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[“大蛇神話/前編”の続き]
――クシナダを守るためヤマタノオロチを退治することを決めたスサノオのお話


<肥河(ひのかわ)のほとり>

スサノオ「これから大急ぎで、大蛇退治の準備だ!!」

アシナヅチ「“準備”と言いますと……?」

テナヅチ「具体的に何をすればよろしいですか?」

スサノオ「まずは酒だな。お前たち、八塩折(やしおおり)の酒を造るんだ!」

アシナヅチ「“八塩折”……つまり、計8回も醸造を繰り返した酒ですか!?」

テナヅチ「まず酒を造って、その酒を水代わりに使いつつさらに酒を造って……ということですよね?」

アシナヅチ「そんなもの造るのに何ヶ月かかると思っているのですか!?」

テナヅチ「今から造っていては完成前に大蛇が来てしまいますよ!」

スサノオ「そこはこう……なんとかしろよ!」



アシ&テナヅチ「ということで、今回はこちらに完成したものをご用意しています」ドンッ

スサノオ「ホントになんとかなるんかーい!!」

アシナヅチ「いやはや、こんなこともあろうかと準備しておいて正解でした」

テナヅチ「早速一口いかがですか?そこらの酒とは強さが段違いですよぉ~」

スサノオ「いや……なんか危なそうだからいいわ……」



スサノオ「何はともあれ、酒が準備できてるなら、後はセッティングするだけだな」

アシナヅチ「宴席の用意ということですかな?」

スサノオ「まぁ似たようなもんだ。まずこの周辺に垣を巡らせてくれ」

テナヅチ「あらまぁ、スサノオ様はご冗談がお上手ですねぇ」クスクス

スサノオ「???」



テナヅチ「ここはもう、垣の中ではありませんか」

スサノオ「はぁっ!?い、いつの間に……」

アシナヅチ「情景描写の無いSSなら、周囲の状況など作者の匙加減でどうにでもなりますからな」

スサノオ「……まぁいい。だったら、この垣に八つの門を作――」

テナヅチ「それも、ご用意してございます」

スサノオ「……それなら、門ごとに八つの仮床(さずき)を結って――」

アシナヅチ「こちらの台でよろしいですかな?」

スサノオ「……まさか、仮床ごとに酒船を置いたりなんかもしてあるのか?」

アシ&テナヅチ「もちろんでございます」



スサノオ「……」



スサノオ「じゃあもう酒船に八塩折の酒盛って待ってろ!!」プイッ

アシナヅチ「あぁっ!スサノオ様、どうかいじけないでください!」

テナヅチ「これも全ては効率化のためですので……」


―――――――
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――


<夜:物陰>

―メキメキッ!!

―バキバキバキッ!!

―ズズズズズズズッ


テナヅチ「ひぃっ!この木をなぎ倒しながら近付いてくる音は……」

アシナヅチ「ス、スサノオ様!大蛇がやって来ました!!」

スサノオ「まぁそう慌てるなって。ここで隠れてれば大丈夫だからよ」

アシナヅチ「そうは仰いますが、大蛇はあれでなかなか鼻が利くのです」

テナヅチ「生贄を供えていないとわかれば、きっとこちらへやって来ますよ!」

スサノオ「なぁに、そうなる前に退治してやるさ。今はとにかく待つんだ!」

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―シーン


アシナヅチ「ずいぶん……静かになりましたね」

スサノオ「よし、どうやら策に乗ってくれたみたいだな」


スサノオ「OK, Kushinada」

櫛nada「はい、どんなご用でしょう?」

アシ&テナヅチ(櫛が喋った!?)

スサノオ「大蛇が来てからどのくらい経った?」

櫛nada「音が近付いてきてから2時間弱といったところですね」

スサノオ「ぼちぼちいい時間だな。ちょっくら様子見に行くか」

アシナヅチ「そんな、危険ですよ!」

テナヅチ「息を潜めて、私たちが出てくるのを待っているのかもしれません!」

スサノオ「心配ねぇって。お前らはここで隠れてな」スタッ

アシ&テナヅチ「お、お待ちください!!」



アシナヅチ「行ってしまわれた……」

テナヅチ「大丈夫でしょうか……?」


―――――――
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――


<垣を巡らせた辺り>

スサノオ「おっ!思ったとおり、8つの門それぞれに頭突っ込んで寝落ちしてやがる」

櫛nada「垣を壊さずにわざわざ門から入るなんて、お行儀が良いのですね」

スサノオ「まぁ、蛇って狭いところとか好きだし、門とか穴を見ると入りたくなるんだろう」

櫛nada「なるほどです」

スサノオ「で、入った先に酒があったらそりゃあ飲まずにはいられねぇわ」

櫛nada「私は未成年なので、その感覚はわかりませんが……」

スサノオ「そのうちわかるさ」

櫛nada「と言っても、私が成人するまではまだ――」

スサノオ「あんまり年齢の話を引っ張るな!俺が白い目で見られるだろ!!」



櫛nada「それにしても、よくお酒が回るまで大人しくしていましたね」

スサノオ「退屈しないようにテレビ置いて、世にも奇妙な物語のビデオ流しといたからな」

櫛nada「お酒と世にも奇妙な物語に気を取られて私を忘れられたと思うと、少し複雑です……」

スサノオ「お前だって世にも奇妙な物語見てて“風呂は後でいいや”ってなったことあるだろ?」

櫛nada「それはまぁ……ありますけれども……」

スサノオ「酒飲みはそこから寝落ちするまでがセットなんだよ」

櫛nada「大人ってだらしないですね」

スサノオ「まぁとにかく、大人しく眠りこけてる間に退治しちまおう」シャキーン

櫛nada「切ったら暴れたりしませんか?」

スサノオ「そこら辺はご都合主義的に大丈夫だろう」

櫛nada「そういうものでしょうか……?」

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スサノオ「ふぅ……これだけ細切れに切り刻めばもう大丈夫だろう」

櫛nada「肥河がすっかり“血の川”になってしまいました」

スサノオ「下流の住人には気の毒だが、まぁそのうち薄まるさ」

櫛nada「それにしても、剣一本でよく切り続けられましたね。刃こぼれとかしないんですか?」

スサノオ「おう、この十拳(とつか)の剣と俺の腕があれば、切れねぇもんは無いぜ!」

櫛nada「よほどの名工が打たれたものなのですね」

スサノオ「ん?あぁ~、まぁそう思ってくれて構わねぇよ(誰が打ったのか知らねぇけど)」

櫛nada「でしたら、尾の方ももう少し細かく切っていただけますか?その方が葬りやすいので」

スサノオ「葬る?わざわざそんなことするのか?」

櫛nada「えっ!?食べるおつもりだったのですか?」

スサノオ「そういうわけじゃねぇけど……」

櫛nada「でしたら、きちんと葬ってあげないと可哀想ですよ」

スサノオ「お、おぅ……そうだな」



スサノオ「じゃあとりあえずこの辺を――」

スサノオ「おらっ!!」ブンッ!!


―ガキーン!!


スサノオ「イテっ!!」ジーン

櫛nada「!?」

スサノオ「ったく、なんなんだ一体?何かに引っかかったか?」

櫛nada「剣が刃こぼれしていますね」

スサノオ「……そうだな」



櫛nada「この十拳の剣と俺の腕があれば、切れねぇもんは――」

スサノオ「言わんでいい!!」

櫛nada「もしかして、他の部位に比べて尾の骨だけ異常に固い体質だったのでしょうか?」

スサノオ「どんなビックリ生物だよ……。とりあえず、ここを前から割いて中を確認してみよう」


―ザクッ

―ススススー

―ガバッ


スサノオ「こっ、これは……」

櫛nada「太刀みたいですね。どうしてこんなところに……?」

スサノオ「さっき思いっきり切りつけたのに、こっちの太刀には傷一つついてないな」

櫛nada「切れ味も良さそうですし、稲穂を摘んだり刈ったりするのにも便利そうですね」

スサノオ「農作業に使おうとするなよ……」

櫛nada「では、武器としてお使いになりますか?」

スサノオ「それもなぁ……。なんかこう、この太刀は普通とは違う感じが……」

櫛nada「もしかして、呪いの装備とか!?」

スサノオ「う~ん……」



スサノオ「よくわかんねぇから、とりあえず姉上のとこにでも持って行こう」

櫛nada「そんな怪しいものを押し付けるみたいに……お姉さまに失礼ではありませんか?」

スサノオ「大丈夫だって。もし本当に呪われてたとしても、姉上なら適当に清めるだろ」

櫛nada「そんな安易な感じで良いのでしょうか……?」


―――――――
――――
――


<高天原>

―ピンポーン


モブ津神A「はいはい、どちら様?」ガチャッ

スサノオ「よっ!」

モブ津神A「ス、スサノオ様!?あなた様はつい先日追放されたはず!!」

スサノオ「なぁに、ちょっと届け物に来ただけだよ。姉上いるか?」

モブ津神A「アマテラス様は外出中です!こちらにはおられません!!」

スサノオ「そうか。じゃあ上がって待たせてもらうぜ」ズカズカ

モブ津神A「ダメです!!お帰りくださいぃ~!!」グイー



モブ津神B「おい!何を騒いで……ってスサノオ様!?」

スサノオ「おぅ、久しぶりだな」

モブ津神B「まさか我々へ復讐しに……!?」

スサノオ「だからちげぇって!姉上に渡したいものが――」

モブ津神B「者ども、出合え、出合えぇ~!!」

スサノオ「少しはこっちの話を聞けよ!!」


―ガラピシャッ!!


アマテラス「な、何事ですか!?」ガバッ!!



スサノオ「おぅ、姉上!なんだ、いるじゃねぇか」

アマテラス「スサノオ!?なぜここに???」

スサノオ「いや、ちょっと姉上に――」

アマテラス「ま、まさか!!スサノオ、あなたがそんなことを考えていたなんて!!」

スサノオ「だから話を聞けって!」

アマテラス「いいでしょう。あなたがその気ならこちらにも考えがあります!」

スサノオ「勝手に話を進めるな!俺は別に復讐なんて――」



アマテラス「あなたたち!!」キッ!!

モブ津神A&B「はいっ!!」

アマテラス「スサノオにお茶をお出ししなさい!あとルマンドとホワイトロリータも!!」

モブ津神A&B「……は?」

アマテラス「さぁスサノオ、立ち話もなんですから、まずはこちらでお座りなさい」スッ

スサノオ「お、おぅ……」



アマテラス「ふふっ♪やっぱりスサノオは姉想いの良い弟ですね///」

スサノオ「……へ?」

アマテラス「大方、わたくしと仲直りしたくて、手土産でも持って帰って来たのでしょう?」

スサノオ「いやぁ~、それは当たらずとも遠からずと言うか……」

アマテラス「恥ずかしがり屋さんですねぇ。それで、一体何をプレゼントしてくれるのですか?」

スサノオ「あぁ~……まぁ、実は――」



アマテラス(指輪?それとももしかして、“俺自身がプレゼントだぜ!”とか……キャーッ///)

スサノオ(……まぁ、とりあえず受け取ってもらえるみたいだからいいか)



スサノオ「この太刀を姉上に、と思って」スッ

アマテラス「太刀……ですか?」



アマテラス「スサノオ、女性に対するプレゼントならもっとこう、綺麗な宝石とかをですねぇ――」

スサノオ「いやいや、そうは言っても、この太刀もなかなか見事なもんだろ?」

アマテラス「まぁ、確かに立派な太刀ではありますが……こんなものどこで手に入れたのですか?」

スサノオ「ヴェッ!?(化け物の尻尾から出て来たなんて言えねぇ……)」

スサノオ「まぁ、そんな細かいことはどうでもいいじゃねぇか」

アマテラス「まさか盗品とかではないでしょうね……?」

スサノオ「違うって!俺からの気持ちだと思って、ここは何も言わずに受け取ってくれよ」



アマテラス(スサノオからの気持ち……つまり、愛の証!?)ズキューン!!



アマテラス「ま、まぁ……スサノオがそう言うのであれば、家宝くらいにはしますが///」

スサノオ「そうか!ありがとな、姉上。それじゃ!」スクッ

アマテラス「ふぇ?どこへ行くのです?せっかく帰って来たのですから泊まって――」

スサノオ「いや、中つ国で嫁が待ってっから今日はもう帰るわ」

アマテラス「そうですか……って、“嫁”!?」ガタッ


スサノオ「じゃあまたな、姉上!」スタコラー

アマテラス「ちょちょ、ちょっと待ちなさい!“嫁”ってどういうことですか!?」



アマテラス「「「スサノオぉぉぉぉぉ~っ!!!!」」」


―完―

【キャスト】
スサノオ
櫛nada(クシナダヒメ)
アシナヅチ
テナヅチ
アマテラス
モブ津神


作:若布彦(後の草薙剣は、古事記での初出では都牟刈(つむがり)の太刀と言うんですね)

・・・次のお話はこちら⇒“須賀の宮神話

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