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[“須勢理毘売神話”の続き]
――遥々九州まで浮気に出掛けたオオクニヌシのお話


<海上>

―ザパーン!!

―ザパーン!!


オオクニ「美~女~のため~な~ら、エンヤ~コ~ラ!」コキー


オオクニ「嫁取りの~ためな~ら、エンヤ~コラ セェイ!!」コキー


オオクニ「もひとつ~~~おまけ~に、エンヤ~コ~ラィ!」コキー



オオクニ「ハァ…ハァ……島はまだか……?」

オオクニ「さすがに玄界灘の荒波をこんな小さな手漕ぎ船で渡るのは無謀だったかなぁ……」

オオクニ「でも、ここまで来て諦めるわけにはいかない!」

オオクニ「せっかく愛のキューピッドたちが俺をここまで導いてくれたんだ……」


―――――――
――――
――


<回想:宗像>

オオクニ「みなさんおはようございます、オオクニヌシです」キリッ

オオクニ「今日私は、出雲から遠く離れた筑紫国に来ています」

オオクニ「なぜって?」



オオクニ「もちろん、博多美人(神)に会うためさ☆」キラッ



オオクニ「“スセリビメはどうした?”とか“大和に行くんじゃなかったのかよ!”とかいうツッコミはナンセンス!」

オオクニ「今回はなんか外伝的なヤツだから!」

オオクニ「それじゃあ早速中州に繰り出して~♪」



オオクニ「……と、言いたいところなんだけど、まだ博多まではだいぶ遠いんだよなぁ……」

オオクニ「ちょっとそこの宮で休ませてもらおう」スタスタ


―――――――
――――
――


<回想:辺津宮>

―ピンポーン


オオクニ「ごめんくださ~い」



???「はぁ~い」ガチャッ



オオクニ「!?」ズキューン!!

???「あの、どちら様ですか?」

オオクニ「君の名は……?」

???「イチキシマヒメですが……私が誰かも知らずに来たのですか??」

オオクニ「イチキシマヒメ!君はなんて美しいんだ、結婚してくれ!!」

イチキシマヒメ「えぇっ!?い、いきなり何を言い出すんですか???」

オオクニ「俺はオオクニヌシ、つまりいずれこの中つ国の支配者になる者だ!」

イチキシマ「は、はぁ……」

オオクニ「俺と結婚すれば君はファーストレディになれるんだよ?素敵だろう??」

イチキシマ「いえ、私は平凡な感じでいいので……」

オオクニ「そんなもったいない!」

オオクニ「イチキシマヒメ、君は輝いている!大丈夫、悪いようにはしないから!」ズズイッ

イチキシマ(えぇ……何この変質者、めんどくさい……)ドンビキー

オオクニ「さぁ、俺の胸に飛び込んで――」



イチキシマ「オ、オオクニヌシ様!!」

オオクニ「なんだい?マイスイートハニー♪」

イチキシマ「お話は大変光栄なのですが、あなた様には私よりもっとふさわしい女性がいます!」

オオクニ「な、なんだって!?それは一体誰だい??」

イチキシマ「それは私の妹です!!」

オオクニ「妹!?君には妹さんがいるのか!!」ガタッ

イチキシマ「はい!妹の美しさと言ったら、私なんかとは比べ物にならないくらいですよ!」

オオクニ「妹さんもここで一緒に暮らしているのかい?」

イチキシマ「いえ、元々古事記ではここ辺津宮が妹の宮だったのですが、日本書紀で私が妹になったりとか色々あって宮を交換したので、今はここにはおりません」

オオクニ「何それ怖い……」

イチキシマ「まぁ、ほぼほぼ同時に生まれた姉妹なのでよくあることですよ」

オオクニ「ふ~ん……。それはともかく、今の妹さんの宮はどこにあるんだい!?」

イチキシマ「“タギツヒメ”のいる中津宮は、神湊からフェリーで25分ほど行った大島にあります」

オオクニ「なるほどわかった、ありがとう!」シュバババッ!!



イチキシマ「はぁ……助かりましたぁ……」ホッ


―――――――
――――
――


<回想:中津宮>

―ピンポーン


オオクニ「ごめんくださ~い!」



???「あいよ~」ガチャッ



オオクニ「君が“タギツヒメ”ちゃんだね!」

タギツヒメ「あ?誰だ、てめぇ?」

オオクニ「イチキシマちゃんとはちょっとタイプは違うけど、なるほど確かに美人だ……」ジュルリ

タギツヒメ「なんだ、“イチ姉”の知り合いか?用があるならさっさと言いな」

オオクニ「結婚してくれ!!」

タギツヒメ「はぁ!?いきなり何だよ、頭おかしいんじゃねぇのか??」

オオクニ「俺はオオクニヌシ、いずれこの中つ国の支配者になる者だ!」

タギツヒメ「お、おぅ……」

オオクニ「そんな俺にはタギツヒメこそふさわしいとイチキシマちゃんに言われて来たんだよ」

タギツヒメ(チッ…イチ姉のヤツ、アタシを売りやがったな……)

オオクニ「さぁ、俺の胸に飛び込んで――」



タギツヒメ「ちょっと待ちな!」

オオクニ「どうしたんだい?恥ずかしがらなくていいんだよ、さぁ早く!!」

タギツヒメ「悪いけど、アタシは権力とか支配とか、そういうのには興味ないんだ」

オオクニ「えぇっ!?」ガーン!!

タギツヒメ「そもそもアタシは誰かの上に立つって柄じゃないしな」

オオクニ「でもさ、日本書紀だとお姉さんになったりするんでしょ?だったら上の立場にもすぐ慣れるよ」

タギツヒメ「それだよそれ!」

オオクニ「???」

タギツヒメ「確かに姉妹の生まれ順は文献によってまちまちだけど、アタシだけは長女になったことないんだよね」

オオクニ「……まさか、三姉妹!?」

タギツヒメ「そーゆーこと。長女説が有力な“キリ姉”は、アタシよりずっとファーストレディにふさわしいぜ?」

オオクニ「……(ゴクリ」

タギツヒメ「キリ姉の宮はこの先の沖ノ島ってとこにあんだけど、こっからだと結構遠いんだよなぁ~」

オオクニ「……」

タギツヒメ「でも、だからこそわざわざそこまで会いに行く男がいたら、キリ姉も喜ぶかもなぁ~」

オオクニ「……」

タギツヒメ「おっ、あんなところにおあつらえ向きの舟が――」

オオクニ「ちょっと行ってくる!!」シュバババッ!!



タギツヒメ「あぁ~、めんどくさかった……」


―――――――
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――


<沖ノ島>

オオクニ「とか何とか回想シーンをやってる隙に島に着いたぞ!」

オオクニ「何と言うか……島全体が神気に満ち溢れている感じだなぁ~」ホレボレ

オオクニ「きっと立派な宮があるに違いない!早速船を降りて探索に――」ザブッ



???「あらぁ~、お客様ですかぁ?珍しいですねぇ~」



オオクニ「!?き、君は……?」

???「わたくしはこの沖津宮に座しております、タキリビメと申しますぅ~」

オオクニ「つまり……君が“キリ姉”だね!!」

タキリビメ「キリ姉?わたくしのことをそう呼ぶのは“つーちゃん”だけですがぁ……」

オオクニ「俺はオオクニヌシ。君の妹さんたちに言われてここまで来たんだ!」

タキリビメ「まぁ~!いっちゃんとつーちゃんのお友達でしたかぁ~。いらっしゃ~い♪」ニコニコ

オオクニ「歓迎してもらえてありがたいなぁ~。それじゃあ早速本題に――」ジャブジャブ



タキリビメ「ダメダメぇ!ダメですよぉ~!」アワアワ

オオクニ「えっ!?まだ何も言ってないんだけど……」

タキリビメ「いえ、お話がダメというわけではなくてぇ、今こちらに来ようとなさいましたよねぇ?」

オオクニ「うん。大事な話をしたいから、もっと近くに行かなきゃと……」

タキリビメ「それはダメなんですよぉ~」

オオクニ「えぇっ!?お触りどころか近付くのすら禁止ってこと!?」

タキリビメ「あっ、そういうわけでもなくてぇ、島へ上がる前にぃ、禊をしてほしいんですよぉ~」

オオクニ「禊?」

タキリビメ「はいぃ~。この御前浜の海の水で、身を清めてから上がっていただきたいんですぅ~」

オオクニ「つまり……ここで脱げと?」

タキリビメ「そういうことになりますねぇ~」ニコニコ

オオクニ「えぇ~と……それで、君はそのままそこにいるつもりなの?」

タキリビメ「お気になさらずぅ~」ニコニコ

オオクニ(これは……そういうプレイ!?)



オオクニ「えぇい!わかった、脱げばいいんだろ?脱げば!!」ヌギヌギ

タキリビメ「♪」ニコニコ


―ジャブジャブ

―ジャブジャブ

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オオクニ「……ヘクシッ!!」

タキリビメ「お疲れさまでしたぁ~♪」

オオクニ「うぅ~、さぶい……。風邪ひく前に、早く社殿に入れてくれないか?」

タキリビメ「そんなのありませんよぉ~」

オオクニ「えぇっ!?立派な宮があるんじゃないの???」

タキリビメ「お宮になら、もう入ってらっしゃるじゃないですかぁ~」

オオクニ「……へ?」

タキリビメ「この島全体が沖津宮ですよぉ~」

オオクニ「なっ……そういう自然信仰的なヤツか!!」

タキリビメ「つまりぃ~、この島全体がわたくしのモノなんですぅ~」ジリッ

オオクニ「それは結構なことで……」

タキリビメ「だからぁ~、この島に入ったあなたもぉ~……」ジリジリッ

オオクニ「……ん?」

タキリビメ「……」ジュルリ


―――――――
――――
――


<高天原>

ミナカヌシ「おや、どうやらオオクニヌシとタキリビメの間に子が生まれたみたいだね」

カムムスヒ「はい。アジスキタカヒコネに、妹のタカヒメ……シタテルヒメとも言いますね」

ミナカヌシ「ついでに言うと、アジスキタカヒコネは今のカモノオオミカミだ」

カムムスヒ「“今”って……いつのことを言っているのですか?」

ミナカヌシ「“今”は“今”だよ」

タカミムスヒ「……」

ミナカヌシ「ん?どうかしたかい、タカミムスヒ?」

ミナカヌシ「あぁ、またオオクニヌシが別の娘に手を出したのか」

カムムスヒ「今度はカムヤタテヒメを娶って、コトシロヌシを生んだようですね」

ミナカヌシ「それだけじゃない。ヤシマムジの娘のトトリも娶って、トリナルミを生んでいるよ」

カムムスヒ「トリナルミはヒナテリヌカタビチオイコチニを娶ってクニオシトミを生みますね」

ミナカヌシ「ふぅ~ん。カムムスヒもずいぶん物知りになったものだね」

カムムスヒ「このくらい、造化三神として当然です」

ミナカヌシ「それじゃあその先の子孫も言えるかい?」


カムムスヒ「もちろんです!クニオシトミはアシナダカ、別名ヤカワエヒメを娶ってハヤミカノタケサハヤジヌミを生み、この神はアメノミカヌシの娘のサキタマヒメを娶ってミカヌシヒコを生み、この神はオカミノカミの娘のヒナラシビメを娶ってタヒリキシマルミを生み、この神はヒヒラギソノハナマヅミの娘のイクタマサキタマヒメを娶ってミロナミを生み、この神はシキヤマヌシの娘のアオヌウマヌオシヒメを娶ってヌノオシトミトリナルミを生み、この神はワカツクシメを娶ってアメノヒバラオオシナドミを生み、この神はアメノサギリの娘のトオツマチネを娶ってトオツヤマサキタラシを生み……」ペラペラ


タカミムスヒ「……!」アセアセ

ミナカヌシ「あぁ~、もういいもういい!」

カムムスヒ「もういいのですか?私はまだまだ言えますよ?」

ミナカヌシ「これ以上続けたらカタカナがゲシュタルト崩壊するだろう?」

カムムスヒ「フフッ、それにあまり面白いものでもありませんしね」

ミナカヌシ「ん?別に私は暇だからカムムスヒに面白いことをさせようとしたわけではないよ?」

カムムスヒ「まぁ、そういうことにしておいてあげます」

タカミムスヒ「……♪」



ミナカヌシ「そうだ!せっかくこうしてオオクニヌシの系譜を挙げたことだし――」

カムムスヒ「また変なユニット名を付けようとしないでくださいね?」

タカミムスヒ「……」コクコク

ミナカヌシ「失礼だな!私がそんなことするはずないだろう?何を根拠にそんなことを!」

タカミムスヒ「……(ジト目」

カムムスヒ「天地開闢まで遡って、自分の胸に手を当てて考えてください」

ミナカヌシ「全く心当たりが無いね」

カムムスヒ「はぁ……」ヤレヤレ

タカミムスヒ「……」ヤレヤレ

ミナカヌシ「まぁまぁ、そんな顔せずに聞いてくれたまえ。今回は自信作なんだ」



ミナカヌシ「スサノオの子ヤシマジヌミから、先ほど挙がったトオツヤマサキタラシまでを……」



ミナカヌシ「“神セブンティーン”と――」

カムムスヒ「“十七世神(とおまりななよのかみ)”と呼びましょう」

タカミムスヒ「……」コクコク

ミナカヌシ「こら、カムムスヒ!私のセリフを遮るんじゃない!」

カムムスヒ「ミナカヌシがセンスのないネーミングをしようとするから悪いんです」

ミナカヌシ「なっ……!“十七世神”だって凡庸でダサダサじゃないか!」

カムムスヒ「ミナカヌシのよりはマシです」

タカミムスヒ「……」コクコク

ミナカヌシ「だいたい、何が“十七世”なんだ?数えても15世代しかいないじゃないか!」

カムムスヒ「その理由は“セブンティーン”とか言い出したミナカヌシが一番よく知っているでしょう?」

ミナカヌシ「ぐぬぬ……」

タカミムスヒ「……♪」


―完―

【キャスト】
オオクニヌシ
タキリビメ
タギツヒメ
イチキシマヒメ
アメノミナカヌシ
タカミムスヒ
カムムスヒ


作:若布彦(“LION”を逆さにすると……ということで、ライオン㈱さんは“NO17”も商標登録しているのだとか)

・・・次のお話はこちら⇒“少名毘古那神話

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