神の名前と一緒に検索されている言葉を調べると、新しい発見があるかも知れない。
世の人々が神の名前を何と紐付けているのかを知るため、「神話SS」に登場する神々の名前と、検索結果に表示された関連ワードを調べてみました。

▼参考:SSに登場する神々の一覧

今日のテーマは、「アメノワカヒコ×〇〇」です。

  • アメノワカヒコは古事記の国譲り神話の中に登場する。ストーリーは以下のSSでご確認いただきたい。(3話あります。)
     

  • SSにある通り、アメノワカヒコは葦原中津国を平定するために高天原から派遣された神であるが、葦原中津国で大国主の娘・シタテルヒメと結婚して暮らし始める。8年間高天原に戻らなかったため、雉の鳴女が高天原から様子を見に行ったがアメノワカヒコは矢で射殺してしまう。そのまま高天原まで飛んで行った矢を見つけたタカミムスヒは”アメノワカヒコが裏切ったのであればこの矢に当たって死んでしまえ”と矢を投げ返し、アメノワカヒコは矢に当たって死んでしまった。というのがアメノワカヒコ関連シーンの前半部分である。
  • 矢は天之波波矢(あめのははや)、天羽々矢(あめのはばや)、天之加久矢(あめのかくや)、天真鹿児矢(あめのまかごや)など、色々な名前がある。アメノハバヤ/アメノハハヤという名前の意味は調べてもハッキリわかるものがなかったが、名称で羽根を強調するということは長距離射撃モデルだったのかもしれない。アメノカクヤ/アメノマカゴヤの「カ」は一説には鹿を指し、鹿を射る矢という意味があるようだ。
  • なお、弓は天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)とも天之波士弓(あめのはじゆみ)とも呼ばれるそうで、マカコユミは上記マカゴヤに同じく鹿を射るという意味があるとされ、ハジユミは櫨(ウルシ科の木)で作った弓という意味があるとされる。
  • 天上の神に反逆し、返し矢に当たって死ぬという神話は、『創世記』(旧約聖書の一書)にも類似のものがあり、日本には東南アジア方面から伝来したものとされる。

葬儀

  • 古事記におけるアメノワカヒコ関連シーンの後半部分では、アメノワカヒコの葬儀が描かれている。葬儀には父・アマツクニタマとその妻子が参加し、川雁を供物持ち、鷺を掃除係、カワセミを料理番、スズメを米搗き女、雉を泣き女の役に指定して、八日八晩歌い踊って弔った。雉の鳴女を殺して、雉の泣き女に弔われている…
  • 葬儀終盤、親友兼シタテルヒメの兄神というアジスキタカヒコネが現れるが、あまりにアメノワカヒコに似ているため遺族が勘違いしたことに怒り、喪屋を破壊し、蹴り飛ばしてしまうという事件が起こる。ちなみに、蹴り飛ばされた喪屋は岐阜県美濃市の喪山になったと言われる。
    この件については、以下の記事も併せて読んでいただきたい。


  • アメノワカヒコの死亡とアジスキタカヒコネ(そっくりさん)の登場(または復活)は、一年間のサイクルで太陽の力が強まったり弱まったりすることを神の死と復活として表現した話に由来するという。アメノワカヒコ神話では、前半/後半で別の神話を連結して、一つのストーリーが出来ているようである。

七夕

  • アメノワカヒコは葦原中津国平定の任務を負っていたにも関わらず、シタテルヒメとの恋に落ち、最終的に裏切り者とされて命を落とすという悲劇の主人公である。古くより彼が登場する物語作品があり、室町時代の「天稚彦草子」は中国の七夕物語に八岐大蛇・見るなのタブー・鬼・変身・逆課題婚と、色んな要素が入っていて面白そうなのであるが、この時のアメノワカヒコが彦星ポジションに当たる。(そのうち若布彦さんがSSにしてくれるかもしれない。)
  • そもそも七夕は奈良時代に中国から伝来したもので、日本の棚機津女(たなばたつめ)と混ざったとも言われる。古事記上ではアジスキタカヒコネが怒って喪屋を破壊した後、シタテルヒメが歌の中で「天なるや 弟棚機(おとたなばた)の うながせる~」と詠んでおり、言葉として存在したのはもっと古いのかも知れないが、「たなばた」の語源・意味には諸説あるらしい。
  • 「君の知らない物語」に出てくる感じで、日本人は夏の大三角形と織姫・彦星をセットで考えがちだと思うが、欧米ではどうやらそのまま七夕の概念が通じるわけではないらしい。ギリシャやフィンランドにはこれらの星にまつわる神話も存在するが、それぞれ内容は別物である。
    参考:世界の七夕行事|七夕特集|縁結び祈願 京都地主神社

登場した神々の名は。

  • シタテルヒメ(下照比売/下照姫)
  • タカミムスヒ(高御産巣日神/高皇産霊尊)
  • アマツクニタマ(天津国玉神)
  • アジスキタカヒコネ(阿遅鉏高日子根神)

今回は裏切り者役でありながら、ネタの多い神様でした。海外との比較にも興味が広がります。
興味が湧いたら、神話SSを読みつつ、神々の名前で検索してみてはいかがでしょうか。