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[“大年神神話”の続き]
――葦原の中つ国を手に入れたいアマテラスに振り回される長男のお話


<高天原>

アマテラス「葦原の中つ国もずいぶん豊かになってきましたねぇ~♪」ルンルン

アマテラス「これだけ豊かなら、もう“豊葦原之千秋長五百秋之水穂国(とよあしはらのちあきながいおあきのみずほのくに)”と呼んでも差支えありませんね」

モブ津神A「アマテラス様、また下界を見ていらっしゃるのですか?」

アマテラス「はい。わたくしの日々の楽しみですから♪」

モブ津神B「毎日毎日、よく飽きませんねぇ……」

アマテラス「飽きるはずがないではありませんか。国が豊かになってゆく様を見守るのは面白いものですよ」

モブ津神A「そういうものですかねぇ……?」

モブ津神B「我々の国というわけでもないのに……」

アマテラス「それに、あのオオクニヌシという者、なかなか見どころがあります」

モブ津神A&B「えっ!?(アマテラス様が国津神を褒めるなんて……)」


アマテラス「国作りの手腕もさることながら、見目もそれなりに整っていますし」

モブ津神A&B「なっ……!?(アマテラス様が男神のルックスに興味を!?)」



アマテラス「はぁ~……///」ウットリ

モブ津神A&B(この深いため息は……まさか恋心に目覚め――)



アマテラス「さすが、わたくしの愛しいスサノオの子孫ですねぇ~……///」ウットリ

モブ津神A&B(相変わらずブラコン拗らせとるんかーい!!)ズコォッ!!

アマテラス「そなたたち、突然這いつくばったりしてどうかしたのですか?」

モブ津神A&B「……いえ、なんでもありません」

アマテラス「そうですか。それなら良いのですが……」



アマテラス「そうです!いい機会ですし、そなたたちもオオクニヌシをよく見てごらんなさい」

モブ津神A「いえ、結構です」

モブ津神B「私たちも暇ではないので」

アマテラス「そう言わずに。今そちらの大型ディスプレイに映像を回しますからね」ポチポチ


――パッ


モブ津神A「ほぉ~、これはなかなか」

モブ津神B「確かにイケメンですね」

アマテラス「そうでしょう、そうでしょう♪目元なんてスサノオの面影があると思いませんか?」

モブ津神A「う~ん……言われてみればわかるような、わからないような……」

モブ津神B「いずれにせよ、これだけイケメンの子孫が生まれるということは、やはり――」

アマテラス「“スサノオは最高のイケメン!”ということですね?」

モブ津神B「……それもありますが、スサノオ様の奥方もさぞ美しかったのでしょうね」



アマテラス「……」ポカーン

モブ津神B「……アマテラス様?」



アマテラス「そなた、今何と言いましたか……?」ポカーン

モブ津神B「えっ?ですから、スサノオ様の奥方もさぞ美しかったのでしょうね、と……」

アマテラス「スサノオの……妻……?スサノオの……」ポカーン





アマテラス「「スサノオの妻ぁぁぁぁぁぁぁっ!!!???」」ゴゴゴゴゴッ!!





モブ津神A「お、落ち着いてください、アマテラス様!!」

モブ津神B「私、何かおかしなことを言いましたか!?」


アマテラス「わたくしとしたことが、重大な事実を見落としていました……」

アマテラス「あのオオクニヌシという者、スサノオの子孫であると同時に……」

アマテラス「スサノオをたぶらかした女狐の子孫でもあるということではありませんか!!」


モブ津神A「女狐って……スサノオ様が自らのご意思でお選びになった奥方では?」

アマテラス「スサノオがわたくし以外の女に惹かれるなどあり得ません!!」

モブ津神A「えぇ……」

モブ津神B(アマテラス様はスサノオ様に引かれる方では……)


アマテラス「そんな女狐の子孫が水穂国を治めようとしているなんて、由々しき事態です!」

モブ津神A「つまり、アマテラス様が下界をお治めになるおつもりですか!?」

アマテラス「いいえ、わたくしは父上より“高天原を治めよ”と仰せつかっている身。ここを離れるわけにはまいりません」

モブ津神B「では、誰が下界を治めるべきだと……?」

アマテラス「それはもちろん――」

モブ津神A&B「……(ゴクリ」



アマテラス「わたくしとスサノオの愛の結晶、アメノオシホミミを置いて他にありません!!」

モブ津神A「いや、確かにオシホミミ様はアマテラス様とスサノオ様の誓約で生まれた神ですが……」

モブ津神B「別にお二方の愛の結晶というわけでは……」

アマテラス「何を言っているのです!誓約とは互いに愛を誓い合う儀式ですよ?」

モブ津神A「そんなの初耳ですよ!!」

モブ津神B「勝手に誓約の定義を変えないでください!!」


アマテラス「「お黙りなさい!!」」ギロッ

モブ津神A&B「ひぃっ!!」ビクッ



アマテラス「とにかく、わたくしはもう決めました。これは決定事項です!」


アマテラス「豊葦原之千秋長五百秋之水穂国は、我が御子マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミが治めるべき国です!!」バーン!!


―――――――
――――
――


<オシホミミの部屋>

アマテラス「ということでオシホミミ、早速水穂国へ降りてください」

オシホミミ「そんな急に言われましても、私どちらかと言うとインドア派なので……」

アマテラス「いいから早く行くのです!水穂国の支配者は、そなたしかあり得ません!!」グイグイ

オシホミミ「私なんてただのコミュ障ですし、絶対無理ですって!!」イヤイヤ

アマテラス「大丈夫です!そなたはあのスサノオの唾液にまみれて生まれてきたのですよ?」グイグイ

オシホミミ「なんですか、それ!?理由になってませんよ!!」イヤイヤ

アマテラス「つべこべ言わずに行くのです!でないと秘密のポエムをご近所にばら撒きますよ!」サッ

オシホミミ「な、なぜそれを!?」

アマテラス「引き出しの二重底ごときでわたくしの目を欺けると思ったら大間違いです!」フフンッ

オシホミミ「くっ……なんて卑劣な……」ワナワナ…

アマテラス「もう観念なさい。水穂国だって、降りてみたら意外と楽しいかもしれませんよ?」

オシホミミ「うぅ……わかりましたよぉ……」ガクッ

アマテラス「決まりですね♪」



アマテラス「さぁ行くのです、我が御子マサカツアツカッツぁ……オシホミミ!!」バーン!!

オシホミミ「大事なところで噛まないでください!!」

アマテラス「不覚です……」シュン

オシホミミ「まったく……。それじゃあ行ってきますね、母上」

アマテラス「行ってらっしゃ~い」バイバーイ

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アマテラス「さて、オシホミミも行ったことですし、書類の整理でも始めますか」ヨッコラショ


――ガラッ


オシホミミ「ただいま戻りましたぁ~……」

アマテラス「お帰りなさい、オシホミミ。おやつなら冷蔵庫にプリンが……」



アマテラス「……って、なにしれっと帰ってきているのですか!?」

オシホミミ「バレましたか……アハハ…」

アマテラス「“アハハ”じゃありません!水穂国へ降りなさいと言ったでしょう!!」

オシホミミ「いや、私だってちゃんとそのつもりで天の浮橋まで行ったんですよ?」

アマテラス「そこまで行って引き返してきたと言うのですか!?一体なぜ??」

オシホミミ「それはそのぉ~……」



オシホミミ「ちょっと……酔いまして……ウプッ…」

アマテラス「“酔った”って……お酒でも飲みながら行ったのですか!?」

オシホミミ「違いますよ。これはいわゆる“人酔い”と言うか“神酔い”と言うか……」

アマテラス「何ですか、それ?」

オシホミミ「つまり、私はクラブとかディスコとか、ゴミゴミして騒がしいところは苦手なんです」

オシホミミ「今の水穂国は酷く騒がしすぎます!あんなところにはとても行けません!!」

アマテラス「ですから、そなたがこれからそれを平定して――」

オシホミミ「お断りします!」キッパリ

アマテラス「えぇっ!?」

オシホミミ「あんなところへ行くくらいなら、公衆の面前で秘密のポエムを朗読した方がマシです!」

アマテラス「そこまで……!?」

オシホミミ「とにかく、私は水穂国がもっと静かになってからでなければ行きません!断じて!!」



アマテラス「そ、そんなぁ……」ズーン…


―完―

【キャスト】
アマテラス
アメノオシホミミ
モブ津神


作:若布彦(オシホミミもやっぱり、母親譲りの引きこもり気質なんですね)

・・・次のお話はこちら⇒“国譲り神話/天菩比編

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