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[“三貴子分治神話”の続き]
――イザナギから追放を言い渡されたスサノオのお話


スサノオ「父上の言いつけを破って泣いてばかりいたら、追放を言い渡されてしまった……」

スサノオ「でも、これでようやく根の堅洲国に行けるってことだよね?」

スサノオ「父上が“好きなところへ行ってしまえ”って言ったんだし、誰も文句言わないよね?」



スサノオ「でも……」



スサノオ「やっぱり、一応姉上のお許しをいただいてから根の堅洲国へ行くことにしよう!」


―――――――
――――
――


<高天原>

―ズシィィィン!!!!

―ズシィィィン!!!!


アマテラス「な、何事ですか!?」ワタワタ

モブ津神A「大変ですアマテラス様!」

モブ津神B「大型で強いスサノオ様が高天原へ向かっています!中心付近の最大風速は――」

アマテラス「なんですって!?」

アマテラス「スサノオ、ついに……」

モブ津神A&B「……(ゴクリ」



アマテラス「成長したわたくしの魅力に気付いて、母君派からわたくし派に乗り換え――」

モブ津神A「そんなわけないでしょ!!」

モブ津神B「そういう冗談はせめてAカップになってから言ってください!」

アマテラス「し、失礼な!!Aくらいはあります!!」プンスカ

モブ津神A「まぁそれはどうでもいいとして、スサノオ様の目的はどう考えても――」

モブ津神B「武力侵攻ですよ!」

アマテラス「武力侵攻!?そんなはずありません!あの子はとても弱くて泣き虫なのですよ!」

モブ津神A「それは昔の話です。今のスサノオ様は筋骨隆々の屈強な男神に成長しています」

モブ津神B「あの大泣きも、きっとクライングマッスルを鍛えるトレーニングだったんです!」

アマテラス「なんですか、“クライングマッスル”って?適当なことを言わないでください」

モブ津神A「それはともかく、スサノオ様が危険であることは間違いありません!」

モブ津神B「アマテラス様も聞いたでしょう?あの足音――」


―ズシィィィン!!!!

―ズシィィィン!!!!


モブ津神A&B「ひぃぃ!!」ビクッ!!

アマテラス「あ、足音!?これが足音だと言うのですか?」

モブ津神A「そうです!スサノオ様の猛々しい足取りに、山や川がうち震える音です!」

アマテラス「そ、そんな……」


―ズシィィィン!!!!

―ズシィィィン!!!!


モブ津神B「これほどの地鳴りを響かせて向かってくる者に、害意が無いなどということがありますか!?」

アマテラス「……」



アマテラス「わかりました。スサノオがこちらへ向かっているのは、間違いなく善き心からのことではないでしょう」

モブ津神A&B「アマテラス様!」

アマテラス「おそらく、抵抗するわたくしを力でねじ伏せ……そのまま無理矢理……///」カァッ

モブ津神A「なぜそこで赤くなるのかはよくわかりませんが」

モブ津神B「とりあえず襲撃に備えましょう!」

アマテラス「そうですね。この場合、できるだけ男勝り感を出していく方向性がベストです」

モブ津神A「ではまず髪型は男性風の角髪(みずら)にしましょう」

モブ津神B「とは言えオシャレも忘れずに、髪と髪飾りと両腕に勾玉の玉飾りをあしらって……」

アマテラス「矢は背中に千本入りの矢入れを背負っておけば足りるでしょうか?」

モブ津神A「念のため、脇にも五百本入りの矢入れを付けておきましょう」

モブ津神B「あとは、万が一怪我でもしたら大変ですし、左腕にいい感じの鞆も付けて……」

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モブ津神A「完璧です!」

モブ津神B「こんなにも男装がしっくりくる女神はなかなかいませんよ!(特に上半身)」

アマテラス「それほどでも……///」ニヘラ

モブ津神A「では、我々は非難させていただきますので」

モブ津神B「あとは一柱(ひとり)で勇ましいポーズの練習でもしておいてください」

アマテラス「えっ!?こういうのはまず仲間がやられるシーンから――」

モブ津神A&B「失敬!!」スタコラサッサー

アマテラス「あっ、ちょっと!!」



アマテラス「行ってしまいました……」

アマテラス「勇ましいポーズ……ですか……」

アマテラス「こうして弓腹を向けるように振り立てて、足はやや内股気味に強く踏みしめて……」



アマテラス「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」ゴゴゴッ!!



アマテラス「……なんて、さすがにはしたないですね///」ポッ

???「あ、姉上……何を……」

アマテラス「「なぁにこそこそ見とんじゃ!!何しに来よったわれ!!!!」」クワッ!!

スサノオ「ひっ!!」ビクッ!!

アマテラス「……はっ!す、スサノオ!!??」

アマテラス(しまった!恥ずかしいところを見られて、咄嗟に怒鳴ってしまいました!!)

スサノオ「あ、姉上、聞いてください!僕には邪な心はありません!」

アマテラス「……コホン。で、では、なぜ高天原へ昇って来たのです?」

スサノオ「実は、父上になぜ僕はずっと泣いているのかと問われまして……」

アマテラス「それで?」

スサノオ「“母上のいらっしゃる根の堅洲国に行きたくて泣いている”と答えたところ……」

アマテラス「ところ?」

スサノオ「“もうこの国に住むことは許さん”と……追放すると言われてしまいました……」

アマテラス「追放!?」

スサノオ「そこで、根の堅洲国へ籠ろうと思い、姉上のお許しをいただきに参上した次第です。他意はございません」

アマテラス「そうですか……」

スサノオ「……(真剣な眼差し」キリッ



アマテラス(ちゃんとわたくしに挨拶に来るなんて、やはりいい子なのでは……?)

アマテラス(ですが、ここであっさり信用してはさすがに他の神々に示しがつきませんし……)

アマテラス「……コホン。では、それを証明できますか?」

スサノオ「えっ?」

アマテラス「そなたの心が清らかであることを、どのようにして知ることができましょう?」

スサノオ「そ、それは……」

アマテラス「わたくしにも、弟を信じてやりたい気持ちはあるのですよ」

アマテラス「ですが、高天原を治める者として、“何の証拠も無しに”というわけにはいきません」


スサノオ「なるほど……姉上のお立場を考えればごもっともです。でしたら――」

アマテラス(結構な無茶振りをしたつもりですが……何か妙案があるとでも言うのですか?)

スサノオ「互いに誓約(うけい)をして、子を生みましょう!」

アマテラス「こ、子を生む!?」

スサノオ「そうです、そうすれば――」

アマテラス「スサノオ、やはり最初からそういうつもりだったのですね!破廉恥です!!」

スサノオ「えぇっ!?どういうことですか??」

アマテラス「その腰に帯びた十拳の剣も、わたくしをねじ伏せて無理矢理……というつもりで持ってきたのでしょう!」

スサノオ「いえ、これはただの護身用で……」

アマテラス「そんな嘘で騙されるほど、わたくしの頭はお花畑ではありませんよ!」

スサノオ「嘘ではありません!」

アマテラス「いいえ、そのいやらしい目を見ればわかります。やはりわたくしの期待……懸念したとおり!」

スサノオ「ですから、先ほども申し上げたとおり、僕に邪な心はありません!」

アマテラス「そんな破廉恥なことを考えておいて、邪な心が無いわけが――」



アマテラス「……はっ!!」

アマテラス(邪な心が無い??それって、もしかして……)



アマテラス「つまり、“純愛”ということですか!?」ズキューン!!

スサノオ「ちょっと何を仰っているのかよくわかりませんが……」

アマテラス「わかりました。そういうことであれば、もうその剣は必要ありませんね?こちらへ寄こしなさい」

スサノオ「えっ?まぁ、確かに争う意思はありませんが……」

アマテラス「早く寄こしなさい!」

スサノオ「は、はい……」スッ

アマテラス「まったく、こんな物を持ってくるから面倒事になるのです」ググッ

スサノオ「あっ!姉上、そんな持ち方をしたら手に刃が当たって危ないですよ!」

アマテラス「代わりに恋文でもしたためてくれば良かったものを」バキッ!!バキッ!!

スサノオ「えぇっ!?剣を素手で三つ折りに!?」


アマテラス「こんな物はこうして“天の真名井(あめのまない)”で清めて――」ジャバジャバ

スサノオ(折る前に清めた方が楽だったのでは……?)

アマテラス「こうです!!」ガリッ!!ゴリッ!!

スサノオ「た、食べた!?」

アマテラス「はみふはいへうはへぇふ(噛み砕いてるだけです)!」

スサノオ「ちょっと何を仰っているのかよくわかりませんが……」

アマテラス「フゥーーーー(吐息」

スサノオ「!?姉上の吐息に乗って舞い上がった剣の破片が、まるで光る霧のようになった!!」

アマテラス「フフッ、ロマンチックでしょう?」

アマテラス(さぁ、これで雰囲気作りはバッチリですよ!)ワクワク



タキリビメ「おぎゃあ!」
イチキシマヒメ「おぎゃあ!」
タギリヒメ「おぎゃあ!」



スサノオ「あっ!霧の中から女神が!!」

アマテラス「えっ?まぁ、清めた剣の破片ですし、神が生まれても不思議ではありませんね」

スサノオ(そうか!もう誓約は始まっていたんだ!!よぉ~し、それなら――)


スサノオ「では姉上、今度は僕にその玉飾りをいただけますか?」

アマテラス「玉飾りをですか?えぇ、構いませんよ」スッ

アマテラス(持ち物を欲しがるなんて、スサノオは本当にわたくしにぞっこんラブなのですね///)キュン


スサノオ「えぇ~っと、まずはこれを“天の真名井”で清めて――」ジャバジャバ

アマテラス「あぁっ!わたくしの玉飾り、洗ってしまうのですか!?」

スサノオ「???当たり前じゃないですか」ジャバジャバ

アマテラス「そんなことをしたら、せっかくのわたくしの匂いが……」

スサノオ「ちょっと何を仰っているのかよくわかりませんね」イラッ

アマテラス(うぅ……なにもそんなに入念に洗わなくても……)シュン…

スサノオ「よし!じゃあ、とりあえず左の角髪の玉飾りから……」ガリッ!!ゴリッ!!

アマテラス(た、食べた!?まさか匂いではなく味を堪能するために洗っていたなんて……///)キュン

スサノオ「フゥーーーー(吐息」



マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ「おぎゃあ!」



スサノオ「ふむふむ、姉上の玉飾りの霧からは男神が生まれましたね」

アマテラス「えっ!?あ、えぇ……そうですね」

スサノオ「では、次は右の角髪の玉飾りを……」ガリッ!!ゴリッ!!

アマテラス(ま、まさかこのまま全ておいしくいただこうというのですか!?)

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アマテラス(ハァ…ハァ……弟が自分の持ち物を次々と口に……。何かに目覚めそうです……///)

スサノオ「結局、姉上の玉飾りからは五柱の男神が生まれましたね」

アマテラス「ふぇぇっ!?あ、はい……そうですね」

スサノオ「男神ねぇ……(ジト目」

アマテラス「それで……その……“子を生む”という話は……///」モジモジ

スサノオ「いや、もう十分生んだではないですか(真顔」

アマテラス「いえ、後から生まれた五柱の男神はわたくしの持ち物から生まれたのですから当然わたくしの子ですし……」

アマテラス「先に生まれた三柱の女神はそなたの持ち物から生まれたのですからそなたの子ですよね?」

スサノオ「なるほど。ということは――」

アマテラス(これから改めて、わたくしたち二柱(ふたり)の子を生まないと……///)



スサノオ「これで僕……いや、俺の心が清らかだってことが証明されたわけだな!」

アマテラス「えぇっ!?どうしてそういう話になるのですか?と言うか、急にキャラ変わりすぎです!」

スサノオ「俺の子はか弱い女神だった。つまり、俺に害意がないことは明らかだろ?」

アマテラス「そなたがわたくしに向けているのが害意ではなく好意であることなら先ほど――」

スサノオ「っしゃー!!じゃあ後は好き勝手やらしてもらうぜ!!」スタスタ

アマテラス「あっ、ちょっとスサノオ!わたくしと子を生むという話は……」



アマテラス「えぇぇぇっ!!??」

―完―

【キャスト】
タケハヤスサノオ
アマテラス
タキリビメ
イチキシマヒメ
タギツヒメ
マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ
モブ津神

作:若布彦(一応断っておきますが、私にそういう性癖はありません)

・・・次のお話はこちら⇒“天津罪神話

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