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[“短命起源神話”の続き]
――コノハナノサクヤビメがとち狂った方法で一途な愛を証明するお話


<高千穂宮>

ニニギ「ふぅ……ようやく落ち着けるようになったな」

モブ津神A「ニニギ様が笠沙から戻ってずいぶん経ちますからね」

モブ津神B「いい加減他の皆さんも短命ネタでいじるのには飽きたのでしょう」クスッ

ニニギ「戻ってすぐの頃はさんざん老い先短い老神扱いされたからな……もううんざりだ……」


――ピンポーン!


ニニギ「むっ?誰か来たようだ」

モブ津神A「では、私がお出迎えしてまいります」イソイソ

ニニギ「今日は特に面会の予定など入っていなかったと思うが……」

モブ津神B「選挙の戸別訪問か何かじゃないですか?」

ニニギ「いや、それは一応違法だからな……?」


――バタバタバタッ!!


モブ津神A「ニニギ様、大変です!!」ワタワタ!!

ニニギ「どうした、一体何事だ!?」ガタッ

モブ津神A「お腹がはち切れんばかりに大きくなった妊婦が訪ねて来ました!!」

ニニギ「妊婦だと!?」

モブ津神B「安産祈願か何かですかね?」

ニニギ「待て待て、私は別にそういうキャラではないぞ!」



サクヤ「ニニギ様……お久しぶり……です///」ヨタヨタ

ニニギ「サ、サクヤビメではないか!!なぜここに!?」

モブ津神A「ほぉ、このお方がニニギ様が笠沙で娶られたという女神でしたか」

モブ津神B「と言うことは……こんな身重の体で笠沙から!?」


サクヤ「ニニギ様……聞いてください。私……妊娠して……ちょうど臨月になるんです……」

ニニギ「いや、それは見ればわかるが……」

サクヤ「この子はあなたの……天津神の……御子です……」

ニニギ「!?」

サクヤ「ので……私が勝手に産んで良いものでは……ありません……」

サクヤ「ですから……こうしてご報告に……来ました……」ヨタヨタ


ニニギ「ちょ、ちょっと待て!!」

サクヤ「……?」

ニニギ「そなたとは一晩しか床を共にしていないはずだ。その一晩で孕んだというのか!?」

サクヤ「はい……この子は確かに……あの夜の子……です///」

モブ津神A「ニニギ様が笠沙へお出でになった時期から考えると……」

モブ津神B「まぁ、ギリギリあり得なくはないタイミングですね」

ニニギ「そうは言っても、さすがに一晩でというのは……。他の国津神の子ではないのか?」

サクヤ「ニニギ様……私を……疑うのですか……?」ヨロッ

ニニギ「私もそなたを疑いたいわけではないが……現実的に考えて――」

サクヤ「…………のに……」ボソッ

ニニギ「えっ?何だって?」



サクヤ「私は……あの夜からずっと……ニニギ様だけを想ってきたのにっ……!!」フルフル

サクヤ「それなのに……ニニギ様は……私の愛を信じてくれないっ……!!」フルフル

ニニギ(やべっ、怒らせたか……??)

サクヤ「そうか……私の愛が……足りないんですね……」ズーン…

ニニギ(マズいな……なんとか取り繕わないと!)



サクヤ「私の……愛が……」ボソボソ…

ニニギ「いやぁ~、変なことを言ってすまなかった!そなたを信じよう」

ニニギ「そのお腹の子は確かに私の子だ、間違いない!」

サクヤ「そうだ!ニニギ様に信じてもらえるように、誓約をしましょう!!」

ニニギ「誓約?いやいや、もう信じるからそんなことしなくていいって!」



サクヤ「そこの方々!」

モブ津神A「えっ!?」

モブ津神B「我々ですか!?」

サクヤ「大至急産屋を建ててください、今すぐです!!」

モブ津神A「でしたら近くに小屋がありますので、そちらにご案内しましょう」

サクヤ「出来合いの小屋ではダメです!45坪くらいの広大な産屋を新築してください!!」

モブ津神B「45坪!?さすがにそれは……」

サクヤ「きっかり45坪でなくても構いません!“八尋殿”と呼べるスケールなら結構です!!」

サクヤ「それから、産屋には一切、戸を設けないでください」

モブ津神A「戸の無い八尋殿ですか!?そんなのどこから入るんです??」

サクヤ「入口は適当に穴でも空けていただければ結構です!」

モブ津神B「えぇ……完全に欠陥住宅じゃないですか……」

サクヤ「わかったら早く仕事に取り掛かってください。刺しますよ?」ニコッ

モブ津神A&B「はい!!承りましたぁぁぁ!!!!」スタコラサッサー!!



ニニギ「サ、サクヤ……?一体何のつもりだ??」

サクヤ「ニニギ様、待っていてください!すぐに私の愛を証明してみせます!!」

ニニギ「だからそんなもの必要ないと言っているだろう!」

サクヤ「いいえ、そういうわけにはいきません。証明しないと私が納得できないんです!!」

ニニギ「そこは納得しとけよ!あと、急に口調変わりすぎ!!」



モブ津神A「サ、サクヤビメ様ぁ~!!」ゼェゼェ…

モブ津神B「産屋の準備が整いましたぁ~!!」ゼェゼェ…

サクヤ「ありがとうございます。思ったより早かったですね」

ニニギ「いや、いくらなんでも早すぎだろ!!」

モブ津神A「仮にも神話の世界ですから、不思議パワーでどうにかなりました」

モブ津神B「というのは建前で、パロディにありがちな単なるご都合主義ですけどね」

ニニギ「それは言ったらいかんヤツでは……?」


サクヤ「ではニニギ様、私はこれから産屋に籠ります」

ニニギ「このタイミングで産気づいたのか!?」

サクヤ「えぇ、パロディにありがちなご都合主義的なヤツで」

ニニギ「だからそういうこと言うのやめろって」

サクヤ「……と、その前に宣言させていただきます」

ニニギ「??」



サクヤ「もしこのお腹の子が国津神の子ならば、無事に産まれることはないでしょう――」

サクヤ「でも、天津神の……ニニギ様の御子ならば、無事に産まれることでしょう」



ニニギ「わかったわかった!無事に産めるようにすぐ産婆を呼ぶから待ってくれ!」

サクヤ「いいえ、産婆になんて頼っていたらそれは八百長です!」

ニニギ「は……?」

サクヤ「私は私だけの力で、私の愛を証明して見せます!!」シュバッ!!

ニニギ「お、おいサクヤ!待つんだ!!」


―――――――
――――
――



<産屋前>

ニニギ「ハァ……ハァ……」ゼェゼェ

ニニギ「まったく、こんな大きな産屋、この短時間でどうやって建てたんだ……?」

モブ津神A「ですからご都合主義的なヤツですって」

ニニギ「……まぁいい。それで、入口はどこなんだ?」

モブ津神B「入口ならそこに……って、あぁっ!!」

ニニギ「どうかしたか?」

モブ津神B「入口が粘土で塗り塞がれています!!一体誰がこんなことを……?」

ニニギ「嫌な予感がするな……」



中からの声『ニニギ様!そこから離れてください!!』



ニニギ「この声は……サクヤ!この中にいるのか!?」

サクヤの声『はい、そうです。“産屋に籠ります”ってちゃんと言いましたよね?』

ニニギ「籠るにしても、入口を塞ぐ必要はないだろう!!」

サクヤの声『いいえ、こうして逃げ道を無くすことに意味があるんです!』

ニニギ「逃げ道……?一体どういう意味だ!?」

サクヤの声『とにかく、早くそこから離れてください!!』

ニニギ「何を言っているんだ、サクヤ!?……サクヤ?おい、サクヤ!!」


――モクモク


モブ津神A「ニニギ様!ニニギ様!」

ニニギ「うるさいぞ、ちょっと黙っていろ!」


――モクモクモクモク


モブ津神A「ニニギ様!早く逃げましょう!!」

ニニギ「逃げるだと?何を言っているんだ、一体!?」

モブ津神B「周りをよく見てください!!」


――モクモクモクモクモクモクモクモク!!!!


ニニギ「……」

ニニギ「な、なんだこの煙は!?産屋が燃えているのか!!??」

モブ津神A「ですから早く逃げましょう!!」ガシッ!!

ニニギ「しかし、中にはまだサクヤがっ……!!」

モブ津神B「そうは言っても、入口のない産屋から助け出すなんて無理です!ほら、早く!!」ガシッ!!



ニニギ「サ、サクヤぁぁぁぁぁ~っ!!!!」ズズズズ…←ニニギが引きずられていく音


―――――――
――――
――



<しばらく後>

――プスプス…


ニニギ「あぁ……すっかり燃え尽きてしまった……」

モブ津神A「ニニギ様……」

モブ津神B「申し上げにくいですが、あの大火事では……」

ニニギ「くっ……!サクヤ……なぜあんな血迷ったことを……」





「「おぎゃー!おぎゃー!おぎゃー!」」





ニニギ「……ん?」

ニニギ「今、赤子の産声が聞こえたような……」

ニニギ「幻聴……か……?」

モブ津神A「いえ、確かに聞こえました!」

モブ津神B「あっ!あそこを見てください!!」


――ガラッ

――ガラガラッ


モブ津神A「焼け残った瓦礫の下から……」

モブ津神B「何かが……!!」

ニニギ「あ、あれは――」



サクヤ「――――I’m back」バーン!!



ニニギ「サ、サクヤ!無事だったのかぁぁぁ!!」ダッ!!

サクヤ「はい……無事……です。それに……ほら……!」

赤子A「おぎゃー!」
赤子B「おぎゃー!」
赤子C「おぎゃー!」

サクヤ「子供たちも……元気……です♪」

ニニギ「まさかの三つ子!?」

サクヤ「これで……この子たちは天津神の御子だって……証明されましたね♪」

ニニギ「そんな証明とかどうでもいいから、もうこんな危険なことはしないでくれよ……」

サクヤ「フフッ……これでもう……ニニギ様は私だけのもの……」ニヘラ


ニニギ「それはそうと、この子たちに名前を付けてやらんとな。さて、どうしたものか……」

サクヤ「それなら……もう決めました」

ニニギ「えっ!?」


サクヤ「この……産屋の火が燃え盛ってるときに生まれた子は……ホデリノミコト」

サクヤ「この子は……私の故郷の隼人族の祖神になってほしい……」

ニニギ「いや、そういうのはちゃんと夫婦で話し合ってから――」

サクヤ「次に生まれた子は……ホスセリノミコト」

ニニギ(聞いちゃいねぇ……)

サクヤ「その次に生まれた子は……ホオリノミコト」

サクヤ「またの名は……アマツヒコヒコホホデミノミコト」

ニニギ(勝手に別名まで!?)


サクヤ「どう……ですか……?」チラッ

ニニギ「えぇ~っと……」

ニニギ(事を荒立てて、また暴走されても面倒だなぁ……)

ニニギ「うん!すごくいいなまえだとおもうよ!(白目」

サクヤ「そう……良かった……///」



サクヤ「これからは……ずっとずっと……家族一緒に過ごしましょうね……///」


―完―

【キャスト】
ニニギ
コノハナノサクヤビメ
モブ津神
赤子(ホデリ)
赤子(ホスセリ)
赤子(ホオリ)


作:若布彦(メンヘラ感の出し方がいまいちわかりません……)

・・・次のお話はこちら⇒“海幸山幸神話①

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