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[一応、“大物主神話”の続き]
――なぜか唐突に挟まれるオオトシノカミの系譜のお話


ウカノミタマ「今年も残すところあとわずかですねぇ~」ヌクヌク

ウカノミタマ「この時季はやっぱり、こたつでお茶とみかんに限ります~」ズズズッ

白狐「ウカ様~、企業は年末商戦で大忙しなのに、こんなところでくつろいでいていいんですか?」

ウカノミタマ「近頃は商業の神っぽく扱われていますが、私は元々農耕神なのですよ?稲刈りが終わったら少しくらい休んだって……ねぇ?」

白狐「まぁ、普段のお忙しさを考えれば、たまには息抜きも必要かと思いますが……」

ウカノミタマ「そうそう♪大丈夫ですよ、年明けから本気出しますから~」ズズズッ


――ピンポーン


白狐「おや、お客様みたいですよ?」

ウカノミタマ「ん~……」モゾモゾ…

白狐「……ウカ様?」

ウカノミタマ「私は“こたつむり”になりました……」グデーン

白狐「こたつに潜り込んで居留守を決め込もうとするのはやめてください、大人げない」


――ピンポピンポーン


白狐「ほら、お客様がお待ちですよ。早く出てください!」

ウカノミタマ「……あなた、神使は何のためにいるかわかっていますか?」

白狐「何のためって……神使に来客対応をしろと!?」

ウカノミタマ「どうせ年末恒例のカレンダー配りでしょう?私はいないとでも言っておいてください」

白狐「そういうわけには……」

ウカノミタマ「誰がなんと言おうが、私はここを離れません。断じて」

白狐「はぁ……仕方ありませんねぇ……」ヨッコラショ

ウカノミタマ「~♪」ヌクヌク


――ピンポピンポピンポーン!!


白狐「はいは~い、今行きますよぉ~」

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

ウカノミタマ「……」ウトウト…


――バタバタバタッ!!

――ガラッ!!


白狐「ちょ、ちょっと!勝手に入られては困ります!!」

???「ウカ!ウカはいるか!?」アセアセ

ウカノミタマ「ふぇっ!?ど、どちら様ですか!!??」ガバッ

???「寝ぼけるな!私の顔を忘れたか?もしそうなら、須賀の宮神話のエピローグから読み返せ!」

ウカノミタマ「あっ、兄さま」

白狐「すみません、ウカ様。オオトシ様が強引に……」

ウカノミタマ「構いませんよ。あなたはちょっと下がっていてください」

白狐「はい、それでは……」スススッ



ウカノミタマ「それで兄さま、突然どうされたのですか?」

オオトシ「ウカよ、悪いがしばらく匿ってくれ!」

ウカノミタマ「えぇっ!?急にそんな……と言うか、兄さまはこの時季お忙しいのでは??」

オオトシ「あぁ。私は年神だからな、年始に国中の家々を回ってやるための準備で、この時季は大忙しなのだが……」

ウカノミタマ「でしたらこんなところで油を売っていないで、早くお仕事に行かれた方が……」

オオトシ「ダメだ!今外に出るのは危険すぎる!!」

ウカノミタマ「危険……?」

オオトシ「ちょっと事情があってな。……ウカよ、年末年始の定番ニュースと言えば何だ?」

ウカノミタマ「それはもちろん紅白歌合戦とか、箱根駅伝とか……」

オオトシ「違う!もっとこう……インフラ的なヤツだ」

ウカノミタマ「いん……ふら……?」

オオトシ「さらに言うと、交通系だ。高速とか、新幹線とか」

ウカノミタマ「交通系……」ポクポクポク…



ウカノミタマ「あっ!帰省ラッシュ!」ピコーン!!

オオトシ「そう!それだ、それ!」

ウカノミタマ「と言っても、私たちには縁のない話ですよね。神は帰省なんてしませんし」

オオトシ「それが、どこぞの神が突然“我々も帰省してみたくね?”などと言い出してな……」

ウカノミタマ「えぇ~、めんどくさいですよぉ~。父さまのいる根の堅洲国って遠いですもん」

オオトシ「だろう?だから私も“根の堅洲国は遠いから、帰省なんてする必要はない”と言ったんだ」

ウカノミタマ「至極妥当な意見ですね。だいたい、兄さまには年始に帰省している暇はありませんし」

オオトシ「そうしたら私の妻たちが……」

ウカノミタマ「義姉さまたちが??」

オオトシ「揃って“根の堅洲国が無理なら、是非わたくしの実家に帰省を!”と言い出したんだ!!」

ウカノミタマ「ほぇ~、そういう発想になるのですね」



ウカノミタマ「まぁ良いのではないですか?年始のお勤めが終わったら行かれてみては?」

オオトシ「バカ!そんな簡単な話ではない!!」

ウカノミタマ「バカって言われた……」シュン…

オオトシ「いいか?まず私には妻が三柱いるんだ」

ウカノミタマ「イノヒメ様と、カグヨヒメ様と、アマチカルミヅヒメ様ですよね?」

オオトシ「うむ、いずれも大切な妻だ。しかし、同時に全員の実家に行くことはできない」

ウカノミタマ「順番に回れば良いではないですか」

オオトシ「それはそうなんだが……最初に誰の実家に行くかが問題になってな……」

ウカノミタマ「なるほど。“最初に実家に行く”ってことは、正妻認定みたいなものですものね」

オオトシ「困ったものだ……」ズーン…



ウカノミタマ「と言うか、これを機にきちんと正妻を決めてはいかがです?」

オオトシ「無理だ!彼女たちにはそれぞれ思い入れもあるし、優劣など付けられるはずがない!」

ウカノミタマ「えぇ~……正妻を決める甲斐性もないなら、三柱も娶らなきゃ良かったのに」

オオトシ「うっ……そうは言っても、もう娶ってしまったものは仕方ないじゃないか!」

ウカノミタマ「じゃあもう単純に、娶った順で序列を決めちゃいましょう!」

オオトシ「娶った順か?それなら、最初はイノヒメだが……」

ウカノミタマ「イノヒメ様はカムイクスビノカミ様の娘さんでしたよね?」

オオトシ「うむ。カムイクスビ殿にはお世話になっているし、早めに年始の挨拶に伺うのは吝かではない」

ウカノミタマ「確か、イノヒメ様との間には御子もたくさんいらっしゃいましたよね?」

オオトシ「まぁ、オオクニミタマ、カラ、ソホリ、シラヒ、ヒジリと、五柱の子がいるが……」

ウカノミタマ「でしたら正妻はイノヒメ様に決まりですね!」

オオトシ「いやいや、そんな簡単には決められん!」

ウカノミタマ「なぜです?最初の奥さんで、それだけ御子も多いなら正妻として申し分ないのでは?」

オオトシ「子の数で言ったら、アマチカルミヅヒメとの子の方が倍近くいるしなぁ……」

ウカノミタマ「そんなに差が!?じゃあとりあえず序列は保留ということで……」



ウカノミタマ「次行きましょう、次!」

オオトシ「次に娶ったのはカグヨヒメ。彼女との子は、オオカグヤマトミ、ミトシの二柱だ」

ウカノミタマ「御子が二柱だけだとちょっと見劣りしますね」

オオトシ「しかし、“ミトシ(御年)”はその名の通り、私と同じ年神なのだよ」

ウカノミタマ「兄さまの後継者的な存在ということですか?」

オオトシ「後継者と言うか、今ではすっかり共に年始の仕事をする相棒ポジションになっているな」

ウカノミタマ「う~ん……そのミトシ様のお母上となると、蔑ろにはできませんね……」

オオトシ「だろう?」

ウカノミタマ「……じゃあカグヨヒメ様もとりあえず保留で」



オオトシ「最後に娶ったアマチカルミヅヒメとの関係は、先ほども言ったとおりだ」

ウカノミタマ「子だくさんとのことでしたね?」

オオトシ「うむ。まずオキツヒコとオキツヒメ。オキツヒメはオオヘヒメとも言うな」

ウカノミタマ「多くの人々が祀っている、竈の神ですね」

オオトシ「次にオオヤマクイ、またの名はヤマスエノオオヌシだ。こいつは近江の比叡山にいる」

ウカノミタマ「あれ?近江ではなく別のところにいらっしゃるという話も聞いたような……」

オオトシ「葛野の松尾にいる鏑矢を持つ神もオオヤマクイのことだな」

ウカノミタマ「はぇ~、一柱二役とは大変そうですねぇ~」

ウカノミタマ(紛らわしいので、どっちがメインかハッキリしていただきたいですが……)


オオトシ「それからニワツヒ、アスハ、ハヒキ、カグヤマトミ、ハヤマト、ニワノタカツヒ、オオツチを生んで……」

ウカノミタマ「うぅ~……そんな一度に言われても覚えきれません……」

オオトシ「ちなみに、オオツチはまたの名をツチノミオヤとも言うぞ」

ウカノミタマ「そんな追加情報いりません!私の頭をパンクさせる気ですか!?」



オオトシ「まぁ、とにかくアマチカルミヅヒメとの間には九柱の子がいるわけだ」

ウカノミタマ「えぇ~と……あれ?なんか数が合わなくありませんか?」

オオトシ「ん?」

ウカノミタマ「先ほど挙がった御子のお名前、全部で十柱だったような……」

オオトシ「いや、九柱で合っているぞ?」

ウカノミタマ「えっ?でも……ひぃふぅみぃ……」

オオトシ「数えるな、感じろ!とにかく九柱なものは九柱なんだ!古事記にもそう書いてある!」

ウカノミタマ「そんな強引な……」

オオトシ「とにかく、私の子はオオクニミタマからオオツチまでの計十六柱だ。良いな?」

ウカノミタマ「う~ん……なんか腑に落ちませんけど、わかりました」



オオトシ「まったく、ウカが子の数がどうのと言い出すから、すっかり話が脱線してしまった」

ウカノミタマ「そうでした!正妻を決める話だったはずなのに……」

オオトシ「まぁいい、脱線ついでに孫の話も聞かせてやろう」

ウカノミタマ「話戻さんのか~い!!」ビシィッ!!


オオトシ「アマチカルミヅヒメとの子のハヤマトはオオゲツヒメを娶ってな」

ウカノミタマ「オオゲツヒメって、どのオオゲツヒメですか?父さまに殺された方じゃないですよね?」

オオトシ「……」


オオトシ「考えるな、感じろ!」

ウカノミタマ「適当にはぐらかさないでください!」

オオトシ「とにかく、オオゲツヒメとの間にワカヤマクイ、ワカトシ、妹のワカサナメ、ミヅマキ、ナツタカツヒ、アキビメ、ククトシ、ククキワカムロツナネを生んだのだ」

ウカノミタマ「あぁ~……また頭がパンクしそうな数……」クラクラ…

オオトシ「ちなみに、ナツタカツヒはまたの名をナツノメとも――」

ウカノミタマ「ですから追加情報はいりませんって!そんなに覚えきれませんから!!」

オオトシ「まぁ、要するにハヤマトの子はワカヤマクイからククキワカムロツナネまでの八柱だ」

ウカノミタマ「今度はちゃんと数合ってますよね……?」

オオトシ「おい、兄の言うことが信じられないとでも言うのか!?」

ウカノミタマ「あまり」

オオトシ「ぐぬぬ……」


――ピンポーン


オオトシ「むっ!この気配は……」

ウカノミタマ「来客みたいですね。まぁ、神使が出てくれるでしょうから私たちは引き続き――」

オオトシ「いかん!すぐに神使を止めるのだ、ウカ!!」

ウカノミタマ「ほぇ?」


――ドタドタドタドタッ!!

――ガラッ!!


イノヒメ「やっと見つけましたわよ、あなた!」

カグヨヒメ「私たちから逃げられるとでもお思いですか?フフフッ♪」ニッコリ

アマチカルミヅヒメ「念のため発信機を仕込んでおいて正解でしたね」

オオトシ「ひ、ひぃぃっ!!!」ビクッ!!

ウカノミタマ「ね、義姉さま方!?」


イノヒメ「さぁ帰りますわよ、“わたくしたち”の実家に!!」ガシッ

カグヨヒメ「妥協策として、全員の本籍を一ヶ所にまとめましたの」

アマチカルミヅヒメ「これならみんなで一緒に帰省できますわね?」

オオトシ「ま、待て!私には年始に各家庭を回るという重要な仕事が……」

イノヒメ「仕事と妻と、どちらが大切なのですか!?」

カグヨヒメ「今年は何としても、一緒に年越しをしていただきますわよ?」

アマチカルミヅヒメ「年明けまでしっかり監禁させていただきますからね♪」

オオトシ「ウカ~!助けてくれぇぇぇ!!!」ズルズル

ウカノミタマ「兄さま……」



ウカノミタマ「よいお年を~」バイバーイ

オオトシ「そんなぁぁぁ~~~!!!!」ズルズル

 ・
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――シーン


ウカノミタマ「年末はやっぱり、こたつでお茶とみかんに限りますねぇ~」ズズズッ


―完―

【キャスト】
ウカノミタマ
オオトシ
イノヒメ
カグヨヒメ
アマチカルミヅヒメ
白狐


作:若布彦(古事記原文にはただ系譜が載っているだけで、こんな話はありません。ごめんなさい)

・・・次のお話はこちら⇒“国譲り神話/天忍穂耳編

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