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[“国譲り神話/建御雷編①”の続き]
――高天原からの使者タケミカヅチとオオクニヌシの御子との壮絶バトルのお話
<稲佐の小浜>
タケミカヅチ「さて、貴様の息子コトシロヌシは国を譲ると言ったわけだが……」
タケミカヅチ「他に文句を言うような子はいるか?」
オオクニ「え、えぇ~っと……」
オオクニ「事前に話を通すべき相手としては、一応タケミナカタという息子がいます」
オオクニ「それ以外には、国をお譲りすることに異議を申し立てるような子はいません」
タケミカヅチ「ふむ、一柱だけなら交渉もすぐ済みそうだな。それで、そいつは今どこにいる?」
オオクニ「あ~~そのぉ……あいつには私から事情を説明させてもらえませんか?」
タケミカヅチ「どういうことだ?」
オオクニ「親の私が言うのもなんですが、ちょっとあいつは喧嘩っ早いところがありまして――」
???「誰だ、誰だ?俺の国でこそこそ話してるやつぁ~よぉ?」
タケミカヅチ「むっ?」
トリフネ「ファーーーーwwwなんかでっかい岩担いだあんちゃんが来たっすよ!?」
オオクニ「タ、タケミナカタ!!」
タケミナカタ「おぅ、親父。この胡散臭い奴らは一体誰なんだ?」
オオクニ「この方々はタケミカヅチ様とアメノトリフネ様。高天原からいらっしゃった特使だよ」
タケミナカタ「高天原だぁ??チッ、いけ好かねぇな」
オオクニ「そう言うな。実は、この方々に…と言うか、天津神にこの国を譲ろうと思って……」
タケミナカタ「……は?」
タケミナカタ「「はぁぁぁぁぁぁっ!!??」」
タケミナカタ「親父、今何つった!?」
オオクニ「だから、天津神に国を譲ろうと思っていて、それでお前にも同意を――」
タケミナカタ「いや、おかしいだろ!!この国は俺のもんになるんじゃなかったのかよ??」
オオクニ「別にお前のものにするとまでは言ってないんだけど……」
タケミナカタ「でも確かに俺に譲るって言ったよなぁ!?」
オオクニ「まぁ、ある程度の支配権は譲るって言ったし、当時はそのつもりだったんだけどさ……」
タケミナカタ「だったらなんで天津神なんかに譲ろうとするんだよ!納得いかねぇ!!」
オオクニ「コトシロヌシだってそれでいいと言ってるんだ。わかってくれ、タケミナカタ!」
タケミナカタ「コトシロヌシの意見なんてどうでもいいんだよ!」
タケミナカタ「おい、そこの天津神!」
タケミカヅチ「なんだ?国を譲ることについて了承したか?」
タケミナカタ「するわけねぇだろ!この国が欲しいってんなら、俺と力比べしろ!!」
タケミカヅチ「力比べだと?」
トリフネ「!?」
トリフネ「兄貴、兄貴!ヤバいっすよ!」コソコソ
タケミカヅチ「なんだ、トリフネよ?」
トリフネ「あのあんちゃん、人間なら千人がかりでやっと動かせるかどうかってレベルの大岩を軽々持ってます!」
タケミカヅチ「そうだな。どうやら、力にはそれなりに自信があるようだ」
トリフネ「あんな怪力の持ち主と力比べなんて危ないっす!ここは一旦退いて――」
タケミカヅチ「そうはいかん。任務を達成せずに退くなど、武神の恥だ」
トリフネ「でも、そんな装備で大丈夫なんすか!?」
タケミカヅチ「大丈夫だ、問題ない」
タケミカヅチ「いいだろう。その力比べ、受けて立つ」
タケミナカタ「ほぉ~ん。いい度胸じゃねぇか」
タケミカヅチ「それで、力比べとは一体どのようにして行うのだ?」
タケミナカタ「そうだなぁ……」スススッ
タケミナカタ「まずは、俺がお前の手を掴むっ!!」ガシッ!!
タケミカヅチ「むっ!?」
タケミナカタ(へへっ!俺の自慢の怪力で、この手を握り潰してやるぜ!!)ギュッ!!
タケミカヅチ「愚かな……」
タケミカヅチ『アイシクル・エッジ』ポワァァーー
――ピキーーーーーンッ
タケミナカタ「っ!!」
タケミナカタ(なんだ!?手がいきなり氷柱……いや、剣の刃みたいに鋭くなりやがった!!)
トリフネ「出たぁっ!氷雪系最強の呼び声も高い兄貴のエンチャント・スキル!!」
オオクニ「エンチャント・スキル!?そんなのあるの??」
トリフネ「武器に鋭い氷を纏わせて氷属性を付与すると共に、単純な質量も増大させることにより飛躍的に攻撃力を高める兄貴の十八番っす!」
トリフネ「まさか素手でも使えるなんて!さすが兄貴っす!!」
オオクニ「いや、どこのゲームだよ!!」
タケミナカタ「くっ……」タジッ…
タケミカヅチ「どうした?もっと力強く握っても良いのだぞ?」
タケミナカタ(ダメだ、握れば握るほど俺のパワーがそのままダメージとして返ってくる!相性が最悪だぜ……)
タケミカヅチ「そちらが握ってこないならば……」ジリッ
タケミナカタ(マズい!ここは一旦距離をとって……)ススッ
タケミカヅチ「……縮地」シュバッ!!
タケミナカタ「なっ!?(懐に入られた!?)」
トリフネ「出たぁっ!一瞬にして相手との間合いを詰める兄貴の縮地法!!」
オオクニ「今度は武術系バトル漫画かよ!!」
タケミカヅチ「今度はこちらから貴様の手を掴ませてもらおう」ガシッ
タケミナカタ(ヤバい!早く振りほどかなきゃ――)グッ
タケミカヅチ「その力、利用させてもらうぞ」ヒョイッ
タケミナカタ「なっ!!??」フワリ
――ズシーーーーンッ!!
タケミナカタ「ぐはっ……!!」
トリフネ「出たぁっ!兄貴の合気道的なヤツ!!」
オオクニ「あのタケミナカタが、まるで若葦を引っこ抜くように軽々と投げ飛ばされるなんて……」
トリフネ「兄貴は不思議パワーで力の流れをコントロールできるんすよ!」
オオクニ「力の流れを……?」
トリフネ「それで腕を振りほどこうとする力のベクトルを捻じ曲げて、投げに利用したんす!」
オオクニ「つまり、タケミナカタの怪力が仇になったってこと!?」
トリフネ「そういうことっすね。強い力で振りほどこうとするほど、強く投げ飛ばされるんす!」
オオクニ「なんてこった……」
タケミナカタ「く、くぅぅ……」ヨロッ
タケミカヅチ「まだやるか?貴様が望むなら、いくらでも技をかけてやるぞ」ニヤリ
タケミナカタ「ヒッ……」ゾワッ
タケミナカタ「ひぇぇぇ~~~~!!」スタコラー
オオクニ「あっ!逃げた!!」
トリフネ「兄貴!追いかけましょう!!」
タケミカヅチ「やれやれ。仕方ない、ヤツの気が済むまで鬼ごっこに付き合ってやるとしよう」
トリフネ「それじゃあ俺っちに乗ってください!」
タケミカヅチ「うむ」シュタッ
トリフネ「行くっすよぉぉぉぉ~!!」ゴゴゴゴゴッ!!
――バビュンッ!!
オオクニ「……」
オオクニ「えっ?俺、置いてけぼり……?」
―――――――
――――
――
<諏訪>
タケミナカタ「ハァ……ハァ……」
タケミナカタ「ここまで来れば流石にもう大丈夫だろう……」
タケミカヅチ「ほぅ、なかなかの持久力だな。マラソン選手でも目指したらどうだ?」
タケミナカタ「なっ!?」
タケミカヅチ「鬼ごっこはもう終わりか?」
トリフネ「俺っちはまだまだ追いかけられますよ!」
タケミナカタ「あ……あわわ……」ガクガク
タケミカヅチ「では、力比べの続きをしよう。まだ貴様から“降参”の一言を聞いていないからな」
タケミカヅチ「もしかすると、“降参”と言う前にうっかり殺してしまうかもしれんが……」ニヤリ
タケミナカタ「ヒェッ…………」ガクガクガクガク
――ポキッ(心が折れる音)
タケミナカタ「ま、参りましたぁぁぁぁっ!!!!」ドゲザー!!
タケミナカタ「どうか俺を殺さないでください!もうここ以外のどこにも行きません!!」
タケミカヅチ「もう逃げる気は無いということか。……で、言うことはそれだけか?」
タケミナカタ「あ、あと……親父やコトシロヌシの言うことに文句も言いません!!」
タケミナカタ「葦原の中つ国は、天津神の御子の仰せに従ってお譲りします!!」
タケミカヅチ「よろしい。では、貴様はこのままこの地の守り神にでもなるといい」
タケミナカタ「は、はいっ!!」ビクビク
タケミカヅチ「さて、用も済んだことだ。トリフネよ、出雲へ戻るぞ」
トリフネ「がってんっす!!」
――バビュンッ!!
―――――――
――――
――
<稲佐の小浜>
オオクニ「あれからもうずいぶん経つけど、タケミナカタも天津神の二柱も戻ってこないなぁ……」
オオクニ「まぁ、そのまま戻ってこない方が平和だからいいんだけど――」
――ズシーーーーンッ!!
オオクニ「って、言ってるそばから聞き覚えのある効果音が!?」
トリフネ「ってて……例によって着陸失敗しちまいやした、すんません兄貴」
タケミカヅチ「問題ない」
オオクニ「あぁ~……お二方とも、お戻りになったんですねぇ~……」
タケミカヅチ「この我が任務を全うせずに高天原へ帰ったとでも思ったか?」
オオクニ「いえ、そういうわけでは……。それで、タケミナカタは……?」
タケミカヅチ「諏訪に置いてきた」
オオクニ「諏訪!?」
トリフネ「兄貴に降参して、もう諏訪以外のどこにも行かないって約束してたっす!」
オオクニ(つまり、国政の場には出てこないってことか……)
タケミカヅチ「さて、オオクニヌシよ」
オオクニ「はい……?」
タケミカヅチ「貴様の息子のコトシロヌシ・タケミナカタは、いずれも天津神の御子の命に背かないと言った」
タケミカヅチ「そこで改めて問おう。貴様はどうだ?」
オオクニ「えっ!?えぇ~っと……」
オオクニ「私の二柱の息子たちの言うとおり、私も天津神の御子の命に背きません」
オオクニ「この葦原の中つ国は、仰せのとおり献上いたしましょう」
タケミカヅチ「それでいい。では、早速アマテラス嬢に報告を――」
オオクニ「ちょ、ちょっと待ってください!!」
タケミカヅチ「……なんだ?まだ息子がいるなどと言わんだろうなぁ?」イラッ
オオクニ「国をお譲りするにあたって、お願いしたいことがあるのです!」
タケミカヅチ「願い事だと?」
オオクニ「はい。実は――」
オオクニ「高天原の経費で、私の住む宮を新築していただきたいのです!!」
タケミカヅチ「経費でだとぉ!?」
―完―
【キャスト】
・オオクニヌシ
・タケミカヅチ
・アメノトリフネ
・タケミナカタ
作:若布彦(神話のタケミナカタはちょっと残念ですが、諏訪大社はいいところ)
・・・次のお話はこちら⇒“国譲り神話/完結編”
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[“国譲り神話/建御雷編①”の続き]
――高天原からの使者タケミカヅチとオオクニヌシの御子との壮絶バトルのお話
<稲佐の小浜>
タケミカヅチ「さて、貴様の息子コトシロヌシは国を譲ると言ったわけだが……」
タケミカヅチ「他に文句を言うような子はいるか?」
オオクニ「え、えぇ~っと……」
オオクニ「事前に話を通すべき相手としては、一応タケミナカタという息子がいます」
オオクニ「それ以外には、国をお譲りすることに異議を申し立てるような子はいません」
タケミカヅチ「ふむ、一柱だけなら交渉もすぐ済みそうだな。それで、そいつは今どこにいる?」
オオクニ「あ~~そのぉ……あいつには私から事情を説明させてもらえませんか?」
タケミカヅチ「どういうことだ?」
オオクニ「親の私が言うのもなんですが、ちょっとあいつは喧嘩っ早いところがありまして――」
???「誰だ、誰だ?俺の国でこそこそ話してるやつぁ~よぉ?」
タケミカヅチ「むっ?」
トリフネ「ファーーーーwwwなんかでっかい岩担いだあんちゃんが来たっすよ!?」
オオクニ「タ、タケミナカタ!!」
タケミナカタ「おぅ、親父。この胡散臭い奴らは一体誰なんだ?」
オオクニ「この方々はタケミカヅチ様とアメノトリフネ様。高天原からいらっしゃった特使だよ」
タケミナカタ「高天原だぁ??チッ、いけ好かねぇな」
オオクニ「そう言うな。実は、この方々に…と言うか、天津神にこの国を譲ろうと思って……」
タケミナカタ「……は?」
タケミナカタ「「はぁぁぁぁぁぁっ!!??」」
タケミナカタ「親父、今何つった!?」
オオクニ「だから、天津神に国を譲ろうと思っていて、それでお前にも同意を――」
タケミナカタ「いや、おかしいだろ!!この国は俺のもんになるんじゃなかったのかよ??」
オオクニ「別にお前のものにするとまでは言ってないんだけど……」
タケミナカタ「でも確かに俺に譲るって言ったよなぁ!?」
オオクニ「まぁ、ある程度の支配権は譲るって言ったし、当時はそのつもりだったんだけどさ……」
タケミナカタ「だったらなんで天津神なんかに譲ろうとするんだよ!納得いかねぇ!!」
オオクニ「コトシロヌシだってそれでいいと言ってるんだ。わかってくれ、タケミナカタ!」
タケミナカタ「コトシロヌシの意見なんてどうでもいいんだよ!」
タケミナカタ「おい、そこの天津神!」
タケミカヅチ「なんだ?国を譲ることについて了承したか?」
タケミナカタ「するわけねぇだろ!この国が欲しいってんなら、俺と力比べしろ!!」
タケミカヅチ「力比べだと?」
トリフネ「!?」
トリフネ「兄貴、兄貴!ヤバいっすよ!」コソコソ
タケミカヅチ「なんだ、トリフネよ?」
トリフネ「あのあんちゃん、人間なら千人がかりでやっと動かせるかどうかってレベルの大岩を軽々持ってます!」
タケミカヅチ「そうだな。どうやら、力にはそれなりに自信があるようだ」
トリフネ「あんな怪力の持ち主と力比べなんて危ないっす!ここは一旦退いて――」
タケミカヅチ「そうはいかん。任務を達成せずに退くなど、武神の恥だ」
トリフネ「でも、そんな装備で大丈夫なんすか!?」
タケミカヅチ「大丈夫だ、問題ない」
タケミカヅチ「いいだろう。その力比べ、受けて立つ」
タケミナカタ「ほぉ~ん。いい度胸じゃねぇか」
タケミカヅチ「それで、力比べとは一体どのようにして行うのだ?」
タケミナカタ「そうだなぁ……」スススッ
タケミナカタ「まずは、俺がお前の手を掴むっ!!」ガシッ!!
タケミカヅチ「むっ!?」
タケミナカタ(へへっ!俺の自慢の怪力で、この手を握り潰してやるぜ!!)ギュッ!!
タケミカヅチ「愚かな……」
タケミカヅチ『アイシクル・エッジ』ポワァァーー
――ピキーーーーーンッ
タケミナカタ「っ!!」
タケミナカタ(なんだ!?手がいきなり氷柱……いや、剣の刃みたいに鋭くなりやがった!!)
トリフネ「出たぁっ!氷雪系最強の呼び声も高い兄貴のエンチャント・スキル!!」
オオクニ「エンチャント・スキル!?そんなのあるの??」
トリフネ「武器に鋭い氷を纏わせて氷属性を付与すると共に、単純な質量も増大させることにより飛躍的に攻撃力を高める兄貴の十八番っす!」
トリフネ「まさか素手でも使えるなんて!さすが兄貴っす!!」
オオクニ「いや、どこのゲームだよ!!」
タケミナカタ「くっ……」タジッ…
タケミカヅチ「どうした?もっと力強く握っても良いのだぞ?」
タケミナカタ(ダメだ、握れば握るほど俺のパワーがそのままダメージとして返ってくる!相性が最悪だぜ……)
タケミカヅチ「そちらが握ってこないならば……」ジリッ
タケミナカタ(マズい!ここは一旦距離をとって……)ススッ
タケミカヅチ「……縮地」シュバッ!!
タケミナカタ「なっ!?(懐に入られた!?)」
トリフネ「出たぁっ!一瞬にして相手との間合いを詰める兄貴の縮地法!!」
オオクニ「今度は武術系バトル漫画かよ!!」
タケミカヅチ「今度はこちらから貴様の手を掴ませてもらおう」ガシッ
タケミナカタ(ヤバい!早く振りほどかなきゃ――)グッ
タケミカヅチ「その力、利用させてもらうぞ」ヒョイッ
タケミナカタ「なっ!!??」フワリ
――ズシーーーーンッ!!
タケミナカタ「ぐはっ……!!」
トリフネ「出たぁっ!兄貴の合気道的なヤツ!!」
オオクニ「あのタケミナカタが、まるで若葦を引っこ抜くように軽々と投げ飛ばされるなんて……」
トリフネ「兄貴は不思議パワーで力の流れをコントロールできるんすよ!」
オオクニ「力の流れを……?」
トリフネ「それで腕を振りほどこうとする力のベクトルを捻じ曲げて、投げに利用したんす!」
オオクニ「つまり、タケミナカタの怪力が仇になったってこと!?」
トリフネ「そういうことっすね。強い力で振りほどこうとするほど、強く投げ飛ばされるんす!」
オオクニ「なんてこった……」
タケミナカタ「く、くぅぅ……」ヨロッ
タケミカヅチ「まだやるか?貴様が望むなら、いくらでも技をかけてやるぞ」ニヤリ
タケミナカタ「ヒッ……」ゾワッ
タケミナカタ「ひぇぇぇ~~~~!!」スタコラー
オオクニ「あっ!逃げた!!」
トリフネ「兄貴!追いかけましょう!!」
タケミカヅチ「やれやれ。仕方ない、ヤツの気が済むまで鬼ごっこに付き合ってやるとしよう」
トリフネ「それじゃあ俺っちに乗ってください!」
タケミカヅチ「うむ」シュタッ
トリフネ「行くっすよぉぉぉぉ~!!」ゴゴゴゴゴッ!!
――バビュンッ!!
オオクニ「……」
オオクニ「えっ?俺、置いてけぼり……?」
―――――――
――――
――
<諏訪>
タケミナカタ「ハァ……ハァ……」
タケミナカタ「ここまで来れば流石にもう大丈夫だろう……」
タケミカヅチ「ほぅ、なかなかの持久力だな。マラソン選手でも目指したらどうだ?」
タケミナカタ「なっ!?」
タケミカヅチ「鬼ごっこはもう終わりか?」
トリフネ「俺っちはまだまだ追いかけられますよ!」
タケミナカタ「あ……あわわ……」ガクガク
タケミカヅチ「では、力比べの続きをしよう。まだ貴様から“降参”の一言を聞いていないからな」
タケミカヅチ「もしかすると、“降参”と言う前にうっかり殺してしまうかもしれんが……」ニヤリ
タケミナカタ「ヒェッ…………」ガクガクガクガク
――ポキッ(心が折れる音)
タケミナカタ「ま、参りましたぁぁぁぁっ!!!!」ドゲザー!!
タケミナカタ「どうか俺を殺さないでください!もうここ以外のどこにも行きません!!」
タケミカヅチ「もう逃げる気は無いということか。……で、言うことはそれだけか?」
タケミナカタ「あ、あと……親父やコトシロヌシの言うことに文句も言いません!!」
タケミナカタ「葦原の中つ国は、天津神の御子の仰せに従ってお譲りします!!」
タケミカヅチ「よろしい。では、貴様はこのままこの地の守り神にでもなるといい」
タケミナカタ「は、はいっ!!」ビクビク
タケミカヅチ「さて、用も済んだことだ。トリフネよ、出雲へ戻るぞ」
トリフネ「がってんっす!!」
――バビュンッ!!
―――――――
――――
――
<稲佐の小浜>
オオクニ「あれからもうずいぶん経つけど、タケミナカタも天津神の二柱も戻ってこないなぁ……」
オオクニ「まぁ、そのまま戻ってこない方が平和だからいいんだけど――」
――ズシーーーーンッ!!
オオクニ「って、言ってるそばから聞き覚えのある効果音が!?」
トリフネ「ってて……例によって着陸失敗しちまいやした、すんません兄貴」
タケミカヅチ「問題ない」
オオクニ「あぁ~……お二方とも、お戻りになったんですねぇ~……」
タケミカヅチ「この我が任務を全うせずに高天原へ帰ったとでも思ったか?」
オオクニ「いえ、そういうわけでは……。それで、タケミナカタは……?」
タケミカヅチ「諏訪に置いてきた」
オオクニ「諏訪!?」
トリフネ「兄貴に降参して、もう諏訪以外のどこにも行かないって約束してたっす!」
オオクニ(つまり、国政の場には出てこないってことか……)
タケミカヅチ「さて、オオクニヌシよ」
オオクニ「はい……?」
タケミカヅチ「貴様の息子のコトシロヌシ・タケミナカタは、いずれも天津神の御子の命に背かないと言った」
タケミカヅチ「そこで改めて問おう。貴様はどうだ?」
オオクニ「えっ!?えぇ~っと……」
オオクニ「私の二柱の息子たちの言うとおり、私も天津神の御子の命に背きません」
オオクニ「この葦原の中つ国は、仰せのとおり献上いたしましょう」
タケミカヅチ「それでいい。では、早速アマテラス嬢に報告を――」
オオクニ「ちょ、ちょっと待ってください!!」
タケミカヅチ「……なんだ?まだ息子がいるなどと言わんだろうなぁ?」イラッ
オオクニ「国をお譲りするにあたって、お願いしたいことがあるのです!」
タケミカヅチ「願い事だと?」
オオクニ「はい。実は――」
オオクニ「高天原の経費で、私の住む宮を新築していただきたいのです!!」
タケミカヅチ「経費でだとぉ!?」
―完―
【キャスト】
・オオクニヌシ
・タケミカヅチ
・アメノトリフネ
・タケミナカタ
作:若布彦(神話のタケミナカタはちょっと残念ですが、諏訪大社はいいところ)
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