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[“国譲り神話/天忍穂耳編”の続き]
――葦原の中つ国平定のため派遣されたアマテラスの次男坊のお話


<天安之河原>

――ザワザワ
――ザワザワザワ


モブ津神A「アマテラス様……集まりましたよ」

モブ津神B「詔(みことのり)に応えて……全天津神が!!」


――ザワザワ
――ザワザワザワ


アマテラス「皆さん……わたくしのために……」ウルッ

モブ津神A「まぁ、どちらかと言うとタカミムスヒ様のご威光あってのことですけどね」

タカミムスヒ「……」ドヤァ

アマテラス「えぇっ!?」ガーン!!

モブ津神B「タカミムスヒ様の御子のオモイカネ様も、“進んで”声掛けに奔走してくださいましたし」

オモイカネ「疲れました……」ゲンナリ

アマテラス「……まぁ、経緯はともかく、皆さん集まったことですし早速始めましょう」



アマテラス「第1回!」ドドドドドドドドッ



アマテラス「葦原の中つ国をオシホミミに治めさせるにはどうすればいいか会議ぃ~!!」バーン!!

モブ津神A&B「わぁ~~」パチパチ

アマテラス「わぁ~~」パチパチ

タカミムスヒ「……♪」

オモイカネ「……」


――スンッ


アマテラス「コホン……ということで、どなたか妙案のある方は?」

モブ津神A「アマテラス様!先ほどからオモイカネ様が何か言いたげに見ておられます!」

アマテラス「さすがオモイカネさん!既に策を練っていらしたのですね。さぁ発言を!!」ビシィッ!!

オモイカネ「えぇっ!?策と言われましても……」

アマテラス「遠慮など要りませんよ。まずはいろいろな意見を出し合うことが重要なのです」

モブ津神B「ブレインストーミングってヤツですね!」

オモイカネ「えぇ~と……それではお言葉ですが……」

アマテラス「~♪」ワクワク



オモイカネ「そもそもこの会議の目的は何ですか?」



アマテラス「……へ?」ポカーン

オモイカネ「私は御祖様から“面白いことになりそうだから神を集めろ”と言われただけでして……」

オモイカネ「具体的に何をするかといったお話は何も……」

アマテラス「タカミムスヒ様……事前にわたくしがお渡しした議案書は……?」

タカミムスヒ「……」テヘペロ

アマテラス「えぇ~っ!?」ガーン!!

オモイカネ「そういうことなので、申し訳ありませんが議題のご説明からお願いできますか……?」

アマテラス「うぅ……仕方ありませんね……」



アマテラス「では皆様、まずは前方のスクリーンをご覧ください。こちらが――」

 ・
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アマテラス「そして、オシホミミは中つ国に降りることなく、自宅へ帰ってまいりました」

オモイカネ「イエニカエッチャッタノォ!?」

アマテラス「まとめますと、葦原の中つ国は我が御子が治めるべき国であるにもかかわらず、今は猛々しく荒ぶる国津神のバーゲンセール状態なのです」

アマテラス「このままではわたくしの可愛いオシホミミを向かわせることができません」

アマテラス「従って、誰か他の神を先に遣わし、国津神たちを説き伏せ鎮める必要があります」

アマテラス「そこで、どの神を遣わせるべきか?……というのがこの会議の議題です」

オモイカネ「なるほど……」


アマテラス「ということでオモイカネさん、どう思われますか?」

オモイカネ「えぇっ!?結局私が最初に意見を出さなきゃいけないんですか??」

アマテラス「何をおっしゃいます!どう考えてもそういう流れだったではないですか」

モブ津神A「やはりまずは高天原の知恵袋、オモイカネ様のご意見を伺わないと!」

モブ津神B「よっ!インテリ眼鏡!」

オモイカネ「それ褒めてるんですか……?」

モブ津神B「褒めてますよぉ」

アマテラス「議論を活性化させるには呼び水が必要なのです。ここはひとつ、お願いできませんか?」

オモイカネ「う~ん……」ポクポクポク…



オモイカネ「オシホミミ様の代わりということであれば、やはりアメノホヒ様が無難では……?」

アマテラス「……」ポカーン

オモイカネ「“長男がダメなら次男”なんて、ちょっと安直すぎますかね?すみません、月並みな意見で……」アセアセ

アマテラス「……」ポカーン

オモイカネ「えぇ~っと、他の皆さんはどう思われますか??もっと良い意見があれば是非――」



アマテラス「す、素晴らしいご提案です!!!」ペカー!!



オモイカネ「うわっ、眩しいっ!!」

モブ津神A「アマテラス様が興奮のあまり輝きだした!!」

モブ津神B「お、落ち着いてくださいアマテラス様!!」



アマテラス「長男であるオシホミミの代わりに次男のアメノホヒを向かわせるですって!?」

アマテラス「その着眼点!」

アマテラス「斬新な発想!」

アマテラス「鋭い戦略!」

アマテラス「溢れ出るリーダーシップ!」

アマテラス「……素晴らしいではありませんか!!」

タカミムスヒ「……♪」



オモイカネ「いや、別に斬新でもないですし、リーダーシップは見せてませんが……」


アマテラス「オモイカネさんのご提案に賛成の方、拍手を!!」


――パチパチパチパチパチ!!


アマテラス「結構です。圧倒的賛成多数と認め、この案を正式に採用します!!」

オモイカネ「えぇっ!?こういうことはもっと熟考を重ねた方が……」

タカミムスヒ「……♪」


――ワァァァァァ!!
――パチパチパチパチパチ!!


アマテラス「それでは、本日の会議はここまで!皆さん、お疲れさまでした!」

モブ津神A「あっ、お飲み物はよろしければそのままお持ち帰りくださ~い」

モブ津神B「ゴミはお手数ですがあちらのゴミ箱へお願いしま~す」


――ゾロゾロ
――ゾロゾロゾロ


オモイカネ(会議って、こんな適当で良いのでしょうか……?)


―――――――
――――
――


<出雲>


――シュタッ!!


アメノホヒ「……ここが葦原の中つ国、出雲とかいうところか」

アメノホヒ「お袋に言われて嫌々降りてきたけど、案外いいとこじゃねぇか」

アメノホヒ「これなら兄貴に譲らないでこのまま俺が治めてやってもいいなぁ」ニヤリ



アメノホヒ「まぁ、まずはオオクニヌシとかいうヤツを探して話つけてやらねぇと……」

アメノホヒ「とりあえず、あそこの女にオオクニヌシについて訊いてみよう」テテテ



アメノホヒ「おい、そこの女!」

スセリビメ「あ?何だい、あんた?ナンパならお断りだよ」

アメノホヒ「ナンパじゃねぇよ!ちょっと訊きたいんだが、オオクニヌシってヤツはどこにいるんだ?」

スセリビメ「オオクニヌシの居場所……?そんなこと訊くってことは、あんたもしかして……」



アメノホヒ(やべ、めちゃくちゃ怪しまれてる!!)ヒヤヒヤ



スセリビメ「オオクニの手下になりに来たんだね!」

アメノホヒ「……は?」ポカーン

スセリビメ「新聞折込の求神広告を見て来たんだろ?」

アメノホヒ「あぁ~……えぇ~っと……」



アメノホヒ(まぁ、このまま話を合わせておいた方がスムーズに事が運びそうだな……)



アメノホヒ「そ、そんなところ……かな?」

スセリビメ「やっぱりそうかい。だったら付いてきな、ちょうど今から帰るとこだから」

アメノホヒ「お、おぅ……」テテテ



アメノホヒ(“今から帰る”……?ってことは、この女、オオクニヌシの家族か?)

アメノホヒ(ふ~ん、よく見ればなかなかいい女じゃねぇか)

アメノホヒ(国のついでにこの女もいただくってのも悪くねぇなぁ……)ジュルリ


―――――――
――――
――


<オオクニヌシの家>

スセリビメ「ほら、着いたよ」

アメノホヒ「ここがオオクニヌシの家か……思った以上にデカいなぁ……」

スセリビメ「あぁ、うちの親父からこうするように言われてね。まぁ入んな」


――ガチャッ


スセリビメ「オオクニ~、今帰ったよぉ~!」


オオクニ「おっ、スッチーお帰り~……そちらさんは?」ヒョコッ


アメノホヒ(むっ、こいつがオオクニヌシか?)

スセリビメ「ん~?よくわかんないけど、あんたの手下になりに来たんだってさ」

オオクニ「何それ……?なんで急に??」

スセリビメ「あたしが求神広告出しといたからね。言ってなかったっけ?」

オオクニ「えぇっ!?なんでそんなこと勝手に……」

スセリビメ「あんたは支配者なんだから、手下は多いに越したことないだろ」

オオクニ「そうは言ってもさぁ、せめて事前に相談くらい……」

スセリビメ「何か文句でも?」

オオクニ「いえ……特にないです……」



アメノホヒ(なんなんだこいつら……?一体どっちが格上なんだ??)



スセリビメ「おっと、忘れてた。それで、あんた名前は?」

アメノホヒ「……ん?」

スセリビメ「な・ま・え!ちゃんとオオクニに自己紹介しなよ」

アメノホヒ「俺から先に名乗れってのか?」

スセリビメ「手下になりに来たんだから当たり前だろ!」

アメノホヒ「チッ、何を偉そうに……」

スセリビメ「あぁ??」

オオクニ「あのぉ~……君、あんまりスッチーに盾突かない方が身のためだよ?」

アメノホヒ「フンッ、まぁいい。教えてやろう――」



アメノホヒ「俺の名はアメノホヒ、天照大御神の御子だ」バーン!!



オオクニ「そっか。俺はオオクニヌシだ。よろしくな、アメノホヒ」

スセリビメ「あたしはスセリビメ。オオクニの唯一無二の絶対的な正妻だよ」

アメノホヒ「……」



アメノホヒ「……って、反応薄っ!!」

オオクニ「ん?ごめん、どっかでボケてた??」

アメノホヒ「いや、俺は天照大御神の御子なんだぞ?」

オオクニ「うん、そんななんか凄そうな君が仲間になってくれて嬉しいよ」

スセリビメ「オオクニの名が高天原まで轟いてるってことだもんね」

アメノホヒ「いや、そんなわけねぇだろ!!」

オオクニ「ん?」

アメノホヒ「天照大御神の御子が来たってとこで察しろよ!!」

オオクニ「……何を?」

アメノホヒ「お前の手下になんてなるわけないってことをだよ!!」

オオクニ「えぇっ!?でも、スッチーは君が俺の手下になりに来たって……」

アメノホヒ「そんなもんここまで案内させるための嘘に決まってんだろ!」

スセリビメ「!?」

オオクニ「なっ……!?君、スッチーに嘘を吐いたのか!?」

アメノホヒ「そういうことだ。まんまと騙されて馬鹿な女だぜ」

スセリビメ「……」ゴゴゴゴゴッ!!

アメノホヒ「いいか、よく聞け!俺はお前からこの国を奪いに来たんだよ!」

オオクニ「ちょ、ちょっと待って!今ならまだ間に合う!悪い冗談はやめて――」

アメノホヒ「冗談じゃねぇっつーの!大人しく降伏しやがれ!!」

オオクニ「だから落ち着いて!!早く訂正しないとマズいことに――」



スセリビメ「あんた、手下希望者にしちゃあずいぶん威勢がいいじゃないか……」ゴゴゴゴゴッ!!



オオクニ(ま、まずい……!!)

アメノホヒ「だから手下になんかならねぇって言ってんだろ!お前らが俺の手下になるんだよ!」

スセリビメ「あたしやオオクニの上に立とうってのかい……?」ゴゴゴゴゴッ!!

アメノホヒ「へっ!天照大御神の御子である俺の配下に入れることを光栄に思うんだな!」



スセリビメ「これは、みっちり教育してやる必要がありそうだねぇ……」ゴゴゴゴゴッ!!


―――――――
――――
――


<高天原>


アマテラス「あれから3年……アメノホヒの帰りはまだでしょうか……?」

モブ津神A「気になるなら、お得意の不思議パワーで様子を見てみれば良いではありませんか」

モブ津神B「以前はよく中つ国の様子を見てらっしゃいましたよね?」

アマテラス「まぁ、アメノホヒを信じて送り出した以上、あまり覗き見するのもどうかと思いまして……」

モブ津神A「そういうところは意外と真面目なんですね」

アマテラス「我が子の成功を祈り、ただ待っていてあげるのも親の務めかと……」

モブ津神B「なんという美しい親子愛……」ホロッ



アマテラス「ですが、さすがに3年は長すぎますよね?ちょっと様子を見てみましょう!!」

モブ津神A&B「結局見るんかーい!」

アマテラス「葦原の中つ国ビジョン、スイッチオンです!」ポチッ


―――――――
――――
――


<出雲>


アメノホヒ「ふぅ~、洗濯物終わり……っと!」

アメノホヒ「次は掃除だな。今日は浴室掃除強化デーだから、そっちから片付けるか……」



オオクニ「おっ、アメノホヒ!いつもご苦労さん」

アメノホヒ「あっ、オオクニヌシ様。これからお出掛けですか?」

オオクニ「あぁ、ちょっとね」

アメノホヒ「今日は夜から雨が降るそうですよ。傘はお持ちですか?」

オオクニ「えっ、そうなの!?折り畳みは出張カバンに入れっぱなしだなぁ……」

アメノホヒ「でしたら自分が取ってまいりますので!」

オオクニ「いやいや、自分で取りに行くから気にしなくていいよぉ~」

アメノホヒ「いえ、お任せください!自分、オオクニヌシ様にお仕えするのが生きがいなので!!」

オオクニ「お、おぅ……」

アメノホヒ「では、しばしお待ちを!」ダッ!!



アメノホヒ「あはははっ!幸せだなぁ~♪」タッタッタッ!!


―――――――
――――
――


<高天原>

アマテラス「……」

モブ津神A「何と言うか……これは……」

モブ津神B「完全に懐柔……いや、調教されてますね……」



アマテラス「そ、そんなぁ……」ズーン…


―完―

【キャスト】
アマテラス
オモイカネ
タカミムスヒ
アメノホヒ
オオクニヌシ
スセリビメ
モブ津神


作:若布彦(サムネは“待ちぼうけ”のイメージと思っていただければ……)

・・・次のお話はこちら⇒“国譲り神話/天若日子編①

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