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[“木の国神話”の続き]
――“大おじさま”を訪ねて根の堅洲国へやって来たオオナムチのお話


<根の堅洲国>

オオナムチ「うぅ……」オドオド


オオナムチ「母上にもらった地図を頼りに来てはみたものの……」

オオナムチ「黄泉比良坂を下ったところの、暗くて恐ろしい地下の国だなんて聞いてないよぉ……」

オオナムチ「地図にも“こっち曲がると黄泉の国”とか物騒なこと書いてあるし……」

オオナムチ「これもう半分死者の国なんじゃ……」

オオナムチ「うぅ……」オソルオソル



???(背後からの声)「おい、そこのあんた!」



オオナムチ「ひぃぃっ!!」ビクッ!!

???「なんだなんだ、情けねぇ声出しやがって。うちに何か用かよ?」スタスタ


オオナムチ「いや、そのぉ……」

???「怪しいね」ガシッ

オオナムチ(や、殺られる!?)

???「ちょっとツラ見せな」グイッ

オオナムチ「うわっ、とっとっ!!」ヨロッ

???「あっ、バカ!そんなもたれかかって――」


―ドサッ!!


オオナムチ「ってて……」ムニュッ

オオナムチ(ん?この顔を包み込む柔らかな感触は……)

???「おい、バカ!どこに顔うずめて……/// 離れろ!離れろよ!!」


オオナムチ(めちゃくちゃベタなラッキースケベ展開キターーーーwww)


オオナムチ「とか考えてる場合じゃなくて!す、すみません!!」ガバッ!!

???「ったく、ざけんなよ。ぶっ飛ば――」キッ!!



???「あっ……///」ポッ

オオナムチ「あっ……///」ポッ



オオナムチ「あの!俺、オオナムチって言います。良かったら名前を……」

スセリビメ「あ、あたしは……スセリビメ///」

オオナムチ「スセリビメ、君はなんて美しいんだ!!」

スセリビメ「あんたこそ…その……めちゃくちゃイケメンじゃん///」

オオナムチ「一目惚れだ!俺と結婚してくれ!!」

スセリビメ「い、いきなりだな///」

スセリビメ「まぁ……でも……」


スセリビメ「うん、いいよ///」


―――――――
――――
――


<スセリビメの家>

スセリビメ「そっかぁ、あんたもずいぶん大変な思いしたんだねぇ~」ツヤツヤ

オオナムチ「そうなんだよ。で、その“大おじさま”に助けてもらおうと思って来たんだけどさぁ」ツヤツヤ

スセリビメ「思ったより暗くて怪しげなトコだったから、心細くて挙動不審になってたと」クスクス

オオナムチ「うん……。でもスセリビメに出逢えて本当に良かったよ」

スセリビメ「それはまぁ……あたしも///」

オオナムチ「まさかスセリビメが俺の“大おじさま”、スサノオさんの娘だったなんてなぁ~」

スセリビメ「へへっ♪あんた、運が良かったね。あたしがバッチリ、親父に話つけてやるよ!」

オオナムチ「それはありがたいけど、大丈夫かなぁ……?」

スセリビメ「大丈夫だって!オヤジなんか酒飲ましときゃあ機嫌いいから!」

オオナムチ「そんなもんなの?」

スセリビメ「うん!湘南新宿ライン横須賀線直通普通大船行きに乗ったつもりでいなよ!」

オオナムチ(“大船に乗ったつもり”って言いたいんだろうか……?)


―ガチャッ


スセリビメ「「「おいこら、クソ親父ぃ~!!」」」

オオナムチ(開口一番喧嘩腰!?機嫌良くさせる気ゼロじゃん!!)



スサノオ「おぉ!スッチー、お帰り♪」デレデレ



オオナムチ(“クソ親父”呼ばわりされたのに満面の笑みでお出迎え!?)

スセリビメ「っせーな!“スッチー”って呼ぶのやめろって言ってんだろ!!」

スサノオ「じゃあ“スセりん”にするか!」

スセリビメ「名前で呼べ名前で!いや、むしろ呼ぶな!話し掛けんな!!」

スサノオ「おいおい、ついに反抗期か?じゃあ反抗期記念にパパと写真撮ろう!!」

スセリビメ「撮らねぇよ!気持ち悪ぃな!!」

オオナムチ「あ、あのぉ……」

スセリビメ「あ、そうだった!親父、お客だぞ」

スセリビメ「めっちゃくちゃ、“イ・ケ・メ・ン”の///」



スサノオ「あぁん?“イケメン”だとぉ???」ゴゴゴゴゴッ



オオナムチ(!?なんか急に殺気が……)

オオナムチ「どうも。俺、あなたの遠い親戚で、アメノフユキヌとサシクニワカヒメの息子の――」

スサノオ「うるせぇ!てめぇなんか葦原色許男(アシハラシコオ)で十分だ!!」

オオナムチ「えぇ……」

スサノオ「どうせうちのスッチーをたぶらかしに来た色狂いのクソ野郎だろ!!」

オオナムチ「違っ!……くもないかもしれませんけども」

スセリビメ「おい、クソ親父!あたしの旦那の悪口は許さねぇぞ!!」



スサノオ「……」



スサノオ「「「だ、旦那だとぉぉぉぉぉ!!!!!」」」ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!!!



オオナムチ(あ、あかん……)ビクビク

スサノオ「てめぇ!俺に挨拶もしないうちに、早速スッチーに手ぇ出したってのか!!」

オオナムチ「す、すみませんでしたぁっ!!」ドゲザー

スセリビメ「オオナムチは悪くねぇ!あたしから誘ったんだ!!」

オオナムチ「いや、あれはどっちかっていうと俺から……」

スセリビメ「いやいや、あたしの方が先にあんたのこと……///」

スサノオ「詳しい経緯なんてどうでもいいわ!!」ドンッ!!

オオナムチ「!!」ビクッ



スサノオ「てめぇ、うちの大事な大事なスッチーを傷物にして、覚悟はできてんだろうなぁ?」

オオナムチ「……(あっ、これもう終わったわ)」←白目



スサノオ「ここは責任を取って……」



スサノオ「今日は泊まってけよ」ニッコリ

オオナムチ「えっ!?」


―――――――
――――
――


<客間前>

スサノオ「ほら、シコオ!てめぇの部屋はここだ」

スセリビメ(こ、この部屋は!!)

オオナムチ「あ、ありがとうございます……」

スサノオ「しばらく使ってないから、ちぃっと散らかってるかもしれねぇが、我慢してくれや」

オオナムチ「あ~、まぁ大丈夫っすよ」

スサノオ「朝になったら迎えに来っから、それまでは“絶対”、この部屋の中で待ってろよ?」

スサノオ「もし、この部屋を出ようもんなら……」

オオナムチ「もんなら……?」



スサノオ「殺す」ニッコリ



オオナムチ「ひぃっ!!」ビクッ

スサノオ「そんじゃ、早速部屋の中に――」

スセリビメ(ヤバい!ここはとりあえずボディに一発……)ドスッ!!


オオナムチ「ゴフッ!!」

スサノオ「ん?どうかしたか、シコオ?」


オオナムチ「は、腹が……」

スセリビメ「えっ!?腹が痛いって??このタイミングで下痢ピーかよ、しょうがねぇなぁ」

オオナムチ「ち、違――」

スセリビメ「なに?もう漏れそう!?わかった、あたしが便所まで連れてってやるから頑張んな!!」

スサノオ「チッ、間の悪ぃヤツだ」

スセリビメ「ほら、さっさと行くぞ!」グイッ

オオナムチ「グェッ……」ズルズル


―――――――
――――
――


<便所>

スセリビメ「ふぅ、どうにか二人っきりになれたね」

オオナムチ「いてて……。いきなりボディーブローなんて、何のつもりだよ、スッチー?」

スセリビメ「スッチー言うな!時間稼ぎのために仕方なかったんだよ!」

オオナムチ「時間稼ぎ?」

スセリビメ「いいかい?あの部屋は毒蛇だらけの蛇の間だ!!」

オオナムチ「へ、蛇の間!?」

スセリビメ「あのまま部屋に入れられてたら、あんたは毒蛇に噛まれてポックリだったってわけ!」

オオナムチ「なんてことだ……。よし、今すぐ逃げよう!!」

スセリビメ「バカ!親父は仮にも三貴子の一柱だよ?何の手も打たずに逃げ切れるわけねぇだろ」

オオナムチ「じゃあ一体どうすれば……」

スセリビメ「これを使いな」スルッ

オオナムチ「これは……領巾(ひれ)?」

スセリビメ「これは“蛇領巾”って言って、まぁ蛇除けのお守りみたいなもんさ」

オオナムチ「なんかエイヒレの親戚みたいだな」

スセリビメ「これを持って、今日は親父の言うとおり蛇の間に泊まるんだ」

オオナムチ「えぇっ!?俺に死ねと!!??」

スセリビメ「大丈夫!蛇に噛まれそうになったら、この領巾を3回振り下ろしな。そうすりゃきっと静まるから」

オオナムチ「えぇ~……大丈夫かなぁ……?」グズグズ



スセリビメ「はぁ……」ヤレヤレ



スセリビメ「……あたしの言うことが、信じられない?」ウルウル

オオナムチ「!?」ズキューン!!

オオナムチ「そんなことないさ!俺はスッチーを信じるよ」キリッ!!

スセリビメ「スッチー言うな!」

オオナムチ「よし!こうなったら一か八か、この領巾に賭けてみよう!」

スセリビメ「その意気だよ!それじゃあ早速蛇の間に――」

オオナムチ「あっ、でもその前にちょっとおしっこ……」

スセリビメ「おいwww」


―――――――
――――
――


<蛇の間前>

スサノオ「おう、遅かったじゃねぇか」

オオナムチ「いやぁ~、ちょっと俺のロングスネークがなかなか切れなくて……」

スサノオ「ん?さっき下痢だっつってなかったか?」

オオナムチ「あっ!」ギクッ!!

スサノオ「んんん~??」


オオナムチ「いや、それはその~……」アセアセ

スセリビメ「食いすぎ!!結局ただの食いすぎだったみたいなんだよ。なっ?」

オオナムチ「そうそう!いやぁ~、お騒がせしてどうもすみません」

スサノオ「ほぉ~ん。まぁどうでもいいが」

オオナムチ「あは、あははははは~」


スサノオ「そんじゃ、そろそろ部屋に入れや」

オオナムチ「は、はぁ~い!」

オオナムチ「……」ドキドキ

スサノオ「どうした?入れよ」ニヤニヤ

オオナムチ「うっ……」ドキドキ


―ガチャッ


オオナムチ(大丈夫……大丈夫……)オソルオソル

スサノオ「おらっ!とっとと入りやがれ!!」ドンッ!!

オオナムチ「うわっ!!」ヨロッ


―ドサッ!!

―バタンッ!!


スサノオ「へへっ、この扉は中からは開けられねぇ。これで朝には……」ニヤニヤ

スセリビメ(オオナムチ……)


―――――――
――――
――


<翌朝>

スサノオ「さぁ~てと!シコオのクソ野郎がどんな表情で死んでるか楽しみだぜ♪」ルンルン


―ガチャッ!!


スサノオ「やぁやぁ蛇諸君!お勤めご苦労だったな!!」



オオナムチ「クカー……スピー……」Zzz…



スサノオ「「はぁっ!?何だとぉぉぉ!!??」」



オオナムチ「ふわぁ~あ……。もう朝っすか?おはようございます~」ムニャムニャ

スサノオ「て、てめぇどうして……」

オオナムチ「“どうして”って……何の話っすか?」


オオナムチ「そう言えば、ここの蛇たちはみんな大人しくていい子たちっすね」

スサノオ(そ、そんなはずは……)

オオナムチ「(言われたとおり蛇領巾を3回振ったら)みんな静かに添い寝してくれたんで、朝までぐっすりでしたよ」

スサノオ「……」



スサノオ「ファーwww」


―完―

【キャスト】
オオナムチ(アシハラシコオ)
スセリビメ
スサノオ


作:若布彦(“スッチー”言いたいだけ)

・・・次のお話はこちら⇒“根の堅洲国神話/中編

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