしているらしい。というわけで、コトシロヌシを祀る神社を参拝した際には、ちょっと奮発してヱビスビールを飲んでみてはいかがだろうか?男は黙ってサッポロビール、女性ももちろんサッポロビールである。

伊豆

  • コトシロヌシは国譲りに応じる旨を伝えた後、逆手を打って青柴垣を生み出し、その中に隠居したことになっている。どうやら植物操作系の能力者だったようだ。一方、タケミカヅチはその名のとおり雷神であるとされているが、タケミナカタとの力比べの際に手を氷の刃のようにしていることから、氷属性も兼ね備えていると考えられる。ポケモン基準で考察すると、「くさ」タイプのコトシロヌシの攻撃が「でんき/こおり」タイプのタケミカヅチに与えるダメージは等倍に留まるのに対し、タケミカヅチが「こおり」タイプの技で応戦すればコトシロヌシへのダメージは「こうかは ばつぐんだ!」になるはずだ。なるほど、確かに相性は悪い。やはり早々に降伏して青柴垣に引き籠ったのは正解だったと言える。
  • ……という冗談はさて置き、青柴垣に引き籠ったはずのコトシロヌシは、その後なぜか伊豆に渡り、伊豆の国造りをしたと言われているらしい。Wikipediaでも[要出典]となっており、確かなソースはパッと調べただけではわからなかったが、どうやら少数の人が勝手に言っているだけというわけではなく、広く信じられている有名な説であるようだ。
  • 実際、静岡県三島市の三嶋大社は三嶋大神(または三嶋大明神)を祀っているが、これはオオヤマツミとコトシロヌシの二神の総称であるとされており、コトシロヌシと伊豆周辺との関連性が窺われる。もっとも、この祭神については元々オオヤマツミだけだったのだが、江戸時代後期に国学者の平田篤胤がコトシロヌシ説を提唱し、それが支持を集めたために一時コトシロヌシに改められ、その後再びオオヤマツミ説が再興して現在の形になったらしい。そうすると、コトシロヌシが伊豆で国造りを行ったというのも江戸時代に国学者が提唱した説なのだろうか?

一言主

  • 一言主(ヒトコトヌシ)は古事記・下巻に登場する神であり、神代までしかカバーしていない当ブログの神話SSには登場しない。古事記における登場エピソードは以下のとおり。
    ――第21代雄略天皇が従者を連れて奈良と大阪の境にある葛城山に登ったところ、向かいの尾根にも雄略天皇一行とそっくり同じ装いの一行がいた。不審に思った天皇が「この国には私を置いて他に君主はいないはずだが、そこを行く貴様は誰だ?」と問いかけたところ、相手もそのままオウム返ししてきた。
    ――怒った天皇が弓に矢を番え、「名を名乗れ!互いに名を名乗って、正々堂々矢を放とうではないか!」と喧嘩を吹っ掛けると、相手は「では、私が先に問われたので私が先に名を名乗ろう。私は悪い事も一言、良い事も一言で言い分ける葛城のヒトコトヌシの大神だ!」と答えた。
    ――相手が神と知った天皇は恐れ入り、太刀や弓矢だけでなく、従者の着ていた衣服まで脱がせてヒトコトヌシに献上した。ヒトコトヌシは満足してそれらを受け取り、天皇が帰る際には山の入口まで送ってくれた。
  • ……と、ヒトコトヌシとコトシロヌシでは登場する時代がかなり大きくかけ離れており、一見何の関係も無いように思われる。しかし、どうやらこのヒトコトヌシとコトシロヌシを同一視する見方もあるようだ。その理由はおそらく「名前が似てるから」というのが有力。
  • コトシロヌシは「八重言代主」といった表記をされることもあり、その字面や国譲りの際にオオクニヌシに代わって返答したというエピソードから、“託宣の神”の性質を有していることが窺われる。従って、何でも一言で言い分けるヒトコトヌシと同一視されるのも自然な流れなのかもしれない。ヒトコトヌシとコトシロヌシが同一神かどうかはともかく、どちらも困ったときに頼ったら良いアドバイスがもらえそうだ。

登場した神々の名は。

  • エビス(恵比寿/恵比須)
  • オオクニヌシ(大国主神)
  • カムヤタテヒメ(神屋楯比売)
  • タギツヒメ/タカツヒメ(多岐都比売/湍津姫/高津姫)
  • タケミカヅチ(建御雷神/武甕槌神)
  • アメノトリフネ(天鳥船神)
  • タケミナカタ(建御名方神/御名方富命神)
  • イザナギ(伊邪那岐/伊弉諾)
  • イザナミ(伊邪那美/伊弉冉)
  • ヒルコ(水蛭子/蛭子)
  • オオヤマツミ(大山津見神/大山祇神)
  • ヒトコトヌシ(一言主大神/一事主神)


古事記ではあまり見せ場のないコトシロヌシですが、いろんな神様と習合して篤く信仰されているんですね。
興味が湧いたら、神話SSを読みつつ、神々の名前で検索してみてはいかがでしょうか。