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[“国譲り神話/天菩比編”の続き]
――葦原の中つ国平定のために派遣された第二の使者のお話


<天安之河原>

――ザワザワ
――ザワザワザワ


アマテラス「皆さん集まったようですね……」

アマテラス「では始めましょう……」



アマテラス「第2回!」ドドドドドドドドッ



アマテラス「葦原の中つ国をオシホミミに治めさせるにはどうすればいいか会議ぃ~!!」バーン!!

モブ津神A&B「わぁ~~」パチパチ

アマテラス「わぁ~~」パチパチ

タカミムスヒ「……♪」

オモイカネ「……」


――スンッ


アマテラス「コホン……」

アマテラス「えぇ~、3年前葦原の中つ国に派遣したアメノホヒですが、未だに連絡を寄こしません」


――ザワザワ


アマテラス「どうやら国津神のオオクニヌシとやらに懐柔されてしまったようなのです」


――ザワザワザワ!?


アマテラス「ということで、次は誰を派遣するのが良いでしょうか?」

アマテラス「ではまずオモイカネさん、何か言うことはありませんか?」

オモイカネ「えぇっ!?また私ですか!?」

アマテラス「そなたの策で失敗したのですから、何か反省の一言があって然るべきでしょう」

オモイカネ「ですから、私はもっと熟考を重ねるべきだと言いましたよねぇ!?」

アマテラス「それはそれ、これはこれです!」

オモイカネ「えぇ……」

アマテラス「とにかく、この失敗を次の成功に繋げるための妙案をお願いします」



オモイカネ「えぇ~と、差し当たり読者のために改めて状況を整理しますよ?」

オモイカネ「まず、アマテラス様は葦原の中つ国を長男のオシホミミ様に治めさせたいのですよね?」

アマテラス「そのとおりです!」

オモイカネ「しかし、オシホミミ様は葦原の中つ国は騒がしいので行きたくないと仰っている」

アマテラス「はい……。我が息子ながら、困ったものです……」

オモイカネ「そこで、中つ国平定のために次男のアメノホヒ様を派遣したところ、まんまとオオクニヌシなる者に懐柔されたと」

アマテラス「わたくしの御子を洗脳するとは、オオクニヌシ……手強い相手です!」

オモイカネ「となると、ここから導き出される次の一手は~……」ポクポクポク…



オモイカネ「とりあえず、アマテラス様の御子以外の者を派遣しましょうか」

アマテラス「わたくしの御子以外??なぜそうなるのです?」

オモイカネ「え~と……どうやら中つ国平定は一筋縄ではいきそうにありませんよね?」

アマテラス「はい。だからこそ、やはり優秀なわたくしの御子を派遣した方が良いのでは?」

オモイカネ「いえ、アマテラス様の御子は高天原でも屈指の貴い神です。万が一にもこれ以上失うわけにはいきません」

アマテラス「それは……確かにそうですね……」

オモイカネ「でしょう?もしそんなことになったら、他の天津神たちも寝返るおそれが出てきます」

アマテラス「っ!?それはなんとしても避けなくては……」

オモイカネ「従って、次に派遣するのはアマテラス様の御子以外の者の方が良いかと」

アマテラス「なるほど、さすがはオモイカネさんです」

オモイカネ(まぁ、正直アマテラス様の直系はポンコツ疑惑があるから避けたいだけですけどね……)

アマテラス「それで、誰か当てはあるのですか?」

オモイカネ「えっ!?あぁ~、そうですねぇ……」



オモイカネ「アメノワカヒコあたりはどうでしょう?」

アマテラス「あの若布彦?」

オモイカネ「アメノワカヒコです。アマツクニタマノカミの御子の」

アマテラス「あぁ!アメノワカヒコですか。若く将来性のある美男子だそうですね」

オモイカネ「まぁ、もちろん他に候補がいればそちらでもいいですし、まずは熟考を重ねて――」

アマテラス「では、オモイカネさんのご提案に賛成の方、拍手を!!」


――パチパチパチパチパチ!!


アマテラス「結構です。圧倒的賛成多数と認め、この案を正式に採用します!!」

オモイカネ「えぇっ!?だから熟考を重ねた方が……」

タカミムスヒ「……♪」


――ワァァァァァ!!
――パチパチパチパチパチ!!


アマテラス「それでは、本日の会議はここまで!皆さん、お疲れさまでした!」

オモイカネ(また適当に締められてしまった……)


―――――――
――――
――


<後日>

アマテラス「そなたの働きに期待していますよ。頑張ってください!」

アメノワカヒコ「えぇ~っと……ホントに俺なんかでいいんですか?」

アマテラス「“そなたが”良いのです。オモイカネさんが仰るのですから間違いありません」

アメノワカヒコ「はぁ……」

タカミムスヒ「……」スッ

アメノワカヒコ「タカミムスヒ様……これは?」

アマテラス「天之麻迦古弓(あめのまかこゆみ)とか天之波士弓(あめのはじゆみ)とかいう弓ですね」

アメノワカヒコ「いや、どっちなんですか!?」

アマテラス「それはなんかこう……気分で適当に呼んでください」

アメノワカヒコ「えぇ……」



タカミムスヒ「……」スッ

アメノワカヒコ「あっ、ちゃんと矢も付けてくれるんですね。ありがとうございます」

タカミムスヒ「……♪」ニッコリ

アマテラス「ちなみにそれは天之波波矢(あめのははや)とか天之加久矢(あめのかくや)とかいう矢です」

アメノワカヒコ「矢にも名前あるんですか!?しかもまた統一されてない!!」

アマテラス「神話のレアアイテムなんてそういうものですよ」

タカミムスヒ「……」コクコク

アメノワカヒコ(神話ってめんどくせぇ……)



アマテラス「さて、そろそろ出発の時間ですね」

アメノワカヒコ「いや、別に電車とかじゃないんで時間関係無いんですけど……」

アマテラス「それではお行きなさい、アノワカメヒコさん!」

アメノワカヒコ「アメノワカヒコです!!」


―――――――
――――
――


<出雲>


――シュタッ!!


アメノワカヒコ「ここが葦原の中つ国か……。緑豊かできれいなところだなぁ」

アメノワカヒコ「えぇ~っと、とりあえずオオクニヌシとかいうのに会いに行けばいいんだっけ?」

アメノワカヒコ「……で、オオクニヌシの家ってどっちだ?案内板とか無いかなぁ??」



???「あの……そこのお方?」



アメノワカヒコ「ん?」

???「突然呼び止めてしまって申し訳ございません……」

アメノワカヒコ(うわっ、なんだこの娘……めちゃくちゃ可愛い!!)

???「もしご存知でしたら、オオクニヌシ様のお屋敷の場所を教えていただけないでしょうか?」

アメノワカヒコ「えっ!?いや~……あいにく俺もここには来たばっかりで……」

???「そうでしたか!それは大変失礼いたしました。お顔がそっくりでしたので、てっきり……」

アメノワカヒコ「そっくり?誰と?」

???「あっ!いえ、お気になさらないでください。それでは――」ススス


アメノワカヒコ「ちょ、ちょっと待って!」


???「はい?」

アメノワカヒコ「実は俺もオオクニヌシの家を探してるんだ。良かったら一緒に探さないか?」

???「そうだったのですか!やっぱり……どうりで赤の他神(たにん)の気がしないと思いました」クスッ


アメノワカヒコ(他神の気がしない……?それってもしかして……)ドキドキ


???「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」

アメノワカヒコ「えっ!?あ、あぁ……アメノワカヒコだよ。君は?」

???「わたくしはシタテルヒメと申します。以後お見知りおきを」シャナリ

アメノワカヒコ(か、可愛い……///)



アメノワカヒコ「そ、それじゃあ、とりあえず向こうの方に行ってみようか」

シタテルヒメ「はい♪」テクテク

アメノワカヒコ「シタテルヒメはここまで独りで来たの?」

シタテルヒメ「いえ、兄と一緒だったのですが、途中ではぐれてしまって……」

アメノワカヒコ「えっ!?だったらまずお兄さんを探した方がいいんじゃ……」

シタテルヒメ「大丈夫です。兄ならきっと先に着いているでしょうから」

アメノワカヒコ「そっか。それならお兄さんに心配かけないように急がないとね」

シタテルヒメ「頑張ります!」

アメノワカヒコ「それにしても、お兄さんとはぐれて大変だったね。心細かったでしょ?」

シタテルヒメ「はい……。ワカヒコさんにお会いできて本当によかったです」


シタテルヒメ「ワカヒコさんと一緒だと落ち着くと言うか……安心するので……///」

アメノワカヒコ「!?」


アメノワカヒコ(それって……)

アメノワカヒコ(それっておいらを誘ってるんじゃないの!?)ズキューン!!


アメノワカヒコ「お、俺も……君と一緒にいると胸が熱く――」

シタテルヒメ「?」



???「「おい、そこのお前!うちのテルに何する気だ!?」」



アメノワカヒコ「えっ?」クルッ

???「さっさとテルから離れ――」



アメノワカヒコ「!?」
???「!?」



アメノワカヒコ(お、俺がいる!!??)
???(お、俺がいる!!??)



???「な、なんだお前!ドッペルゲンガー的なヤツか!!??」

アメノワカヒコ「お前こそ何者だ!?ルパンか!?ルパン的なヤツか!!??」



シタテルヒメ「あっ、お兄さま!」

アメノワカヒコ「“お兄さま”だって!?」

???「テル!騙されるな、コイツは偽物だ!!本物の兄は俺だぞ!!」

シタテルヒメ「何を仰っているのですか?そのくらい言われなくてもわかりますよ」クスクス

シタテルヒメ「左目の下のほくろの位置が0.5mm高いですし、匂いだって違うじゃないですか」

???「お、おぅ……」タジッ

シタテルヒメ「この方はアメノワカヒコさんです。独りで途方に暮れていたわたくしを助けてくださったのですよ」

???「なんだ、別にナンパされてたわけじゃなかったのか」


シタテルヒメ「ワカヒコさん、ご紹介します。こちらがわたくしの兄、アジスキタカヒコネです」

アジスキタカヒコネ「アジスキタカヒコネだ。妹の恩神(おんじん)とは知らず、済まなかった……」

アメノワカヒコ「いや、別に恩神って言われるほどのことは何も……」

シタテルヒメ「ワカヒコさんもわたくしたちと一緒で、お父さまのお屋敷に向かっているそうですよ」

タカヒコネ「つまり異母兄弟ってことか。どうりで俺とも顔が似てるわけだ」

シタテルヒメ「まるでお兄さまが付いていてくださるようで、とても心強かったですよ♪」

タカヒコネ「おいおい、俺の方が頼りになるだろう?」

シタテルヒメ「さぁ?どうでしょうね?」クスクス

アメノワカヒコ(俺と一緒だと落ち着くって、お兄さんみたいってことだったのね……)



アメノワカヒコ「……って、ちょっと待って!」



シタテルヒメ「はい?」
タカヒコネ「ん?」

アメノワカヒコ「君たち、オオクニヌシの子供なの?」

シタテルヒメ「そうですよ?」

タカヒコネ「お前も同じだろう?」

アメノワカヒコ「いや、俺は違うんだけど……」

シタテルヒメ「えっ!?ではなぜお父さまのお屋敷に行こうとされていたのですか??」

タカヒコネ「今日は家族パーティーの日で、部外者の訪問はお断りだぞ!?」

アメノワカヒコ「あぁ~……それはそのぉ~……」


アメノワカヒコ(どうしよう……この流れで“この国を奪いに来た”なんて言えない……)

アメノワカヒコ(もしそんなことを言ったらこの娘は……)

アメノワカヒコ(俺はどうすればいいんだ……)



アメノワカヒコ(いや、俺は“どうしたい”んだ……?)



アメノワカヒコ「オオクニヌシ様に、どうしても伝えたい大事な話があるんだ」

タカヒコネ「大事な話……?一体なんだよ?」

アメノワカヒコ「そ、それは……」

タカヒコネ「怪しいな……。用件が言えないなら父上には会わせられないぞ」

シタテルヒメ「まぁまぁ、お兄さま。ワカヒコさんはわたくしの恩神ですし、ここはひとつ……」

タカヒコネ「そうは言っても、テルだってさっき会ったばかりなんだろう?」

シタテルヒメ「会ったばかりでも、害意が無いことはわかります。大丈夫です」

タカヒコネ「……テルがそこまで言うなら」

アメノワカヒコ「ありがとう、シタテルヒメ!」



タカヒコネ「それじゃあ屋敷に行くぞ。俺に付いてきな」スタスタ


―――――――
――――
――


<オオクニヌシの家>


シタテルヒメ「こんにちは~♪」

オオクニ「おっ、タカヒコネにシタテルヒメ!よく来たね」

タカヒコネ「父上、お久しぶりです!」

アメノワカヒコ「……」イソイソ

オオクニ「ん?タカヒコネ、しばらく見ない間に分裂した??」

シタテルヒメ「違いますよ、お父さま。よく見てください、左目の下のほくろの位置が――」

タカヒコネ「あっ!いや、こいつはそのぉ~……」

アメノワカヒコ「は、初めまして!俺、アメノワカヒコと言います!!」


オオクニ「えぇ~っと……誰??」

タカヒコネ「申し訳ありません、父上。せっかくの家族パーティーに部外者を連れてきてしまいました……」

オオクニ「えっ、部外者!?」

アメノワカヒコ「突然すみません……」

オオクニ「タカヒコネの兄弟とかじゃないの??てっきりまた俺の隠し子が見つかったのかと……」

タカヒコネ「また……?父上、そんなに隠し子が多いのですか……??」

オオクニ「いやぁ~……そこはノーコメントで……」



オオクニ「コホン……それで、なんでまた部外者をここに?」

タカヒコネ「どうも父上に大事な話があるとかで……」

アメノワカヒコ「非礼はお詫びします。ですが、どうしても聞いていただきたいんです!!」

オオクニ「えぇ~、今日はオフだから仕事の話はしたくないんだけどなぁ~……」

アメノワカヒコ「いえ、別に仕事の話というわけではなくて……」

オオクニ「う~ん……まぁいいや。聞いてあげてもいいけど、手短に頼むよ」

アメノワカヒコ「ありがとうございます!!」

アメノワカヒコ「実は……」



アメノワカヒコ「俺もこの家族パーティーに参加させていただきたいんです!」



オオクニ「……は?」

アメノワカヒコ「俺を……オオクニヌシ様の家族にしていただけないでしょうか!?」

タカヒコネ「はぁっ!?お前、いきなり何言って――」

アメノワカヒコ「つまり……」



アメノワカヒコ「シタテルヒメさんを俺にください!!!!」



シタテルヒメ「えっ!?」
タカヒコネ「えっ!?」
オオクニ「えっ!?」



シタテルヒメ「えぇぇぇ~っ///」


―――――――
――――
――


<高天原>

アマテラス「あれから8年……アメノワカヒコは連絡も寄こさず何をしているのでしょうか……?」

オモイカネ「これはもしかするとアメノホヒ様の二の舞かもしれませんねぇ……」

アマテラス「そ、それは困ります!!」

タカミムスヒ「……」ムスッ

アマテラス「えぇ~っと……何ですか、タカミムスヒ様?」

タカミムスヒ「……」

オモイカネ「御祖様は“アメノワカヒコは葦原の中つ国を手に入れようと画策しているようだ”と仰っています」

タカミムスヒ「……」コクコク

アマテラス「なるほど!やはり引き続き中つ国平定のために尽力しているのですね!!」

タカミムスヒ「……」

オモイカネ「“しかし、思いのほか正攻法で手に入れようとしているらしい”と仰っています」

アマテラス「正攻法?どういうことですか??」

タカミムスヒ「……」

オモイカネ「“オオクニヌシの娘を娶り、婿養子ながら必死に親孝行して相続レースを勝ち抜こうと……”」



オモイカネ「……って、えぇっ!?」

アマテラス「相続!?どんな長期的計画ですか!?」

オモイカネ「まぁ、友好的に譲り受けるというのも手ではありますが……」

アマテラス「ダメです!そんな調子ではいつまで経ってもオシホミミを送り込めないではありませんか!!」



アマテラス「これは早急に次の策を講じなくては……」


―完―

【キャスト】
アマテラス
オモイカネ
タカミムスヒ
アメノワカヒコ
シタテルヒメ
アジスキタカヒコネ
オオクニヌシ
モブ津神


作:若布彦(桃栗三年柿八年)

・・・次のお話はこちら⇒“国譲り神話/天若日子編②

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