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[“天孫降臨神話/出発編”の続き]
――ついに葦原の中つ国へ降り立ったニニギのお話


<高千穂>

――スチャッ


ニニギ「ふぅ……」


ニニギ「ここが葦原の中つ国か……」



オモイカネ「や、やっと着いたんですね……」ゼェゼェ…

アメノウズメ「あんた、この程度でへばるなんて、ホント軟弱だねぇ~」

オモイカネ「“この程度”って……」

オモイカネ「八重の雲を押し分け、力強く道をかき分けて進むニニギ様について行くなんて、日頃から鍛えていないと無理ですよ!」

アメノウズメ「いや、だから日頃から鍛えてないのが悪いんじゃん」

オモイカネ「うっ……」グサッ



ニニギ「それでサルタヒコ、ここは一体葦原の中つ国のどの辺りなんだ?」

サルタヒコ「ここは筑紫の日向の高千穂っつ~とこだぁ」

ニニギ「筑紫?出雲ではないのか?」

サルタヒコ「なんだ?出雲へ行きたかったんだべか?」

ニニギ「いや、オオクニヌシから国譲りを受けたのだから、まずは出雲に降りるのが筋だろう?」

サルタヒコ「あぁ~そりゃ申し訳ねぇ……。出雲へ行ぐには天の浮橋まで戻らねぇと……」

ニニギ「天の浮橋が分岐点になっているのか?」

サルタヒコ「あすこからどの浮島へ飛ぶかで行先が変わんだぁ」

ニニギ「なるほど、私たちが経由して来た浮島は筑紫行きで、出雲行きの浮島は別にあったと……」



ニニギ「う~ん……戻るのも面倒だが、こんなド田舎に降臨してもなぁ……」

アメノウズメ「田舎度合いで言えば宮崎も島根も大して変わんないと思うけどね~」

オモイカネ「それはちょっと失礼な気が……」

アメノウズメ「どっちに対してだい?」

オモイカネ「そこはノーコメントで……」

ニニギ「まぁ、折角だからもう少しこの日向の地を見て回るとするか」



???「でしたら、ここから先は我々が先導を務めましょう!」

???「見知らぬ土地ではどんな危険が潜んでいるかわかりませんからね!」

ニニギ「お、お前たちは!!」



ニニギ「……誰だっけ?」

アメノオシヒ「いやいや、お供のアメノオシヒですよ!」

アマツクメ「そして同じくアマツクメです!」

ニニギ「そんな奴ら、“出発編”に出てたっけなぁ……?」

アメノオシヒ「名前は出ていなくても付いてきていたのです」

アマツクメ「葦原の中つ国を統治するのに、部下が五伴緒とその他3名だけでは力不足でしょう?」

ニニギ「なるほど、それは確かにそうだ」



ニニギ「それで、先導を買って出るということは、お主ら腕に覚えはあるのだな?」

アメノオシヒ「もちろんです!見てください、この靫(ゆき)を!!」

ニニギ「矢を携行するための入れ物だな。何やら珍しい質感だが……」

アマツクメ「これは世にも珍しい石製の靫!“天之石靫(あめのいしゆき)”です!!」

ニニギ「そうか。何と言うか……重そうだな」

アメノオシヒ「ですから、常にこれを持ち歩いて鍛えているのですよ!」ムキッ

アマツクメ「重りを身に付けるのは筋トレの基本ですからね」モリッ

ニニギ「いや、筋トレ道具を遠征に持ってくるなよ!!」



アメノオシヒ「そして、この柄頭が大きく膨らんだ“頭椎之大刀(かぶつちのたち)”!」

ニニギ「ほう……なかなかデザイン性に富んだ剣だな」

アマツクメ「この柄頭も重りになっていて、筋トレには持って来いです!」

ニニギ「って、これも筋トレ道具なのか!!」



アメノオシヒ「それからこの弓は“天之波士弓(あめのはじゆみ)”と言って――」

ニニギ「まさかこれも筋トレ用なのか……?」

アマツクメ「もちろん!これを引き絞ることで効果的に広背筋を鍛えることができます!」

ニニギ「やっぱり!!」



アメノウズメ「あれ?なんか聞いたことある名前な気が……」ヒソヒソ

オモイカネ「“国譲り神話/天若日子編①”で御祖様がアメノワカヒコさんに託した“天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)”の別名ですね……」ヒソヒソ

アメノウズメ「なんでそれをこいつらが持ってるんだい?」ヒソヒソ

オモイカネ「さぁ……?同名の別の弓かもしれません……」



アメノオシヒ「最後にこの矢!これは“天之真鹿児矢(アメノマカゴヤ)”と言います!」



アメノウズメ「ねぇ、この名前って……」ヒソヒソ

オモイカネ「“天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)”と混同しているのかもしれません……」ヒソヒソ



ニニギ「さすがに矢で筋トレはできない……よな?」

アマツクメ「ハッハッハッ、ご冗談を!矢で筋トレなどするはずがないではありませんか」

ニニギ「そ、そうだよな!矢は射る以外に使い道なんて――」

アメノオシヒ「この矢は非常に頑丈なのです。ですから、こうして任意の本数を束ねて――」


アメノオシヒ「フンッ!!!!」グググッ!!


――バキボキッ!!


ニニギ「束ねた矢を折った!?」

アメノオシヒ「こうして日々の筋トレの成果を確認するために使うのです!」

アマツクメ「ナイスバルク!次はいよいよ20本折りに挑戦だ!!」キラッ☆

ニニギ「いや、矢を浪費するなよ!!」

アメノオシヒ「浪費なんてとんでもない!」

アマツクメ「これこそ有効利用ではありませんか!」

ニニギ「どこが有効利用だ!その調子で全部折ってしまったら戦闘時に困るだろう!」

アメノオシヒ「その点はご心配なく!」ムキッ

アマツクメ「矢など無くても、この筋肉さえあれば!」モリッ


オシ&クメ「我々は無敵です!!」バーン!!



ニニギ「いや、そんなわけないだろう……」

アメノオシヒ「フッフッフッ、疑われるようでしたら教えて差し上げましょう」

アマツクメ「我々の……最大の秘密を!!」

ニニギ「秘密……?何だそれは?」

アメノオシヒ「ここだけの話―――」



アメノオシヒ「実は私、大伴連(おおとものむらじ)の祖神なのです」

アマツクメ「そして私は、久米直(クメノアタイ)の祖神です」



ニニギ「……は?いきなり何の話だ?」

アメノオシヒ「つまり、我々がこの葦原の中つ国で子孫を繁栄させることは既に約束された運命ということ!」

アマツクメ「故に、矢など無くても我々が敗れることは歴史上あり得ないのです!!」

ニニギ「いや、そうやって歴史的ネタバレを都合よく使うのはやめろ!」

アメノオシヒ「使えるものは都合よく使うのも――」ムキッ

アマツクメ「筋トレの基本です!」モリッ


オシ&クメ「Muscles won’t betray!!(筋肉は裏切らない!!)」

ニニギ(こいつらめんどくせぇ……)



ニニギ「ハァ……もういい」

ニニギ「お主らが勇ましいことは十分わかった。先導は任せよう……」

オシ&クメ「ありがとうございます!!」マッソー!!

ニニギ「しかし先導すると言っても、お主らも土地勘なんて無いだろう?」

アメノオシヒ「問題ありません!」ムキッ

アマツクメ「我々が責任を持って、皆様を日向の魅力に触れる旅へとお連れしましょう!」モリッ

ニニギ「日向の魅力……だと……!?」



ニニギ「そんなのあるのか?」チラッ

アメノウズメ「急にアタシに振らないでおくれよ!アタシが知るわけないだろ!?」

ニニギ「どうなんだ、オモイカネ?」

オモイカネ「えぇっ!?強いて言うなら……マンゴー……とか?」

アメノウズメ「あぁ!あの好んで食べるヤツの構成比が女子に偏りすぎなことで有名な!」

ニニギ「しかし、それは東南アジアあたりからのパクりだろう?」

オモイカネ「それはそうかもですが、それ以外に名の知れたものなんてありませんよ??」



アメノオシヒ「チッチッチッ、日向の魅力はそんなもんじゃあありませんよ!」

アマツクメ「我々に付いてくれば、きっと日向の真の魅力に気付かれるはずです!」

ニニギ「いや、地元の観光協会みたいなことを言ってるが、お主らも日向に来るのは初めてだろう!」

アメノオシヒ「その点はご心配なく!」ムキッ

アマツクメ「こんなこともあろうかと……」モリッ


オシ&クメ「葦原の中つ国の観光ガイドは全て筋肉にインプット済みです!」バーン!!



ニニギ「それ、単に自分たちが観光したかっただけだろ……」

アメノオシヒ「なっ……!」ギクッ

アマツクメ「決してそんなことは……!」ギクッ


アメノウズメ(図星だ……)
オモイカネ(図星ですね……)


ニニギ「我々は遊びに来たわけではないのだぞ?」

アメノオシヒ「それは重々承知のうえです!」

アマツクメ「ただ、闇雲に歩き回るよりは名のある地を巡るべきかと!!」

ニニギ「う~ん……まぁいい。今は少しでも葦原の中つ国のことをよく知りたい」

ニニギ「観光ガイドの情報でも何でもいいから、私にこの地を案内するがいい!」

オシ&クメ「承知しました!!」パァッ!!


ニニギ(あっ、やっぱこいつら観光気分だ……)


―――――――
――――
――


<後日>

アメノオシヒ「えぇ~……ということで、我々が主催いたしました今回のDC(デスティネーション・キャンペーン)」

アマツクメ「題して、“神話の地。日出づる、筑紫・日向”」


オシ&クメ「皆様、お楽しみいただけたでしょうか?」



一同「「Yeahhhhhh!!!!」」ワァァァ!!



ニニギ「最っ高の旅だったぞぉぉぉ!!」

オモイカネ「日向にはマンゴー以外にもこんな魅力があるなんて知りませんでしたよぉ~」

アメノウズメ「新しいダンスのインスピレーションが溢れ出て止まらないよ!!」


アメノオシヒ「この短期間でこんなにも皆様に日向を愛していただけるなんて……」ホロリ

アマツクメ「観光ガイドを丸暗記して予習してきた甲斐がありました……」ホロリ



ニニギ「よし、決めたぞ!私はこの地に宮を建てる!!」



オモイカネ「いやいや、ちょっと待ってください。本当にここを拠点にするんですか??」

アメノウズメ「ん?こんなにいいところなんだからここでいいじゃん。アタシは賛成~!」

オモイカネ「そうは言っても、観光地としての魅力と政治的中心地としての適性はまた別ですよ?」

ニニギ「何を言うのだ、オモイカネ!私はこの観光ツアーを通じてわかったのだ」



ニニギ「この地は韓の国へ向かい、笠沙の御崎への道筋もすっと通っている」

ニニギ「そして朝日は真っ直ぐ差し込み、夕日も照り輝く国だ」

ニニギ「この地こそ、我が統治の拠点として絶好の地に他ならない!!」



オモイカネ「いや、全然朝鮮半島に面してませんし、笠沙もかなり遠いですけど……」

ニニギ「そのくらいは誤差の範囲だ」

オモイカネ「誤差のスケール大きくないですか!?」

ニニギ「私はこの葦原の中つ国の統治者だぞ?スケールは大きい方がいいに決まっているだろう」

オモイカネ「統治者としての器と誤差の許容範囲は全然違いますから!」

アメノオシヒ「まぁまぁオモイカネ殿、プロテインでも飲んで落ち着きなさい」ムキッ

アマツクメ「筋肉を鍛えれば小さなことなど気にならなくなりますよ?」モリッ

オモイカネ「え、遠慮しておきます……」



ニニギ「まぁ、とにかくそういうことでここに宮を建てることはもう決定事項だ!」


ニニギ「アメノオシヒ、アマツクメ!お主らの筋肉を見込んで命じる!」

オシ&クメ「はっ!!」

ニニギ「地中深くの岩に太い柱を立て、千木が高天原まで届くような荘厳な宮を建てるのだ!!」


アメノオシヒ「つまり、太い柱の運搬でパンプアップし、高所作業で体幹も強化しろと!?」ジュルリ…

アマツクメ「このトレーニングプランはたまりませんね……」ジュルリ…

アメノオシヒ「その建設工事、お任せください!!」

アマツクメ「必ずや、ニニギ様のご納得のいく宮を建てて見せましょう!!」

オシ&クメ「Muscles won’t betray!!(筋肉は裏切らない!!)」


―完―

【キャスト】
ニニギ
オモイカネ
アメノウズメ
サルタヒコ
アメノオシヒ
アマツクメ


作:若布彦(ここで言う日向ってホントに宮崎県なんですか……?)

・・・次のお話はこちら⇒“猿女神話

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