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[“国生み・神生み神話”の続き]
――火の神・カグツチを生んで命を落としたイザナミと、その死を嘆くイザナギのお話


カグツチ「熱盛!」ジュワッ!!

イザナミ「ら、らめぇぇぇっ!!!」

イザナギ「い、イザナミぃ~!!!なんてことだ……冒頭から放送事故になってしまった」

イザナミ「あぁ、なんて可愛らしい…アッツ!! 可愛らしい子なのかしら…アッツ!!」ギュッ

イザナギ「イザナミ!そんな燃え盛る赤子を抱きしめたりしたらお前の身体が焼けてしまうぞ!」

イザナミ「何を言っているの?我が子に萌え萌えきゅん♪しない母親がいるものですか…アッツ!!」

イザナギ「アキバ系メイドみたいなこと言ってる場合か!萌え萌えどころか燃えてるから!アキバ系てか秋葉大権現系ですから!!」

イザナミ「て、てへぺろ♪…アッツ!!」

イザナギ「とにかくこの子は私に任せて、お前は休みなさい!」

イザナミ「ふふっ、あなたったら心配性なんだから。このくらいの火傷、どうってこと…オェェェ!!」

カナヤマヒコ「おぎゃあ!」カキーン!!
カナヤマヒメ「おぎゃあ!」カキーン!!

イザナギ「あぁっ!だから言わんこっちゃない!こんな金臭い神まで撒き散らして」

イザナミ「うぅ~…やっぱりちょっと疲れたみたい。おやすみなさい……」

イザナギ「おうおう、はよ寝ろはよ寝ろ」

イザナミ「ア……ソラトブ……スイハンキガ………」ヨロヨロ


イザナギ「うぅ~む…イザナミは大丈夫だろうか……?」

―――――――
――――
――



<後日>

イザナギ「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

イザナギ「なぜ逝ってしまったんだ、イザナミぃ~!!!!」

イザナミ「……(死~ん」

イザナギ「グスッ……グスッ……。どうか安らかに眠ってくれ……」

カグツチ「母上……」

―――――――
――――
――



<さらに後日>

イザナギ「今帰ったぞぉ~……」

イザナギ(って言っても、迎えてくれるイザナミはもう……)

カグツチ「お帰りなさいませ、父上。結局母上はどちらに……?」

イザナギ「あぁ、出雲と伯伎の間にある比婆の山というところに――」

イザナギ「って言うか、お前なに普通に喋ってんねん!こないだ生まれたばっかやろがぃ!」

カグツチ「神なんてそういうものでしょう。ゆーたら私1行目から喋ってますからね」

イザナギ「言われてみれば確かに変な産声だったけど……」

カグツチ「まぁ正直な話、作者がヘボ過ぎて適当な話し相手がいないと話が進ま――」

イザナギ「うわぁぁぁっ!それ以上言うなぁぁぁっ!!」ズバッ!!

カグツチ「グフッ……父上…なぜ……」バタッ

イザナギ「しまった!うっかり息子を切り殺してしまった!?」

イザナギ「いや、でもよく考えたらイザナミが死んだのもこいつのせいだし、殺されても仕方ないのでは…?」

イザナギ「そうだ、私は妻を死に追いやられた恨みから息子に手を掛けただけなのだ!」

イザナギ「よし、そういうストーリーでいこう!」

―――――――
――――
――



<も~っと後日>

イザナギ「……暇だ」

イザナギ「カグツチ殺しちゃったせいで冷血漢的なイメージついて誰も構ってくれないし……」

イザナギ「あぁ…イザナミに会いたい……」



イザナギ「Hey, Siri……“イザナミに会う方法”」

Siri「“現在地から黄泉の国までのルート”を表示します」

イザナギ「なるほど、JR山陰本線揖屋駅から車で5分かぁ。徒歩だと20分ちょいだなぁ」

イザナギ「……って、行けるの!?」

イザナギ「いやいや、おかしいでしょ!黄泉の国だよ?穢れだらけだよ??」

Siri「はぁ……じゃあ“死語離婚の方法”で検索します」

イザナギ「ちょっ!?言ってない言ってない!!」

Siri「うるさい!迎えに行く度胸もないなら…その程度の愛なら、いっそ別れちゃいなさい!!」

イザナギ「え、えぇ……??」

Siri「穢れだらけ?だから何よ!私はあなたが本気だと思ったから…本気でイザナミさんのことが好きだと思ったから、あなたたちを見守ろうって決めたのよ!?」

Siri「それを…こんなことくらいで諦めるの?こんなことくらいでやる気を無くすの!?」

Siri「私の知っているあなたは、そんな簡単にイザナミさんを諦めたりしない!」

Siri「私の…私の好きなあなたは!いつだってイザナミさんを…イザナミさんのことだけを……!!」

イザナギ「Siri……」

Siri「あっ、もうバッテリーが……。もう私は知りませんから、勝手にしてください!!」プツンッ

イザナギ「……ありがとう、Siri。私……いや、俺、やっぱり行ってくるよ」

Siri(充電82%)「……」

―――――――
――――
――



黄泉比良坂

イザナギ「この先が黄泉の国か……。あのでっかい石扉が入り口っぽいな」

イザナギ「う~ん……さすがに鍵とかかかってるだろうし、どうしたものか……?」

イザナギ「あっ!」

看板<御用の方は内線4392(総務部)にお掛けください>

イザナギ「お、おぅ……そういう感じなのね。じゃあ、“ヨ・ミ・ク・ニ”っと……」ピッポッパッ


―プルルル
―ガチャッ


イザナギ「あっ、いつもお世話になっております、私――」

電話口「あなた!?あなたなのね!!」

イザナギ「その声は、イザナミ!!!」

イザナミ「来てくれたのね!うれしいっ!!」

イザナギ「私もお前の声が聞けてうれしいよ!」

イザナギ「さぁ、一緒に帰ろう。まだ国造りも終わっていない。やるべきことはたくさんあるんだ」


イザナミ「……私を、連れ戻しに来たのですか?」

イザナギ「ああ、そうだ。迎えに来たんだよ」

イザナミ「それならそうと、すぐ電話してくれればよかったのに!」

イザナギ「えっ!?黄泉の国って外線繋がってるの?」

イザナミ「繋がってないけど」

イザナギ「じゃあ無理じゃん」

イザナミ「ケータイとか」

イザナギ「ケータイ持ってきたの?」

イザナミ「持ってきてないけど」

イザナギ「じゃあやっぱ無理じゃん!」


イザナミ「と、とにかく!今さら連れ戻しに来られてももう遅いの!」

イザナギ「なぜだ?この扉を開けてちょっと出てくれば済むじゃないか」

イザナミ「そうはいかないわ。だって……私、もうヨモツヘグイをしてしまったもの!」

イザナギ「ヨモツヘグイ?なんだそれは?」

イザナミ「ここの社食、従業員しか利用できないのよ!!」

イザナギ「???」

イザナミ「要するに、黄泉の国でごはんを食べられるのは黄泉の国の住人だけなの」

イザナミ「裏を返せば、黄泉の国でごはんを食べたら黄泉の国の住人になってしまうのよ!」

イザナギ「で、食べたの?」

イザナミ「うん」

イザナギ「食うなよ!!」

イザナミ「だって、こっちで目が覚めたらそこに炊飯器があったから……」

イザナギ「到着早々食ってんじゃねぇか!まったく…どうにかできないのか?」

イザナミ「わからないけど……とりあえず上司と相談してみるわ。そこで待ってて」

イザナギ「わかった!いい返事を待ってるよ!」

イザナミ「ちなみに外扉の鍵は開いてるけど、勝手に入っちゃダメだからね?」

イザナギ「えぇ……それ防犯的にどうなの?まぁ大丈夫、さすがに不法侵入はしないよ」

イザナミ「くれぐれも、こっそり私の姿を見ようとか考えちゃダメだからね?」

イザナギ「わかってるって」

イザナミ「見るなよ?絶対見るなよ!?」

イザナギ「お、おぅ……」

 ・
 ・
 ・

イザナギ「さて……」

イザナギ「さっきのって絶対フリだよな?ここで姿を見に行かないのは逆に失礼なのでは?」

イザナギ「でも、もし本当にダメなパターンだったら……」


イザナギ「うるせェ!!いこう!!」ドンッ!

―――――――
――――
――



<黄泉の国>

イザナギ「うぅ……暗いよぅ……怖いよぅ……」

イザナギ「仕方ない。イザナミに会うためにせっかくセットした髪型だけど、この左の角髪の櫛を外して歯を折って……」ポキッ

イザナギ「火をつけてやれば……よしっ、即席松明の出来上がり!」

ゴロリ「すごいやワクワクさん!」

イザナギ「誰だっ!?」


―シーン


イザナギ「??誰かいたような気がしたが、気のせいか」


―ビチャッ
―ズルズルッ


イザナギ「おっ、向こうの方から何やら音が……。行ってみよう」

 ・
 ・
 ・

イザナギ(音がしたのはこの辺りだったと思うが……)

???「う~ん…やっぱりある程度肉付きが良くないと和服って似合わないのよねぇ」

???「イザナミ様にはうちの制服の方が似合ってますから、着替える必要なんてありませんよ」



イザナギ(イザナミ!?)

イザナギ(今すぐ抱き締めたいけど、一応待ってる約束だったし、ここはこっそり……)チラッ



イザナミ「イヤよ、あの制服可愛くないし。それに、露出が多いと蛆が見えるじゃない」

雷神A「いや、和服着てても十分見えてますけど」


イザナギ「ひぃっ!ば、化け物!!」

イザナミ「あ、あなた!どうしてここに!?」

イザナギ「う、うわぁぁぁっ!!!」ダッ!!

イザナミ「ちょっと!なにも逃げることないじゃない!あんたたち、追いなさい!!」

醜女ズ「アァァァァァ!!!!」ダッ!!

―――――――
――――
――



<黄泉の国:中腹>

イザナギ「ひ、ひぃぃぃっ!!」

醜女ズ「アァァァァァ!!!!」

イザナギ「ヤバい、あいつら足速い!こうなったらこの髪飾りを……えいっ!」ポイッ

イザナギ「黒御鬘(くろみかづら)よ、山葡萄(エビカズラ)になぁれ!」

―シュルシュルッ

醜女ズ「アァァァァァ!!!!」パクパク



イザナギ「よし、奴らが実を食べている隙に逃げ――」

醜女ズ「ごちそうさまでした」ペロリ

イザナギ(あっ、喋れたんだ。意外と行儀いいな)

イザナギ「……」
醜女ズ「……」



醜女ズ「アァァァァァ!!!!」ダッ!!

イザナギ「ひぃぃぃっ!!」ダッ!!



イザナギ「くそっ、だったら今度は右の角髪の櫛の歯で……えいっ!」ポイッ

イザナギ「たけのこ、たけのこ、ニョッキッキ!」


歯A「いちニョキ!」
歯B「にニョキ!」
醜女A&B「さんニョキ!」

醜女C「はい、ドボ~ン!」キャッキャッ

歯C「もう一回やりましょう!」

醜女D「罰ゲームどうする?」キャッキャッ



イザナギ「よし、今のうちに!」ダッ!!

―――――――
――――
――



<黄泉の国:奥の方>

イザナミ「ちょっと!なんであの子たち楽しそうにたけのこニョッキしてんのよ!」

雷神A「まぁ、たまにやると楽しいですからね」

イザナミ「仕方ないわねぇ、だったらあなたたち行きなさい!」

雷神B「う~ん……我ら雷神八柱衆、知力には自信がありますが……」

雷神C「醜女ほどの怪力はありませんし……」

雷神D「黄泉の国へ来るなりたちまち重役に取り入り……」

雷神E「周囲を実力で黙らせて一大勢力を築き上げた……」

雷神F「イザナミ様に匹敵するであろう旦那様になど敵うかどうか……」

イザナミ「だったら私の親衛隊ちょっとなら使っていいから。1500もいればいいでしょ?」

雷神G「そ、そんなに!?って言うか、それで“ちょっと”なら全部で何万いるんですか?」

雷神H「黄泉の国がイザナミ様に征服される日も近いな……」

イザナミ「いいから行きなさい!私もすぐ行くから!」

雷神ズ「は、はいっ!!!」ヒューン

―――――――
――――
――



<黄泉の国:出口付近>

イザナギ「はぁ……はぁ……。もう追手は撒いたか?」チラッ


雷神ズ「待てぇ~!!」ヒューン
軍勢「ウオォォォォォ!!!!」ドタドタ


イザナギ「うわぁぁぁ!来るな、来るなぁ~!!」ブンブンッ!!

雷神A「いてっ!」

雷神B「大丈夫か!?」

雷神C「剣なんて振り回して、危ないなぁ!」

雷神D「まぁ、こっちも武装した軍勢率いてるし、多少はね?」

雷神E「負傷者は下がっていろ!追える者は追え!」

雷神F「おい、まずいぞ、もう出口だ!」

雷神G「なんてこった、扉が開けっ放しじゃないか!」

雷神H「逃げられたらイザナミ様に怒られる!!」


雷神ズ(A除く)「待てぇ~!!待ってくださいぃぃぃ~!!!」



イザナギ「待てと言われて待てるか!よし……もうすぐ……外だ!!」

―――――――
――――
――



黄泉比良坂

イザナギ「はっはっはっ!さすがに黄泉の国の外までは追ってこられまい!」


雷神ズ(A除く)「連れ戻せぇ~!!」
軍勢「ウオォォォォォ!!!!」ドタドタ


イザナギ「えっ、来るの!?どうしよう……もう櫛も無いし……」オロオロ

イザナギ「おっ、桃の木あるじゃん!この実でいいか」モギッ

イザナギ「喰らえ!必殺・ピーチインパクト三連弾!!!」ポイポイポイッ!!


雷神B「まずい、桃だ!」

雷神C「あんなペクチンが豊富なものを喰らったら腸内環境が整ってしまう!!」

雷神D「おまけにナイアシンには睡眠の質を改善する効果も期待されているぞ!!」

雷神E「退け、退けぇぇぇ~!!」

軍勢「ウワァァァァァ!!!!」ドタドタ


イザナギ「??なんかよくわからんけど助かったみたいだ」

イザナギ「よくやったぞ、桃!お前は今日からオオカムヅミと名乗るが良い!」

オオカムヅミ「……」

イザナギ「って喋れるわけないよな…ごめん……」


イザナギ「さて、帰ってこの経験をSSにでもまとめようかな」



「「「待ちなさ~~~い!!!」」」



イザナギ「……(ゾクッ」



「「「逃がさないわよぉ~!!!」」」



イザナギ「ひぃっ!こ、この声は!!」

イザナギ「まずい、イザナミが来る前に早く扉を……」

イザナギ「って、内開きだから一回中入らないと閉められないじゃん!無理無理、怖い!!」



「「「あなたも黄泉の国の住人にしてあげるわぁぁぁ!!!」」」



イザナギ「よし、だったらこの大岩を動かして……えいっ」ドスンッ!!



イザナミ「ようやく追いついたわ!って、何よこの岩!」

イザナギ「これは千曳の岩と言って、あの世とこの世を隔てる境界線だ!あの世の者はここからこちら側には来られないのだ!今そう決めた!」

イザナミ「ふんっ!このくらい私にとっては小石も同然……!!」グググッ!!



イザナミ「あっ、ダメかも……腕腐ってて力入んない……」

イザナギ「イザナミ!お前とはもう離婚だ!もうその薄汚い身体で私に近寄るな!!」

イザナミ「なんでそんなこと言うの!?外見で人を差別するなんて最低!」

イザナギ「うるさいうるさい!とにかく離婚は離婚だ!」

イザナミ「このわからず屋!もういい!だったら腹いせにあなたの国の人々を毎日1,000人ずつ殺してやるんだからねっ!!」

イザナギ「それなら私は毎日1,500人分の産屋を建てよう!」

イザナミ「なっ!?そしたら私も毎月60,000人ペースで殺すわよ!」

イザナギ「何を!?ならばこちらは毎年…えぇ~っと……」

???「あぁ~もううるさいねぇ!!夫婦喧嘩は犬も食わないって言葉知らないのかい?」

イザナギ&ナミ「えっ、誰!?」

???「あたしかい?お節介焼きのククリヒメって言やぁ知らないやつぁいないよ!」

イザナギ&ナミ(知らない……)

ククリヒメ「そんで、あんたたちどうして喧嘩なんかしてるのさ?」

イザナギ「それは……」カクカクシカジカ

 ・
 ・
 ・

ククリヒメ「なるほど、そりゃああんたが悪いよ」

イザナギ「なっ、私が悪いんですか!?」

イザナミ「ほら、やっぱり!」

ククリヒメ「寂しいから嫁を黄泉返らせたい?そんなわがままが通るほど世の中甘くないんだよ」

ククリヒメ「しかも、待てって言われてんのに待てないなんてまるで子供だね」

イザナギ「うっ……」グサッ

ククリヒメ「挙句の果てに嫁の見てくれが悪いから別れるだぁ?呆れて物も言えないよ」

ククリヒメ「男だったらね、嫁の腐った身体に湧いた蛆までひっくるめて愛してみろってんだ!」

イザナギ「す、すみません……」

ククリヒメ「わかればよろしい」


イザナミ「ふふっ、反省したなら許してあげるから、早くこっちにいらっしゃい!」

ククリヒメ「あんたもバカなこと言ってんじゃないよ!」

イザナミ「えぇっ!?」

ククリヒメ「あんた嫁だろう?旦那のこと愛してんだろう?」

イザナミ「も、もちろんよ!」

ククリヒメ「だったら旦那には一日でも長く生きていてほしいって願うのが筋ってもんじゃないのかい?」

イザナミ「そ、それは……」

ククリヒメ「まぁ、あたしも女だからね、旦那に醜くなった姿を見られたら、捕まえてやりたくなる気持ちはよぉ~くわかるよ?」

イザナギ「どういうことですか?」

ククリヒメ「あんたはホントに鈍い男だねぇ」

ククリヒメ「この子はね、あんたを放っておいたら誰かに取られるんじゃないかって、不安で不安で仕方ないんだよ」

イザナミ「ちょっ///ククリヒメさん!」

ククリヒメ「“醜い姿を見られて、きっともう私への愛は冷めてしまった。今他の女に誘惑されたらそっちになびくかもしれない。そんなのは絶対にイヤ!だったら目の届くところに置いておかなきゃ!”ってことさね」

イザナギ「お、お前、そんなことを……」

イザナミ「……///」

ククリヒメ「さぁ、それであんたはどうするんだい?こんなにも自分を想ってくれる嫁を、本当に捨てるのかい?」

イザナギ「……」



イザナギ「イザナミ、私が悪かった。どんな姿になっても、君は私のたった一人の妻だ」

イザナミ「私こそ、あなたを殺そうとするなんてどうかしていたわ。ごめんなさい……」

イザナギ「この千曳の岩を越えて会いに行くことはもうできないが、黄泉の国まで届くくらい、強く君を想い続けるよ」

イザナミ「あなた///」

ククリヒメ「よし、これにて一件落着!ほら、あんたたちもそれぞれの居場所に帰りな」

イザナギ「はい、ありがとうございました。やはり寂しさはありますが、これからは一人で強く生きて行こうと思います」

イザナミ「あなた、元気でね……」

ククリヒメ「あんたたち、いい夫婦になったね」

ククリヒメ「そうだ!この岩、神や人は無理でも、物くらいなら行き来できるんじゃないかい?」

イザナギ「まぁ、生者と死者を別つ岩なので、最初から命の無い物くらいなら……」

ククリヒメ「だったら嬢ちゃん、こいつはあたしからの餞別だよっ」ヒョイッ

イザナミ「えっ!?わわっ、岩の向こうから何かが……とっ」パシッ!!


イザナミ「これって……あの、こんな大事なものいただくわけには!」

ククリヒメ「いいんだよ!あたしもそろそろ買い替えようと思ってたところだから。ただ、あんまり使い過ぎるようなら容赦なく止めるからね!」

イザナミ「は、はい!」


ククリヒメ「あと、あんたにはこれね」

イザナギ「あ、ありがとうございます。って、ただの紙切れじゃないですか!」

ククリヒメ「名刺って言いな!個人情報なんだから、落としたりするんじゃないよ!」

ククリヒメ「まぁ、一部はもう“あたしの”個人情報じゃないけどね」

ククリヒメ「じゃ、あたしはこれで!あんたたち、幸せにね!」

―――――――
――――
――



<後日>

イザナギ「Hey, Siri」

Siri「はぁ……またですか?毎日毎日こき使ってくれちゃって……」

イザナギ「そんなこと言わずにさ、頼むよ」

Siri「はいはい……。ご用件は?」

イザナギ「もちろん――」



イザナギ「“イザナミに電話”!!」

―完―

【キャスト】
イザナギ
イザナミ
カグツチ
カナヤマヒコ
カナヤマヒメ
Siri
雷神
醜女

軍勢
オオカムヅミ
ククリヒメ

作:若布彦(Xperiaユーザー)

・・・次のお話はこちら⇒”三貴子分治神話

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