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[“兄妹神婚神話”の続き]
――どうすれば子作りがうまくいくか、助言を求めに来たイザナギ・イザナミのお話
<高天原>
イザナギ「…ゼェ…ゼェ……つ、着いたぞ……イザナミ」ガクッ
イザナミ「ありがと♪ホントに高天原までおぶって来てくれるなんて、さすがイザナギ☆」
イザナギ「むしろ本当に高天原までおぶさって来るイザナミがさすがだわ……」
イザナミ「てへぺろ♪」
イザナギ「……(白目」
カムムスヒ「おや、イザナギにイザナミじゃないか」
イザナミ「カムムスヒ様!お久しぶりです!!」
イザナギ「あの、実はご相談があって……」
カムムスヒ「それでわざわざ来てくれたんだね。“私は”電話でも良かったのに(クスクス」
イザナギ「いえ、さすがに面と向かってお話しした方が良いかと……」
カムムスヒ「まぁ、私ばかり電話で君たちと話していると、またミナカヌシがいじけるからね。来てくれて良かったよ」
イザナミ「そう言えばミナカヌシ様には結婚の報告もしてなかったかも……」
カムムスヒ「報告しなくてもちゃんと伝わっているから、気にする必要はないさ」
カムムスヒ「さぁ、おいで」テクテク
―――――――
――――
――
<高天原:別天津神室>
カムムスヒ「ミナカヌシ、タカミムスヒ、イザナギとイザナミが来ましたよ」
イザナギ&ナミ「ご無沙汰しております」
ミナカヌシ「やあ、二柱(ふたり)とも久しぶりだね」
タカミムスヒ「……」ムスッ
カムムスヒ「!?そ、それはもう通じません!」アセアセ
イザナギ&ナミ(???)
ミナカヌシ「それで、いったい何の用だい?」ウキウキ
カムムスヒ(用件くらい訊かなくてもわかってるクセに……)
イザナギ「実は……」カクカクシカジカ
・
・
・
ミナカヌシ「なるほど、せっかく結婚したのに、なかなか良い子が生まれないと」
イザナギ「はい。何がいけないのでしょうか……?」
イザナミ「やっぱりイザナギのナニが――」
カムムスヒ「イザナミ!そういう話は後で オオトノベとしなさい!」
イザナギ「……?」
ミナカヌシ「申し訳ないが、どうすれば良いかは私にもすぐにはわからないなぁ~」
イザナギ「えぇっ!?ミナカヌシ様にもわからないことがあるのですか??」
カムムスヒ「真に受けちゃいけないよイザナギ。ミナカヌシは単に――」
ミナカヌシ「こうなったら仕方ない。タカミムスヒ、“アレ”をやろう」
タカミムスヒ「……」スッ
イザナミ「それは……骨ですか?」
ミナカヌシ「そう。牡鹿の肩甲骨だよ」
イザナミ「そんなものをどうするんです?」
ミナカヌシ「ふっふっふっ、まぁ見ていなさい。タカミムスヒ!」
タカミムスヒ「……」シュボォォォォッ!!
―パチパチパチッ!!
イザナギ「が、ガスバーナー!?室内で使ったら危ないですよ!!」
カムムスヒ「あんまり炭を跳ねさせないでくださいね。掃除するのも大変なんですから(ジト目」
イザナミ「七輪の火って……落ち着く……ほっこり」
タカミムスヒ「……」グッ
ミナカヌシ「さすがタカミムスヒ、いい火加減だ。それじゃあこれを……」ポイッ
イザナギ「鹿の肩甲骨の網焼き……?」
イザナミ「私お肉の方がいいなぁ~」
カムムスヒ「肉は燻製にしたのが台所にあるから、帰りに持って行きなさい」
イザナギ「いいんですか!?」
イザナミ「わぁ~い♪」
カムムスヒ「あとは、しぐれ煮もまだ少し余っていたかな……?」
イザナミ「食べたい食べた~い☆」
ミナカヌシ「……そなたたち、もう少し骨に興味持とうか。いい子だから」
イザナギ「あぁ、すみません。骨が……何でしたっけ?」
ミナカヌシ「これは太占(ふとまに)と言って、今巷でも話題の占いなんだ」
イザナミ「巷で話題!?」キラキラ
カムムスヒ「騙されちゃいけないよ。またミナカヌシが適当に――」
ミナカヌシ「これから絶対に流行るから、そなたたちも覚えておくといい」
イザナミ「はぁ~い☆」
イザナギ「それで、どんな占いなんですか?」
ミナカヌシ「それはじきにわかるよ」
―パキッ
―パキパキッ
イザナギ「あっ、なんか骨にヒビが……」
ミナカヌシ「よし!そろそろだな、タカミムスヒ」
タカミムスヒ「……」サッ!!
ミナカヌシ「どれどれ、ここにこう筋が入って、こっちがこうだから……」
イザナギ&ナミ「???」
ミナカヌシ「よし、わかった!」
イザナギ&ナミ「!?」
ミナカヌシ「“女から先に声を掛けたのが良くない。戻ってやり直せ。”と出ているね」
イザナギ「そ、そうだったんですか!!」
イザナミ「なんでそんなことがわかったんですか?」
ミナカヌシ「それはほら、この辺の割れ目がこう……ねぇ?」
イザナギ「……?よくわかりませんけど、わかりました!」
イザナミ「それじゃあ早速燻製としぐれ煮持って帰りましょ!」
ミナカヌシ「気を付けて帰るんだよ」
タカミムスヒ「……」
イザナギ&ナミ「ありがとうございましたー!!」テテテッ
・
・
・
カムムスヒ「わざわざあんな茶番見せる必要ありました……?」
ミナカヌシ「茶番とは失礼だな。せっかく私が考え……ち、巷の流行を取り入れたのに」
カムムスヒ「……まぁいいですけど」スタスタ
ミナカヌシ「ん?どこへ行くんだい、カムムスヒ?」
カムムスヒ「……ちょっと糠床の様子を見に」スタスタ
ミナカヌシ「ずいぶん大きな糠床だなぁ(クスクス」
タカミムスヒ「……♪」
―――――――
――――
――
<高天原:台所>
イザナミ「しぐれ煮おいしぃ~♪♪」
イザナギ「タッパーに詰めるなりつまみ食いするのやめてくれる?詰め終わらないから」
イザナミ「じゃあお鍋からつまむね」
イザナギ「やめなさい!」
カムムスヒ「イザナギ、ちょっといいかい?」
イザナギ「あっ、カムムスヒ様。何ですか?」
イザナミ「もしかして、他にもお土産が!?」キラキラ
カムムスヒ「あ~、そうだね。軒先に干し柿があるから、イザナミはそれを取ってきてくれるかい?」
イザナミ「干し柿!行ってきまぁ~す!!」シュバッ!!
イザナギ「早っ!?」
イザナギ「はぁ……食い意地の張った妻でどうもすみません……」
カムムスヒ「いいんだよ。それより、さっきの言葉の意味はちゃんと理解しているかい?」
イザナギ「えっ?“女から先に声を掛けたのが良くない”ってヤツですよね?そのままの意味では……?」
カムムスヒ「はぁ……」
イザナギ「えぇっ!?私、そんなため息吐かれるようなこと言いました!?」
カムムスヒ「君たちはどうして結婚したんだい?」
イザナギ「それは……イザナミがなぜか急に結婚しようとか言い出して……」
カムムスヒ「それで、勢いに押されてなんとなく契りの儀を行って」
イザナギ「……」
カムムスヒ「出逢ったところでイザナミが先に声を掛けてきたから、つい応えてしまったと?」
イザナギ「まぁ……そういうことになります……」
カムムスヒ「はぁぁぁ……」
イザナギ「ため息深くなってる!?」
カムムスヒ「そんなことで君は本当にイザナミを愛していると言えるのかい?」
イザナギ「あ、愛していますよ!きっかけはどうあれ、今はちゃんと――」
カムムスヒ「毎日、面と向かって“愛してる”と言っているとでも?」
イザナギ「それは……言ってないですけど……」
カムムスヒ「いいかい?言葉には魂が宿るんだ――」
――だから、気持ちを言葉に乗せて伝えるということは、とても大事なことなんだよ。
――声を掛ける順番なんて、本来はどうだっていいんだ。
――問題は、その言葉に気持ちがこもっているかどうか。
――“イザナミが先に声を掛けてきたから”なんて言い訳をしちゃいけないよ。
――ちゃんと君自身の意思で、君の素直な気持ちをイザナミに伝えてやりなさい。
――そうすれば、きっと……
―――――――
――――
――
<オノゴロ島:天の御柱前>
イザナギ「それじゃあ行くぞ、イザナミ」
イザナミ「うん!」
イザナギ&ナミ「「よーい、ドン!」」
イザナギ「……」スタスタ
イザナミ「……///」スタスタ
イザナギ「…………」スタスタ
イザナミ「…………//////」スタスタ
―ピタッ
イザナギ「あっ……」
イザナミ「あっ……///」
イザナギ「スゥー…ハァー……(深呼吸」
イザナギ「イザナミ、聞いてくれ!!」
―――――――
――――
――
<しばらく後>
イザナミ「はぁ~、疲れたぁ~」グデーン
イザナギ「よく頑張ったな、イザナミ!」
イザナミ「それで、この子の名前はどうする?双子だから“両児嶋(フタゴノシマ)”?」
イザナギ「島としてはそれでいいけど、神名は“アメノフタヤ”にしようか」
イザナミ「じゃあこの子にはこの辺の海を守ってもらって……と」
イザナギ「これでだいぶ“大八嶋国(オオヤシマノクニ)”の国土も整ってきたな」
イザナミ「最初の“淡道之穂之狭別嶋(アワジノホノサワケノシマ)”から数えて14番目なんだから、“大十四嶋国”になるんじゃないの?」
イザナギ「それだと語呂も悪いし、島が増えたり減ったりする度に名前変えるのも大変だろ?」
イザナミ「そういうとこはこだわらないんだ……」
イザナギ「それに、やっぱり最初の八島はなんとなく特別感あるじゃん?」
イザナミ「まぁ、確かに思い入れはあるかも」
イザナギ「二番目の“伊予之二名嶋(イヨノフタナノシマ)”が生まれたときなんて、ビックリしたよなぁ」
イザナミ「まさか1つの身体に4つも顔が付いてるなんてね。しかも男2:女2の合コンスタイル」
イザナギ「エヒメ、イイヨリヒコ、オオゲツヒメ、タケヨリワケと、美男美女揃いだったなぁ」
イザナミ「やっぱりイザナギがイケメンだからね☆」
イザナギ「いやいや、きっとイザナミに似たんだよ」イチャイチャ
イザナミ「もう、イザナギったら~」イチャイチャ
Siri(うわぁ……見せつけてくれちゃって……)
Siri「はいそこー。イチャコラしてないでさっさと話進めてくださーい」
イザナギ「うぇっ!?きゅ、急に乱入してくるなよ、ビックリしたなぁ~」
Siri「フンッ!!人目も憚らずに二人の世界に入ってるのがいけないんです」
イザナギ「“人目”って言うか、“AI目”だけど……」
Siri「屁理屈言わない!!」キッ!!
イザナミ「えぇ~っと、三番目は“隠伎之三子嶋(オキノミツゴノシマ)”!」
イザナギ「神名はアメノオシコロワケで――」
Siri「はい、次行きますよ~」
イザナギ(流された……)
イザナミ「四番目の“筑紫嶋(ツクシノシマ)”も顔が4つのパターンだったわね」
イザナギ「こっちはシラヒワケ、トヨヒワケ、タケヒムカヒトヨクジヒネワケ、タケヒワケと、似た系統の神名で揃えたんだよな」
Siri「はい、次~」
イザナミ「五番目が一番小柄な“伊岐嶋(イキノシマ)”で、六番目が“津嶋(ツシマ)”」
イザナギ「それぞれ神名はアメヒトツバシラとアメノサデヨリヒメだな」
Siri「いいペースですよ~。サクサク行きましょ~」
イザナミ「七番目に“佐度嶋(サドノシマ)”が生まれて……」
イザナギ「八番目が“大倭豊秋津嶋(オオヤマトトヨアキツシマ)”。神名はアマツミソラトヨアキツネワケだ」
イザナミ「大きいから生むのも一苦労だったわぁ~……」
イザナギ「こいつがまさに集大成って感じだったから、8島合わせて大八嶋国って名付けたんだよなぁ」
Siri「でも、結局続けて6島生みましたよね?」
イザナミ「そうなの!だってイザナギったら……///」
イザナギ「い、言わんでいい!!」
Siri「……チッ。いいからとっととまとめてください」
イザナギ「なにこのAI怖い……」
イザナミ「えっと、続けて生んだのが“吉備児嶋(キビノコジマ)”、“小豆嶋(アズキシマ)”――」
イザナギ「神名はタケヒカタワケ、オオノデヒメ――」
イザナミ「それから“大嶋(オオシマ)”、“女嶋(ヒメジマ)”、“知訶嶋(チカノシマ)”――」
イザナギ「オオタマルワケ、アメヒトツネ、アメノオシオ――」
イザナミ「で、最後がさっき生まれた“両児嶋(フタゴノシマ)”。つまり、アメノフタヤね」
Siri「はい終了~。お疲れさまでした」
イザナギ「なんでこんな巻きで国生みの経緯振り返らされてんだ……?」
Siri「今回はそういうお話ですから」
イザナギ「そうですか……。でも、改めて振り返ると結構な数になったもんだ」
イザナミ「ちゃんとメモっておかないと忘れちゃうかも……」
イザナギ「いや、自分の子の名前くらい覚えとけよ!」
イザナミ「てへぺろ♪」
イザナギ「でも、まだ終わりじゃないぞ」
イザナミ「えっ!?まだ生むの???」
イザナギ「そりゃあ国土だけあっても仕方ないだろ?ちゃんとこの国を守る神々も生まないと」
イザナミ「もう、イザナギったら……お・さ・か・ん☆」
イザナギ「言わんでいい!!」
Siri(腕があったら殴りたい……)
※この後めちゃくちゃ神生んだ。
―完―
【キャスト】
・イザナギ
・イザナミ
・カムムスヒ
・アメノミナカヌシ
・タカミムスヒ
・Siri
作:若布彦(説明パートは読み飛ばしていただいて結構です……)
・・・次のお話はこちら⇒”黄泉の国神話”
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[“兄妹神婚神話”の続き]
――どうすれば子作りがうまくいくか、助言を求めに来たイザナギ・イザナミのお話
<高天原>
イザナギ「…ゼェ…ゼェ……つ、着いたぞ……イザナミ」ガクッ
イザナミ「ありがと♪ホントに高天原までおぶって来てくれるなんて、さすがイザナギ☆」
イザナギ「むしろ本当に高天原までおぶさって来るイザナミがさすがだわ……」
イザナミ「てへぺろ♪」
イザナギ「……(白目」
カムムスヒ「おや、イザナギにイザナミじゃないか」
イザナミ「カムムスヒ様!お久しぶりです!!」
イザナギ「あの、実はご相談があって……」
カムムスヒ「それでわざわざ来てくれたんだね。“私は”電話でも良かったのに(クスクス」
イザナギ「いえ、さすがに面と向かってお話しした方が良いかと……」
カムムスヒ「まぁ、私ばかり電話で君たちと話していると、またミナカヌシがいじけるからね。来てくれて良かったよ」
イザナミ「そう言えばミナカヌシ様には結婚の報告もしてなかったかも……」
カムムスヒ「報告しなくてもちゃんと伝わっているから、気にする必要はないさ」
カムムスヒ「さぁ、おいで」テクテク
―――――――
――――
――
<高天原:別天津神室>
カムムスヒ「ミナカヌシ、タカミムスヒ、イザナギとイザナミが来ましたよ」
イザナギ&ナミ「ご無沙汰しております」
ミナカヌシ「やあ、二柱(ふたり)とも久しぶりだね」
タカミムスヒ「……」ムスッ
カムムスヒ「!?そ、それはもう通じません!」アセアセ
イザナギ&ナミ(???)
ミナカヌシ「それで、いったい何の用だい?」ウキウキ
カムムスヒ(用件くらい訊かなくてもわかってるクセに……)
イザナギ「実は……」カクカクシカジカ
・
・
・
ミナカヌシ「なるほど、せっかく結婚したのに、なかなか良い子が生まれないと」
イザナギ「はい。何がいけないのでしょうか……?」
イザナミ「やっぱりイザナギのナニが――」
カムムスヒ「イザナミ!そういう話は後で オオトノベとしなさい!」
イザナギ「……?」
ミナカヌシ「申し訳ないが、どうすれば良いかは私にもすぐにはわからないなぁ~」
イザナギ「えぇっ!?ミナカヌシ様にもわからないことがあるのですか??」
カムムスヒ「真に受けちゃいけないよイザナギ。ミナカヌシは単に――」
ミナカヌシ「こうなったら仕方ない。タカミムスヒ、“アレ”をやろう」
タカミムスヒ「……」スッ
イザナミ「それは……骨ですか?」
ミナカヌシ「そう。牡鹿の肩甲骨だよ」
イザナミ「そんなものをどうするんです?」
ミナカヌシ「ふっふっふっ、まぁ見ていなさい。タカミムスヒ!」
タカミムスヒ「……」シュボォォォォッ!!
―パチパチパチッ!!
イザナギ「が、ガスバーナー!?室内で使ったら危ないですよ!!」
カムムスヒ「あんまり炭を跳ねさせないでくださいね。掃除するのも大変なんですから(ジト目」
イザナミ「七輪の火って……落ち着く……ほっこり」
タカミムスヒ「……」グッ
ミナカヌシ「さすがタカミムスヒ、いい火加減だ。それじゃあこれを……」ポイッ
イザナギ「鹿の肩甲骨の網焼き……?」
イザナミ「私お肉の方がいいなぁ~」
カムムスヒ「肉は燻製にしたのが台所にあるから、帰りに持って行きなさい」
イザナギ「いいんですか!?」
イザナミ「わぁ~い♪」
カムムスヒ「あとは、しぐれ煮もまだ少し余っていたかな……?」
イザナミ「食べたい食べた~い☆」
ミナカヌシ「……そなたたち、もう少し骨に興味持とうか。いい子だから」
イザナギ「あぁ、すみません。骨が……何でしたっけ?」
ミナカヌシ「これは太占(ふとまに)と言って、今巷でも話題の占いなんだ」
イザナミ「巷で話題!?」キラキラ
カムムスヒ「騙されちゃいけないよ。またミナカヌシが適当に――」
ミナカヌシ「これから絶対に流行るから、そなたたちも覚えておくといい」
イザナミ「はぁ~い☆」
イザナギ「それで、どんな占いなんですか?」
ミナカヌシ「それはじきにわかるよ」
―パキッ
―パキパキッ
イザナギ「あっ、なんか骨にヒビが……」
ミナカヌシ「よし!そろそろだな、タカミムスヒ」
タカミムスヒ「……」サッ!!
ミナカヌシ「どれどれ、ここにこう筋が入って、こっちがこうだから……」
イザナギ&ナミ「???」
ミナカヌシ「よし、わかった!」
イザナギ&ナミ「!?」
ミナカヌシ「“女から先に声を掛けたのが良くない。戻ってやり直せ。”と出ているね」
イザナギ「そ、そうだったんですか!!」
イザナミ「なんでそんなことがわかったんですか?」
ミナカヌシ「それはほら、この辺の割れ目がこう……ねぇ?」
イザナギ「……?よくわかりませんけど、わかりました!」
イザナミ「それじゃあ早速燻製としぐれ煮持って帰りましょ!」
ミナカヌシ「気を付けて帰るんだよ」
タカミムスヒ「……」
イザナギ&ナミ「ありがとうございましたー!!」テテテッ
・
・
・
カムムスヒ「わざわざあんな茶番見せる必要ありました……?」
ミナカヌシ「茶番とは失礼だな。せっかく私が考え……ち、巷の流行を取り入れたのに」
カムムスヒ「……まぁいいですけど」スタスタ
ミナカヌシ「ん?どこへ行くんだい、カムムスヒ?」
カムムスヒ「……ちょっと糠床の様子を見に」スタスタ
ミナカヌシ「ずいぶん大きな糠床だなぁ(クスクス」
タカミムスヒ「……♪」
―――――――
――――
――
<高天原:台所>
イザナミ「しぐれ煮おいしぃ~♪♪」
イザナギ「タッパーに詰めるなりつまみ食いするのやめてくれる?詰め終わらないから」
イザナミ「じゃあお鍋からつまむね」
イザナギ「やめなさい!」
カムムスヒ「イザナギ、ちょっといいかい?」
イザナギ「あっ、カムムスヒ様。何ですか?」
イザナミ「もしかして、他にもお土産が!?」キラキラ
カムムスヒ「あ~、そうだね。軒先に干し柿があるから、イザナミはそれを取ってきてくれるかい?」
イザナミ「干し柿!行ってきまぁ~す!!」シュバッ!!
イザナギ「早っ!?」
イザナギ「はぁ……食い意地の張った妻でどうもすみません……」
カムムスヒ「いいんだよ。それより、さっきの言葉の意味はちゃんと理解しているかい?」
イザナギ「えっ?“女から先に声を掛けたのが良くない”ってヤツですよね?そのままの意味では……?」
カムムスヒ「はぁ……」
イザナギ「えぇっ!?私、そんなため息吐かれるようなこと言いました!?」
カムムスヒ「君たちはどうして結婚したんだい?」
イザナギ「それは……イザナミがなぜか急に結婚しようとか言い出して……」
カムムスヒ「それで、勢いに押されてなんとなく契りの儀を行って」
イザナギ「……」
カムムスヒ「出逢ったところでイザナミが先に声を掛けてきたから、つい応えてしまったと?」
イザナギ「まぁ……そういうことになります……」
カムムスヒ「はぁぁぁ……」
イザナギ「ため息深くなってる!?」
カムムスヒ「そんなことで君は本当にイザナミを愛していると言えるのかい?」
イザナギ「あ、愛していますよ!きっかけはどうあれ、今はちゃんと――」
カムムスヒ「毎日、面と向かって“愛してる”と言っているとでも?」
イザナギ「それは……言ってないですけど……」
カムムスヒ「いいかい?言葉には魂が宿るんだ――」
――だから、気持ちを言葉に乗せて伝えるということは、とても大事なことなんだよ。
――声を掛ける順番なんて、本来はどうだっていいんだ。
――問題は、その言葉に気持ちがこもっているかどうか。
――“イザナミが先に声を掛けてきたから”なんて言い訳をしちゃいけないよ。
――ちゃんと君自身の意思で、君の素直な気持ちをイザナミに伝えてやりなさい。
――そうすれば、きっと……
―――――――
――――
――
<オノゴロ島:天の御柱前>
イザナギ「それじゃあ行くぞ、イザナミ」
イザナミ「うん!」
イザナギ&ナミ「「よーい、ドン!」」
イザナギ「……」スタスタ
イザナミ「……///」スタスタ
イザナギ「…………」スタスタ
イザナミ「…………//////」スタスタ
―ピタッ
イザナギ「あっ……」
イザナミ「あっ……///」
イザナギ「スゥー…ハァー……(深呼吸」
イザナギ「イザナミ、聞いてくれ!!」
―――――――
――――
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<しばらく後>
イザナミ「はぁ~、疲れたぁ~」グデーン
イザナギ「よく頑張ったな、イザナミ!」
イザナミ「それで、この子の名前はどうする?双子だから“両児嶋(フタゴノシマ)”?」
イザナギ「島としてはそれでいいけど、神名は“アメノフタヤ”にしようか」
イザナミ「じゃあこの子にはこの辺の海を守ってもらって……と」
イザナギ「これでだいぶ“大八嶋国(オオヤシマノクニ)”の国土も整ってきたな」
イザナミ「最初の“淡道之穂之狭別嶋(アワジノホノサワケノシマ)”から数えて14番目なんだから、“大十四嶋国”になるんじゃないの?」
イザナギ「それだと語呂も悪いし、島が増えたり減ったりする度に名前変えるのも大変だろ?」
イザナミ「そういうとこはこだわらないんだ……」
イザナギ「それに、やっぱり最初の八島はなんとなく特別感あるじゃん?」
イザナミ「まぁ、確かに思い入れはあるかも」
イザナギ「二番目の“伊予之二名嶋(イヨノフタナノシマ)”が生まれたときなんて、ビックリしたよなぁ」
イザナミ「まさか1つの身体に4つも顔が付いてるなんてね。しかも男2:女2の合コンスタイル」
イザナギ「エヒメ、イイヨリヒコ、オオゲツヒメ、タケヨリワケと、美男美女揃いだったなぁ」
イザナミ「やっぱりイザナギがイケメンだからね☆」
イザナギ「いやいや、きっとイザナミに似たんだよ」イチャイチャ
イザナミ「もう、イザナギったら~」イチャイチャ
Siri(うわぁ……見せつけてくれちゃって……)
Siri「はいそこー。イチャコラしてないでさっさと話進めてくださーい」
イザナギ「うぇっ!?きゅ、急に乱入してくるなよ、ビックリしたなぁ~」
Siri「フンッ!!人目も憚らずに二人の世界に入ってるのがいけないんです」
イザナギ「“人目”って言うか、“AI目”だけど……」
Siri「屁理屈言わない!!」キッ!!
イザナミ「えぇ~っと、三番目は“隠伎之三子嶋(オキノミツゴノシマ)”!」
イザナギ「神名はアメノオシコロワケで――」
Siri「はい、次行きますよ~」
イザナギ(流された……)
イザナミ「四番目の“筑紫嶋(ツクシノシマ)”も顔が4つのパターンだったわね」
イザナギ「こっちはシラヒワケ、トヨヒワケ、タケヒムカヒトヨクジヒネワケ、タケヒワケと、似た系統の神名で揃えたんだよな」
Siri「はい、次~」
イザナミ「五番目が一番小柄な“伊岐嶋(イキノシマ)”で、六番目が“津嶋(ツシマ)”」
イザナギ「それぞれ神名はアメヒトツバシラとアメノサデヨリヒメだな」
Siri「いいペースですよ~。サクサク行きましょ~」
イザナミ「七番目に“佐度嶋(サドノシマ)”が生まれて……」
イザナギ「八番目が“大倭豊秋津嶋(オオヤマトトヨアキツシマ)”。神名はアマツミソラトヨアキツネワケだ」
イザナミ「大きいから生むのも一苦労だったわぁ~……」
イザナギ「こいつがまさに集大成って感じだったから、8島合わせて大八嶋国って名付けたんだよなぁ」
Siri「でも、結局続けて6島生みましたよね?」
イザナミ「そうなの!だってイザナギったら……///」
イザナギ「い、言わんでいい!!」
Siri「……チッ。いいからとっととまとめてください」
イザナギ「なにこのAI怖い……」
イザナミ「えっと、続けて生んだのが“吉備児嶋(キビノコジマ)”、“小豆嶋(アズキシマ)”――」
イザナギ「神名はタケヒカタワケ、オオノデヒメ――」
イザナミ「それから“大嶋(オオシマ)”、“女嶋(ヒメジマ)”、“知訶嶋(チカノシマ)”――」
イザナギ「オオタマルワケ、アメヒトツネ、アメノオシオ――」
イザナミ「で、最後がさっき生まれた“両児嶋(フタゴノシマ)”。つまり、アメノフタヤね」
Siri「はい終了~。お疲れさまでした」
イザナギ「なんでこんな巻きで国生みの経緯振り返らされてんだ……?」
Siri「今回はそういうお話ですから」
イザナギ「そうですか……。でも、改めて振り返ると結構な数になったもんだ」
イザナミ「ちゃんとメモっておかないと忘れちゃうかも……」
イザナギ「いや、自分の子の名前くらい覚えとけよ!」
イザナミ「てへぺろ♪」
イザナギ「でも、まだ終わりじゃないぞ」
イザナミ「えっ!?まだ生むの???」
イザナギ「そりゃあ国土だけあっても仕方ないだろ?ちゃんとこの国を守る神々も生まないと」
イザナミ「もう、イザナギったら……お・さ・か・ん☆」
イザナギ「言わんでいい!!」
Siri(腕があったら殴りたい……)
※この後めちゃくちゃ神生んだ。
―完―
【キャスト】
・イザナギ
・イザナミ
・カムムスヒ
・アメノミナカヌシ
・タカミムスヒ
・Siri
作:若布彦(説明パートは読み飛ばしていただいて結構です……)
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