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[“神武東征神話⑤”の続き]
――土蜘蛛に待ち伏せされたカムヤマトイワレビコ一行のお話


<忍坂の大室>

――スルスルスルー


サオネツヒコ「よっ……と」シュタッ



イワレビコ「偵察ご苦労。木の上からは何か見えたか?」

サオネツヒコ「マズいですよ、旦那……。この先で土人の大軍が待ち構えてます……」

イワレビコ「待ち伏せか……困ったな……」

サオネツヒコ「例によって尻尾をぶら下げてましたけど、イヒカたちと違って友好的ではなさそうです……」

タカクラジ「いわゆる土蜘蛛(つちぐも)という奴らですね……」

イワレビコ「土蜘蛛か……。と言うか、よく尻尾まで見えたな」

サオネツヒコ「あっしは海育ちで目がいいんですよ。飛行船の見張りだって務まります」

イワレビコ「それは海育ちではなく山育ち系ヒロインの専売特許だろう」

タカクラジ「そのネタが通じる人はどれだけいるんですかね……?」


イワレビコ「いずれにせよ、迂闊に進んでいたら危なかったな」

タカクラジ「八咫烏が早めに危険を察知してくれて助かりましたね」

サオネツヒコ「どうします?迂回しますか??」

イワレビコ「う~む……」



イワレビコ「いや、土蜘蛛をどうにかしてこのまま進もう」

サオネツヒコ「どうにかすると言っても、あの数を相手にするにはさすがに戦力が……」

タカクラジ「仮に勝てたとしても、相応の犠牲は覚悟する必要がありそうです……」

イワレビコ「問題ない。私に秘策がある!」

サオ&クラジ「秘策……?」


―――――――
――――
――




<土蜘蛛本陣>

土蜘蛛A「おい聞いたか?敵の大将を討ち取ったヤツには特別ボーナスが出るらしいぞ!」

土蜘蛛B「特別ボーナスだと!?一体何がもらえるんだ??」

土蜘蛛A「詳しくはわからねぇが、やっぱ食いもんじゃねぇか?あんこ入りチョコとか」

土蜘蛛B「あんことチョコのコラボレーションだと!?そりゃあ張り切るしかねぇな!!」ジュルリ…

土蜘蛛C「んなこと言っておめぇ、敵の大将が誰だか知ってんのか?」

土蜘蛛B「……」


土蜘蛛B「知らん」

土蜘蛛C「ダメじゃねぇか!」

土蜘蛛B「そういうおめぇは知ってんのかよ!?」

土蜘蛛C「……」


土蜘蛛C「知らん」

土蜘蛛B「やっぱダメじゃねぇか!」

土蜘蛛A「落ち着けおめぇら!要は皆殺しにすりゃいいってことだろ?」

土蜘蛛B「あぁ!それもそうだな!」

土蜘蛛C「よし、それじゃあ皆殺しだ!!」



土蜘蛛A「土蜘蛛防衛隊!」

土蜘蛛たち「ファイヤーーー!!」


――ガサガサッ


土蜘蛛A「ん?何か物音がしたぞ!」

土蜘蛛B「もしかして敵か!?」

土蜘蛛C「そこにいるのは誰だ!?大人しく出て来やがれ!!」


――ガサガサッ


膳夫(かしわで)A「いやはや、これはどうもどうも」ヘコヘコ

膳夫B「山中での待ち伏せ、お疲れさまでございます」ヘコヘコ

膳夫C「そろそろ休憩にしてはいかがですかな?」ヘコヘコ



土蜘蛛A「な、なんだてめぇらは!?」

膳夫A「私どもはしがない料理人でございます」

土蜘蛛B「何しに来やがった!?」

膳夫B「もちろん、あなた様方にお食事をふるまいに来たに決まっているではありませんか」

土蜘蛛C「そんなもん頼んだ覚えはねぇし、払う金もねぇぞ!?」

膳夫C「お代でしたら既にあるお方から頂戴しておりますので、お気になさらず」


土蜘蛛たち「あるお方……?」


膳夫A「それではご紹介いたします!」ドドドドドッ

膳夫B「今回の宴のホストであり、私どもの雇い主であらせられる!」ドドドドドッ

膳夫C「カムヤマトイワレビコ様です!!」ドドドドドッ



イワレビコ「私が、来た!!」バーン!!



土蜘蛛A「カムヤマト……って、もしかして俺らが命を狙ってる相手じゃねぇのか!?」

土蜘蛛B「わかんねぇけどそうかもしれねぇ!やっちまおうぜ!!」

土蜘蛛C「のこのこ出て来たことを後悔させてやる!覚悟しやがれ!!」チャキッ


イワレビコ「まぁ待て、こちらに害意はない。お主らとは和睦しに来たのだ」

土蜘蛛A「和睦だとぉ?何言ってんだ、おめぇ??」

イワレビコ「まずは友好の証に、食事を振る舞おう」

土蜘蛛B「ほぉ……タダで飯を食わしてくれるってのか」

イワレビコ「うむ。十分な食材と膳夫を揃えてある、好きなだけ飲み食いしてくれ」

土蜘蛛C「好きなだけ……だと……?」ジュルリ…



土蜘蛛A「……おめぇら、料理の腕は確かなんだろうな?」

膳夫A「もちろんでございます」

土蜘蛛B「……デザートにはあんこ入りチョコもあるのか?」

膳夫B「白あんもございますよ」

土蜘蛛C「……毒なんて盛ったりしないだろうな?」

膳夫C「まさか!料理人の誇りにかけて、“料理にだけは”細工などいたしません」



イワレビコ「どうだ?悪い話ではないと思うが」

土蜘蛛たち「……」

土蜘蛛A「まぁ、そういうことなら……」

土蜘蛛B「そもそも、なんで戦おうとしてたのかもよくわかんねぇし……」

土蜘蛛C「せっかくの申し出を断るのも……なぁ?」

イワレビコ(しめしめ……)ニヤリ



膳夫A「では――」

膳夫B「皆様――」

膳夫C「ご注文は?」



土蜘蛛たち「「とりあえず生!!」」

膳夫たち「「はい、喜んで!!」」


―――――――
――――
――




<宴もたけなわ>

――ワイワイガヤガヤ

――ドンチャンドンチャン


イワレビコ「ふむ。どうやら宴もたけなわといった感じだな」

サオネツヒコ「旦那、こんな敵に塩を送るような真似してよかったんですかい?」

タカクラジ「土蜘蛛の大軍と同等の数の料理人を集めて、料理を振る舞うなんて……」

イワレビコ「うむ、これで良い。計画どおりだ」



イワレビコ「それにしても、よくこれだけの数の膳夫を手配できたな」

サオネツヒコ「その辺はご都合主義ってヤツですね」

タカクラジ「オオクメ様のツテを使ってどうにかかき集めた感じです」

イワレビコ「オオクメはそんなに顔が広かったのか……?」

サオネツヒコ「さすが久米直(くめのあたい)の祖神ですねぇ~」

タカクラジ「これだけ料理人を集められるなら、大軍を集めて攻め込むこともできたんじゃ……?って気もしますけど」

イワレビコ「それは……確かに……」



サオネツヒコ「それで、これからどうするんですかい?」

イワレビコ「うむ。実はあの膳夫どもには刀を持たせているのだ」

タカクラジ「刀?包丁の数でも足りなかったのですか??」

イワレビコ「いや、奴らには『歌を聴いたら一斉に切りかかれ』と伝えてある」

サオネツヒコ「なるほど、いわゆる必殺料理人ってヤツですね!」

イワレビコ「騙し討ちなどという汚い手を使うのは不本意だが、背に腹は代えられん」

タカクラジ「まぁ、向こうも正々堂々ではなく待ち伏せを狙っていたわけですし、おあいこでは?」

イワレビコ「そういうことだ」



イワレビコ「さて、それではそろそろ土蜘蛛を討つ歌を詠うとするか」

イワレビコ「……スゥー」



(※以下意訳)

『忍坂の大室屋に人が大勢入って来ている』

『いかに大勢の人が入って来ていたとしても』

『久米の子が頭椎(かぶつち)の石椎(いしつち)の太刀をもって討ち滅ぼしてやるぞ』

『久米の子が頭椎(かぶつち)の石椎(いしつち)の太刀をもって、今こそ討つがいい!』



膳夫たち「……!!」ピクッ


土蜘蛛A「おい、ビールおかわりだ!」

土蜘蛛B「こっちは緑茶ハイ!」

土蜘蛛C「あとレモンサワーも!」


膳夫A「いやはや、宴もたけなわではございますが……」チャキッ

膳夫B「あいにく、お時間が来たようですので……」チャキッ

膳夫C「我々が最後に料理するのは……」チャキッ


土蜘蛛A「……ん?な、なんだおめぇら!?」

土蜘蛛B「刀なんてどこに隠し持ってやがった!?」

土蜘蛛C「そいつで何をするつもりだ!?」

土蜘蛛たち「「ま……まさかっ!!??」」



膳夫たち「「お覚悟!!」」クワッ!!


(※自主規制 R-15)


―完―

【キャスト】
カムヤマトイワレビコ
サオネツヒコ
タカクラジ
土蜘蛛
膳夫


作:若布彦(頭数がいて料理もできて武力もある久米直とかいうチート一族)

・・・次のお話はこちら⇒“神武東征神話⑦

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