神の名前と一緒に検索されている言葉を調べると、新しい発見があるかもしれない。
世の人々が神の名前を何と紐付けているのかを知るため、「神話SS」に登場する神々の名前と、検索結果に表示された関連ワードを調べてみました。

▼参考:SSに登場する神々の一覧

今日のテーマは、「イワナガヒメ×〇〇」です。

  • イワナガヒメはオオヤマツミの娘で、ニニギノミコトの妻として知られるコノハナノサクヤビメの姉に当たる。古事記では、ニニギがサクヤを見初めた際、オオヤマツミの意向でサクヤと共に嫁入りに行くという形で押しかけ女房的に登場した。オオヤマツミは「イワナガヒメが仕えればニニギの命は岩の如く堅固なものになり、サクヤが仕えればニニギの治世は木の花が咲くように栄えるだろう」という願を懸けて両者を送り出したのだが、ニニギは容姿が酷く醜いことを理由にイワナガヒメだけを送り返したため、以後永遠の命を失うこととなる。これがニニギの子孫、即ち天皇一族が短命であることの所以となった。
  • ニニギに拒絶されたイワナガヒメがその後どうなったのか古事記には記載されていないが、宮崎県西都市の銀鏡神社(しろみじんじゃ)には次のような伝承が残っているらしい。
    ――ニニギが妹のサクヤだけを娶ったことを悲しんだイワナガヒメは、「自分の容姿はそんなにも醜いのか」と思い、鏡で自分の姿を映してみた。するとそこに映った姿は恐ろしい龍のようであったため、イワナガヒメは鏡を投げ捨ててしまった。その鏡は龍房山の頂上の木に引っ掛かり、麓の村を明るく照らすようになったと……。これが、銀鏡神社のご神体・銀の鏡である。
  • イワナガヒメの真の姿が龍であるという説は上記の伝承が元になっているものと思われるが、詳しく調べてみると他にも説話が見つかるかもしれない。

八ヶ岳

  • 八ヶ岳は、長野県諏訪地域・佐久地域と山梨県にまたがる連峰の名前で、単独の山ではない。
  • 八ヶ岳連峰南部に位置する権現岳の山頂付近には檜峰神社という祠があり、イワナガヒメが祀られているという。権現岳の「権現様」とはイワナガヒメのことを指し、古くから富士山の「浅間様」(=コノハナノサクヤビメ)と対比されてきたのだとか。独立峰で遠くから見ても美しい富士山と、やや武骨な権現岳はこの姉妹の関係に似ていると言えなくもないか?権現岳も十分優美な山だとは思うが……。
  • 八ヶ岳の最高峰である赤岳は標高2,899mで富士山よりも900mほど低いが、大昔は八ヶ岳の方が高かったという民話がある。その内容は、概ね以下のとおり。
    ――その昔、八ヶ岳が連峰ではなく一つの大きな山だった頃、八ヶ岳の男神と富士山の女神とが背比べをした。結果は八ヶ岳の勝ちだったが、悔しがった富士山の神が八ヶ岳の頭を太い棒で殴りつけたところ、八ヶ岳が8つに割れて富士山の方が高くなってしまった。
  • 前述の民話では八ヶ岳の神は男神ということになっていたが、イワナガヒメとコノハナノサクヤビメの話にしたバージョンもある模様。ただ、姉に暴行をはたらくサクヤはあまり想像したくないので、個人的にはあくまで「男神 vs 女神」であってほしい……。

君が代

  • ご存知日本の国歌。世界一短い国歌としても知られる。
  • 『君が代は 千代に八千代に さざれ石の巌となりて 苔のむすまで』という歌詞は、確かに岩のような長寿を司るイワナガヒメを連想させるものであり、関連付けて語られるのも頷ける。
  • 福岡県糸島市の若宮神社は祭神として「苔牟須売神(コケムスメノカミ)」と「木花咲耶姫(コノハナノサクヤビメ)」を祀っているが、この「苔牟須売神(コケムスメノカミ)」はイワナガヒメのことであると言われているらしい。イワナガヒメの別名がコケムスメだとすると、君が代の『苔のむすまで』という歌詞ともリンクし、より一層関連性が感じられる。


登場した神々の名は。

  • オオヤマツミ(大山津見神/大山祇神)
  • ニニギ(瓊瓊杵尊/邇邇芸命)
  • コノハナノサクヤビメ(木花之佐久夜毘売/木花咲耶姫)
  • コケムスメ(苔牟須売神)


イワナガヒメは醜いと言われますが、龍・八ヶ岳・君が代はいずれも綺麗なイメージがあります。
興味が湧いたら、神話SSを読みつつ、神々の名前で検索してみてはいかがでしょうか。
(※今回からゴーストライター若布彦の担当になりました)

▼関連記事