▼神話SSまとめ読みはこちら


[“根の堅洲国神話/前編”の続き]
――根の堅洲国でも相変わらず命を狙われてるオオナムチのお話


<スセリビメの家>

スセリビメ「あっ、オオナムチ!!」パタパタ

オオナムチ「おはよう、スッチー♪」

スセリビメ「スッチー言うな。無事……じゃなくて、よく眠れたか?」

オオナムチ「うん。おかげさまで長旅の疲れが取れたよ~」

スセリビメ「そうか、良かった……」ホッ

オオナムチ「それにしても、ぐっすり寝たら腹減ったなぁ……」グゥー

スセリビメ「すぐに朝飯の仕度するからちょっと待っててな!」パタパタ

オオナムチ「うん、ありがとう!」

スセリビメ「飲み物は?キリマンジャロとモカとカナリスタどれがいい?」

オオナムチ「えっ、なにその選択肢!?」



スサノオ(チッ、アシハラシコオの野郎、蛇の間の毒蛇を手懐けるとは、ちったぁやるじゃねぇか……)

スサノオ(だったら今夜は“あの部屋”に……)ニヤリ



スセリビメ(ん?親父がなんかまた悪い顔を……)


―――――――
――――
――


<その夜>

オオナムチ「ふわぁ~、そろそろ寝るかぁ」ヨッコイショ

スセリビメ「そうだね。おやすみ、オオナム――」

スサノオ「おい、シコオ!」

オオナムチ「なんすか?お義父さん」

スサノオ「“お義父さん”言うな!俺はまだてめぇのこと認めてねぇからな!」

オオナムチ「いや、でも憲法第24条に“婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し”って――」

スサノオ「この時代にはまだ日本国憲法はねぇんだよ!俺が認めなきゃ破談だ、破談!!」

オオナムチ「そんなぁ……」

スセリビメ「大丈夫だよ、オオナムチ。あたしはこのクソ親父と縁切ってでもあんたに付いてくから///」

スサノオ「ヴェェェ!?スッチー、そんな寂しいこと言うなよぉ~(涙目」

スセリビメ「うっせぇ、スッチー言うな!」



スサノオ「ま、まぁそれはともかく!シコオ、てめぇの寝る部屋なんだがなぁ……」

オオナムチ「あの部屋がどうかしましたか?」

スサノオ「いや、ちょっと床が抜けそうになっててよ。今日は別の部屋で寝てくれねぇか?」

オオナムチ「マジすか?じゃあお言葉に甘えて……」

スサノオ「おぅ、すまねぇな。じゃあ部屋まで案内するぜ」



スサノオ「……」ニヤリ

スセリビメ(親父……怪しいな……)


―――――――
――――
――


<客間前>

スサノオ「そんじゃあシコオ、今晩はこの部屋で寝てくれ」

スセリビメ(こ、この部屋は!!)

オオナムチ「ありがとうございます」

スサノオ「しばらく使ってないから、ちぃっと散らかってるかもしれねぇが、我慢してくれや」

オオナムチ「あ~、まぁ大丈夫っすよ」

スサノオ「朝になったら迎えに来っから、それまでは“絶対”、この部屋の中で待ってろよ?」

スサノオ「もし、この部屋を出ようもんなら……」

オオナムチ「もんなら……?って、なにこのデジャヴ感!?」



スサノオ「殺す」ニッコリ



オオナムチ「やっぱり!?」ビクッ

スサノオ「そんじゃ、早速部屋の中に――」

スセリビメ(ヤバい、オオナムチ!)ソデクイ-

オオナムチ「!!」



オオナムチ「あっ、あのぉ~……」

スサノオ「ん?どうかしたか、シコオ?」

オオナムチ「その前に、ちょっとトイレに……」

スサノオ「また便所かよ!めんどくせぇなぁ、朝まで我慢しろ!」

オオナムチ「いやいや、無理です!絶対漏れます!!」

スサノオ「チッ、しょうがねぇなぁ……。とっとと行ってこい!」

オオナムチ「は、はぁ~い……」クルッ

スセリビメ「それじゃあ、あたしも……」ソロソロ



スサノオ「おい!なんでスッチーまで付き添うんだ?もう便所の場所くらい覚えただろ?」

スセリビメ「えっ!?いや、あたしは自分の部屋に戻るだけだから!」

スセリビメ「どうせ方向は一緒だし、途中まで一緒に行くくらいいいだろ?」

スサノオ「そうか……。なら別に構わねぇが……」

スセリビメ「あぁ~眠い!ほらオオナムチ、早く行こう!」グイッ

オオナムチ「グェッ……」ズルズル

 ・
 ・
 ・

スセリビメ「オオナムチ、時間が無いから歩きながら手短に言うよ?(小声」コソコソ

オオナムチ「また何かヤバい部屋なのか?(小声」コソコソ

スセリビメ「あそこはムカデ&蜂の間だ(小声」

オオナムチ「Oh, what a dangerous room…(小声」

スセリビメ「だから今晩はこの“ムカデ蜂領巾”を使ってくれ(小声」スッ

オオナムチ「2 in 1だなんて、あら便利……(小声」

スセリビメ「使い方は蛇領巾と同じだから、うまくやれよ。それじゃ!(小声」スタスタ

オオナムチ「また命がけの一晩かぁ……」


―――――――
――――
――


<翌朝>

スサノオ「さぁ~てと!シコオのクソ野郎がどんな表情で死んでるか楽しみだぜ♪」ルンルン


―ガチャッ!!


スサノオ「やぁやぁムカデ諸君に蜂諸君!お勤めご苦労だったな!!」

オオナムチ「ふわぁ~あ……。もう朝っすか?おはようございます~」ムニャムニャ

スサノオ「「またこのパターンかーい!!」」


―――――――
――――
――


<根の堅洲国:野原>

オオナムチ「こんなとこまで連れてきて、一体何の用ですか、お義父さん?」

スサノオ「お義父さん言うな!いいかシコオ、これからお前に試験を課す」

オオナムチ「試験!?そんな、急に言われても心の準備が……」

スサノオ「なぁに、試験っつっても、単にこの鏑矢を取って来てもらうだけだ。簡単だろ?」

オオナムチ「試験っていうより、犬の芸みたいっすね」

スセリビメ「おい、親父!オオナムチにそんなことさせてどうするつもりだよ?」

スサノオ「そ、それは……困難なことも諦めずにやり遂げる根性があるか見定めようと思ってな!」

スセリビメ「まぁ、確かに草が背丈くらいまで伸びてるし、この中で鏑矢を見つけるってのはかなりキツそうだけど……」

オオナムチ「大丈夫だよ。似たようなことは兄貴たちからもしょっちゅうやらされてたし」

スセリビメ「あんたホントに酷い家庭環境で育ったんだね……」

スサノオ「そんじゃ射るぞぉ~」キリキリ…


スサノオ「それ!!」ヒュッ


―ピョーーーーーー


スセリビメ「おい、飛ばし過ぎだろ!少しは加減しろよ、クソ親父!!」

スサノオ「簡単に見つかるようじゃ試験にならねぇだろ!ほれ、取ってこい!」

オオナムチ「はぁ……行ってきま~す」ザッザッ

 ・
 ・
 ・

スサノオ「さぁ~て、一服して待つとするか」シュボッ

スセリビメ「あれ?親父、タバコはやめたんじゃ……」

スサノオ「あぁ~、そうだったな。うっかりしてたぜ」ポイッ


―ボボボーボボーボボォ!!


スサノオ「なにっ!たまたまタバコをポイ捨てしたところに灯油が!?草むらに引火しちまった!!」

スセリビメ「はあっ!?てめぇ、完全にわざとやっただろ!!」

スサノオ「何のことだかさっぱりだなぁ~」スットボケー

スセリビメ「早く消せ!今すぐ消せよ!!」

スサノオ「こんだけ燃え広がったらもう消すのは無理だ。シコオも助からねぇだろうなぁ~」ニヤリ

スセリビメ「そんな……」

スサノオ「諦めて葬式の準備でもしとくんだな!がっはっはっ!」


―――――――
――――
――


<草むらの中>

オオナムチ「鏑矢が落ちたのはたぶんこの辺だよな?」

オオナムチ「う~ん……どこだぁ~??」



オオナムチ「それにしても、なんかずいぶん暑くなってきたなぁ……」

オオナムチ「心なしか焦げ臭いような感じもするし……」

オオナムチ「お義父さんが焚火でもしてるのかな?」チラッ


―メラメラ


オオナムチ「って、振り返ればそこは火事現場!?」

オオナムチ「ヤバい、早く逃げないと!!」ザッ!!



ネズミ「チュウ!!」



オオナムチ「!?」ピタッ

オオナムチ「おっと!危うくネズミさんを踏んづけるとこだった!!」アセアセ

オオナムチ「おいネズミさん、君も早く逃げないと焼きネズミになっちゃうぞ!」



ネズミ「ウチはほらほら、ソトはすぶすぶ」



オオナムチ「“ウチ”はほらほら……?」

オオナムチ「君、もしかして関西弁キャラなの?」

ネズミ「そうなんよ!ウチ、両親の仕事の都合で少し前まで大阪におって……」

ネズミ「って、誰がそんなどこぞのJKみたいな一人称使うか!“内側”ってことや!」

オオナムチ「なるほど、“内側はほらほら、外側はすぶすぶ”……」


オオナムチ「つまり、“入口がすぼまっていて外からはわからないけど、この地中は洞穴になってる”ってことだね!」

ネズミ「なんやあんちゃん、めっちゃ物わかりええやん!!」

オオナムチ「まぁ、火事場の馬鹿力を思考力に全振りすればこのくらい余裕だよ」

ネズミ「最悪もうちょいヒント出したろ思ってネタ考えとったのに拍子抜けやわ。まぁええけど」

オオナムチ「ごめんごめん。とにかく時間もないし、早速この辺を思いっきり踏んづけて――」


―ドスッ!!

―ズボッ!!



―ドサッ!!


オオナムチ「ってて……ホントに地面が抜けて洞穴に落っこちた……」

ネズミ「どや?ワイのゆーたとおりやったろ?」

オオナムチ「これでどうにか火事はやり過ごせそうだな。ネズミさん、ありがとう!」

ネズミ「なぁに、困ったときはなんとやら、やで!」


ネズミ「せや!あんちゃん、ついでにええもんくれたるわ」スッ

オオナムチ「ん?これは……俺が探してた鏑矢じゃないか!なんか矢羽だけ無くなってるけど」

ネズミ「あぁ、羽んとこはせがれどもが食ってもうてん」

オオナムチ「Oh,さすが雑食……」

ネズミ「まぁ、そこは火事で燃えたとか言って適当にはぐらかしときゃええやろ、知らんけど」

オオナムチ「う~ん……それもそうか」

ネズミ「せやせや!そんな小さいことまで気にしとったら頭たこ焼きになるで」

オオナムチ(ちょっとその例えはよくわからないけど……)



ネズミ「さて、火も収まったみたいやし、ぼちぼち嫁さんとこ戻ったったらどうや?」

オオナムチ「そうだね。ネズミさん、何から何までありがとう!本当に助かったよ!」

ネズミ「なぁに、礼なら出世払いでええよ。これ、振込先な」スッ

オオナムチ「あっ、はい……(ちゃっかり謝礼求めるんだ……)」


―――――――
――――
――


<野原の入口のとこ>

スセリビメ「グスッ…グスッ……」トボトボ

スセリビメ「ごめんなオオナムチ……あたしが守ってやれなかったせいで……」トボトボ



スサノオ「なんだスッチー、ホントに葬式セット持ってきたのか。まぁ、喪服姿も似合ってるぜ」

スセリビメ「うるせぇ、クソ親父!!オオナムチを殺しやがって……ぜってぇ許さねぇからな!!」

スサノオ「そう言うなよ。悪い虫から守ってやっただけだろ?」

スセリビメ「オオナムチは虫なんかじゃねぇ!あいつはあたしの運命の相手だったんだ!!」

スセリビメ「あいつのいない世界で生ていくなんて、あたしにはもう考えられない……」

スセリビメ「オオナムチを弔ったら、後を追ってあたしも死んでやる!!」



オオナムチ「ちょちょっ!!早まるなよスッチー!」

スセリビメ「止めるな、オオナムチ!もうあたしは決めたんだ!!」

オオナムチ「いやいや、待ってくれって!一旦落ち着いて、考え直そう?」

スセリビメ「落ち着いてられる場合かよ!旦那が殺されたんだぞ!?この辛さ、あんたにわかんのか!?」

オオナムチ「それはわからないけどさぁ……。まずは俺の話を聞いてくれよ、頼むから!」

スセリビメ「ダメだ!オオナムチ、いくらあんたの頼みでも、こればっかりは譲れないよ!」

オオナムチ「えぇぇ……」

スセリビメ「誰がなんと言おうと、あたしはオオナムチのいる黄泉の国へ――」



スセリビメ「って、オオナムチ!!??」

オオナムチ「時間差過ぎだよ!」

スセリビメ「あんた、生きてたのかい!?」

オオナムチ「なんとかね。危うく焼きナムチになるところだったけど……」

スサノオ「な、なにぃっ!?シコオ、てめぇ一体どうやって……」

オオナムチ「まぁ、ちょっといろいろありまして」


オオナムチ「そうそう、お義父さん、はいコレ」スッ

スサノオ「これは……鏑矢じゃねぇか!!」

スセリビメ「オオナムチ、あんたあの火の海からこの矢を探し出してきたのかい!?」

オオナムチ「え~っと……まぁそんな感じかな?矢羽は無くなっちゃったけど」

スセリビメ「生きて帰ったうえに試験も達成するなんて……惚れ直したよ///」ギュムッ

オオナムチ「グェッ……スッチー、苦しい……」

スセリビメ「スッチー言うな///」ギューッ!!



スサノオ「……」



スサノオ「ファーwww」


―完―

【キャスト】
オオナムチ(アシハラシコオ)
スセリビメ
スサノオ
ネズミ


作:若布彦(関西弁ガチ勢の方々には申し訳ございません)

・・・次のお話はこちら⇒“根の堅洲国神話/後編

▼神話SSまとめ読みはこちら