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[“猿田毘古神話”の続き]
――葦原の中つ国へ降りるニニギにアマテラスが餞別を渡しまくるお話
<高天原>
アマテラス「さて、ウズメさんの働きのおかげで、葦原の中つ国への案内役を得ることができました」
アマテラス「これで安心してニニギを送り出せます」ホッ
アメノウズメ「まぁ、これまでもバンバン行き来してたし、今さら案内役なんて必要ないけどね~」
アマテラス「何を言っているのです、ウズメさん!山をナメているのですか!?」
アメノウズメ「えっ、なんで唐突に山!?」
アマテラス「葦原の中つ国から見れば高天原は雲の上の国……」
アマテラス「つまり、天降りはエベレストから下山するようなものです!」
アメノウズメ「全然違うから!中つ国に降りる途中で遭難した、なんて話も聞いたこと無いし!」
アマテラス「わかっていませんね、ウズメさん。そういう油断が、山では命取りになるのですよ」
アメノウズメ「いや、だから山じゃないって」
アマテラス「何にせよ、案内役がいるに越したことはありません。備えあれば憂いなしです」
アメノウズメ「はいはい……」
アマテラス「しかし、考えてみれば案内役が国津神のサルタヒコさんだけというのも少々不安ですね……」
アメノウズメ「そうかい?さすがに途中で迷ったりはしないと思うけど??」
アマテラス「いいえ、山では何が起こるかわかりません。常に二重、三重の保険をかけねば……」
アメノウズメ「だから山じゃない……って言うか、それ山と関係ないでしょ!」
アマテラス「ここはやはり、天津神からも優秀な側近を同行させましょう!」
アメノウズメ「……まぁ、中つ国を統治するのにも手は要るし、側近を付けるのはいいと思うけど」
アメノウズメ「それで、誰を同行させるんだい?」
アマテラス「そうですねぇ……諸々の知識や判断力、緊急時の対応力等を勘案すると――」
アマテラス「アメノコヤネさん、フトダマさん、ウズメさんにイシコリドメさん……」
アマテラス「それから、タマノオヤさんでどうでしょうか?」
アメノウズメ「ひぃ、ふぅ、みぃ……」
アメノウズメ「合わせて五柱か。なんか戦隊モノみたいだね」
アマテラス「では、この五柱を“ニニギ見守り戦隊☆五伴緒(いつとものお)ジャー”と名付けましょう」
アメノウズメ(うわっ、名前ダッサ……)
アマテラス「よろしく頼みますよ、“伴緒ピンク”さん!」
アメノウズメ「……は?何の話――」
アメノウズメ「って、よく見たらしれっとアタシもメンバーに入ってんじゃん!!」
アマテラス「サルタヒコさんの素性を明らかにしたそなたの働きは見事なものでした」
アマテラス「そんなそなたの手腕を見込んでの大抜擢ですよ!おめでとうございます!」
アメノウズメ「えぇっ!?この(ダッサい)戦隊入りは栄転扱いなのかい!?」
アマテラス「当然です!ニニギの側近なのですから、最高の処遇ではないですか!」
アメノウズメ「……(めんどくさ……)」
アメノウズメ「まぁ、お嬢がそうしろって言うんなら構わないけどさぁ……」
アマテラス「では改めて、よろしく頼みますよ、“伴緒ピンク”さん♪」
アメノウズメ「その呼び方はマジで勘弁して!!」
―――――――
――――
――
<後日>
――ザワザワ
アマテラス「ついに出発の日がやってきましたね、ニニギ」
ニニギ「私の統治者デビュー記念日として申し分ない、良い日和です」キラリンッ☆
アマテラス「では、そなたに餞別としてこれを授けましょう」スッ
ニニギ「これは……」
アマテラス「いつぞやの岩戸籠りの際、“わたくしの神々しさを崇めるために”天津神の皆さんが造った勾玉と鏡です」
アメノウズメ(ねぇ、“天岩戸神話”ってそんな話だったっけ?)ヒソヒソ
オモイカネ(いえ、全然違いますね)ヒソヒソ
アメノウズメ(お嬢……ニニギが生まれる前の話だからって“盛った”な……)ヒソヒソ
アマテラス「それから、この草薙の剣もそなたに授けましょう」スッ
ニニギ「うわっ、なにやら妖しげな剣ですね……。ってか、生臭っ!」
アマテラス「これはスサノオからわたくしへの愛の籠ったプレゼントなので、本当は手放したくないのですが……」
ニニギ「いや、そんなに大事なものなら結構ですよ……。なんか爬虫類っぽい臭いしますし……」
アマテラス「いえ、遠慮せず受け取ってください。きっとスサノオがそなたを守ってくれます」
ニニギ「はぁ……ありがとうございます……(うぇぇ~……)」
アマテラス「さ・ら・に!今回はなんと、出血大サービスで――」
ニニギ「えっ!?まだ餞別があるんですか??」
アマテラス「フフッ♪可愛いニニギのためですからね。今回だけ特別ですよ♪」ウキウキ
オモイカネ「あのぉ~……」
アマテラス「何ですか、オモイカネさん?せっかくのプレゼントタイムに水を差さないでください」
オモイカネ「いや……あまり餞別を奮発しすぎるのもどうかと思いますよ?」
アメノウズメ「そんなケチ臭いこと言うなよ、オモイカネ~。最後の機会なんだから」
アマテラス「そうですよ!伴緒ピンクさんの仰るとおりです!」
オモイカネ「伴緒ピンク??」
アマテラス「そう言えば説明がまだでしたね。実はウズメさんはニニギ見守り戦隊☆五伴緒ジャーのピンク担当で――」
アメノウズメ「ワーワーワーッ!!!!」
アメノウズメ「と、とにかく!同行組のアタシとしては餞別は多い方が助かる!!」
オモイカネ「そうは言っても、資産を流出しすぎると高天原が財政が悪化しますし……」
アマテラス「その点はご心配なく!必要なものはちゃんと残すように考えています!」
アメノウズメ「おっ、さすがお嬢!意外と抑えるとこは抑えてんだね!」
オモイカネ「それならいいのですが……」
ニニギ(要するに、出血大サービスって言っても大したものはもらえないのかぁ……)
アマテラス「では改めて――」
アマテラス「出血大サービスで――」ドドドドドッ
アマテラス「オモイカネさんとタヂカラオさんとアメノイワトワケさんもお付けします!!」バーン!!
アマテラス「わぁ~~」パチパチパチパチ
ニニギ「……」
アメノウズメ「……」
オモイカネ「……」
アマテラス「わぁ~~」パチパチパチパチ
――スンッ
アマテラス「コホン……ということでオモイカネさん、よろしく頼みますよ」
オモイカネ「ちょ、ちょっと待ってください!私に葦原の中つ国へ降りろと!?」
アマテラス「はい。聞こえませんでしたか?」
オモイカネ「ですが、先ほど“高天原に必要なものはちゃんと残す”と……」
アマテラス「ですから、こちらでの祭祀に使う祭具や宝物はきちんと取り置いていますよ?」
オモイカネ「物ではなくて、私は必要ではないんですか!?」
アマテラス「あぁ~……まぁ、オモイカネさんがいなくてもどうにかなりますよ」アッケラカーン
オモイカネ「そ、そんなぁ……」ガーン!!
アメノウズメ「必要とされてなくて残念だったね、オモイカネ♪」シシシッ
オモイカネ「……うるさいですよ、“伴緒ピンク”さん」イラッ
アメノウズメ「あんた喧嘩売ってんのかい……?」イライラッ
オモイカネ&ウズメ「ガルルルルル……」バチバチ
アマテラス「そなたたち!ニニギの晴れの日に喧嘩はやめなさい、みっともない!」
オモイカネ&ウズメ「ふんっ!」プイッ
アマテラス「さて……ニニギ、わたくしからの餞別は以上ですが、不足はありますか?」
ニニギ「宝物も従者も、これだけいただければ十分です。ありがとうございます」
アマテラス「そうですか。では、この鏡はわたくしの御魂として、わたくしを拝むようにお祀りなさい」
ニニギ「えぇ~っと……なんかとりあえず丁重に祀ればいいんですね。わかりました」
アマテラス「それからオモイカネさん」
オモイカネ「はい……?戦力外の私に何か御用ですか……?」ボケー
アマテラス「何を言っているのですか!そなたは戦力外などではありません!」
オモイカネ「は……?」
アマテラス「わたくしがそなたをニニギに同行させることにしたのは、そなたに葦原の中つ国の政治を司らせるためです」
オモイカネ「……!?」
アマテラス「確かに、そなたがいなくても高天原の政治はどうにかなります」
アマテラス「しかし、それは高天原が別天津神様のご威光の遍く行き渡る平和な国だからです」
アメノウズメ「まぁ、確かに高天原じゃあ大してトラブルも起きないからね」
アマテラス「そのとおり。未だどこに反乱者がいるとも知れぬ葦原の中つ国とは事情が異なります」
ニニギ「う~む……国譲りが済んだと言っても、完全に平定されたわけではないのか……」
アマテラス「故に、わたくしはオモイカネさんに葦原の中つ国を託すことにしたのです」
オモイカネ「……!!」
アマテラス「万事に明るいそなたであれば、きっとニニギを補佐して葦原の中つ国を良い国にしてくれることでしょう」
アマテラス「期待していますよ、オモイカネさん♪」ニッコリ
オモイカネ「……ア、アマテラス様ぁぁぁ~!!!」ナミダドバー
ニニギ&ウズメ(こいつ、ちょろいなぁ~……)
アマテラス「オモイカネさんも立ち直ったところで、そろそろ出発としましょうか」
ニニギ「はい。私は準備万端ですよ!」キラリンッ☆
アマテラス「よろしい。では改めて――」
アマテラス「お行きなさい、ニニギ!!」バーン!!
アマテラス「そして、ニニギ見守り戦隊☆五伴緒ジャー!!」ババーン!!
アマテラス「あと、その他3名!!」バババーン!!
ニニギ「行くぞ、皆の者!!」
アメノウズメ「だから“五伴緒ジャー”はやめて!!」
オモイカネ「あれ!?結局“その他”扱い!!??」
―――――――
――――
――
<高天原:別天津神室>
ミナカヌシ「さて……」
ミナカヌシ「久しぶりに私たちの出番のようだね」
カムムスヒ「久しぶり……ですか?タカミムスヒはこのところ出ずっぱりでしたけど?」
タカミムスヒ「……!?」ギクッ
ミナカヌシ「そう言えばそうだった!タカミムスヒ、君ばかり出番をもらってズルいぞ!」
タカミムスヒ「……!」アセアセ
ミナカヌシ「えっ?カムムスヒも3話前に出てる??」
カムムスヒ「!?」ギクッ
ミナカヌシ「本当だ!私だけのけ者にするなんて酷いじゃないか!!」
カムムスヒ「し、仕方ないじゃないですか!実際古事記にも書いてあるんですから!」
ミナカヌシ「ハァ……造化三神も残酷な格差社会なのだね……」シュン…
タカミムスヒ「……」ポンポン(肩を叩く音
カムムスヒ「あ~もう、いじけないでください。そんな愚痴を言うために呼ばれたわけではないでしょう?」
ミナカヌシ「……そうだね。呼ばれたからには、きちんと仕事はしてあげるとしよう」
タカミムスヒ「……」
ミナカヌシ「ふむ、どうやらニニギたちが葦原の中つ国へ向けて出発したようだね」
カムムスヒ「それにしても、三種の神器を全てニニギに託すとは、アマテラスも奮発したものです」
ミナカヌシ「大事なスサノオからの贈り物まで手放すとは、意外だったね」
タカミムスヒ「……」ウンウン
カムムスヒ「従者にも高天原の主要な神ばかり指名していましたし、少々甘やかしすぎでは?」
ミナカヌシ「まぁ、やはり孫というのは可愛いものなんだろうね」
タカミムスヒ「……」ウンウン
ミナカヌシ「孫と言えば……タカミムスヒも意外と野心家なんだなぁ~」ニヤニヤ
タカミムスヒ「……?」
ミナカヌシ「とぼけたって無駄だよ。あんな露骨に自分の近親者に実権を握らせておいて」ニヤニヤ
カムムスヒ「確かに、ニニギはタカミムスヒの孫でもありますし、政治担当のオモイカネもタカミムスヒの御子ですね」
ミナカヌシ「これじゃあ実質タカミムスヒが葦原の中つ国の支配者みたいじゃないか」ニヤニヤ
タカミムスヒ「……!」アセアセ
ミナカヌシ「まぁ、別に私は誰が支配者でも構わないけどね♪」クスクス
ミナカヌシ「ところで、この後“例の二柱”は五十鈴宮に祀られるんだろう?」
カムムスヒ「そうですね。五十鈴川のほとりの、いわゆる伊勢神宮に祀られます」
ミナカヌシ「でも、後世では伊勢神宮の祭神はアマテラスだけになってしまっているよね?」
カムムスヒ「はい。“もう一柱”が誰だったのかという記録すら残っていないようです」」
カムムスヒ「大方、政治的ないざこざで“もう一柱”は除名された、といったところでしょうか?」
ミナカヌシ「ともすればツートップになれたかもしれなかったのに、惜しかったなぁ~」
タカミムスヒ「…………」
カムムスヒ「外宮のトヨウケノカミは変わらず渡会で祀られ続けているんですけどね」
ミナカヌシ「要するに、トヨウケは世渡り上手ってことかな?」
カムムスヒ「それはどうでしょうか……?」
ミナカヌシ「どれ、他のメンバーの未来についても見てみようか」
タカミムスヒ「……」イェーイ
カムムスヒ「アメノイワトワケには、クシイワマドやトヨイワマドといった別名が付くようですね」
ミナカヌシ「そうして、宮廷の御門の守り神として祀られるわけか。なかなかの出世ぶりだ」
カムムスヒ「一方、アメノタヂカラオは佐那の地に祀られるようですよ」
ミナカヌシ「佐那なら神宮とも近いし、悪くない立地だね」
カムムスヒ「五伴緒はそれぞれ――」
ミナカヌシ「“五伴緒ジャー”だろう?ほら、Repeat after me――」
カムムスヒ「アメノコヤネが中臣連(なかとみのむらじ)、フトダマは忌部首(いみべのおびと)の祖神で……」
ミナカヌシ「無視!?」
タカミムスヒ「……♪」クスクス
カムムスヒ「アメノウズメは猿女君(さるめのきみ)、イシコリドメは作鏡連(かがみづくりのむらじ)、タマノオヤはそのまま玉祖連(たまのおやのむらじ)の祖神となったようです」
ミナカヌシ「はいはい、説明ご苦労さま~」ケッ
カムムスヒ「くだらない無駄絡みをスルーされたからって、勝手にいじけないでください」
ミナカヌシ「無駄絡っ……!?カムムスヒ、君はユーモアってものが――」
カムムスヒ「あ~ほら、もう尺がありません。うだうだ言っていないで早く締めますよ」
ミナカヌシ「いや、尺なんて毎回まちまちなんだからどうでもいいだろう?」
ミナカヌシ「そんなことより、君はもう少し私に対して敬意を――」
カムムスヒ「それでは、“天孫降臨神話/出発編”はこれにてお開き。また来週のお楽しみです」
ミナカヌシ「あっ、こら!勝手に締めるんじゃない、カムムスヒ!」ギャーギャー
カムムスヒ「これ以上続けても仕方ないでしょう?終わりです、お・わ・り!」
ミナカヌシ「久しぶりの私の出番を終わらせるなぁ~!!」
タカミムスヒ「……」バイバーイ
―完―
【キャスト】
・アマテラス
・アメノウズメ
・ニニギ
・オモイカネ
・アメノミナカヌシ
・タカミムスヒ
・カムムスヒ
作:若布彦(助けて造化三神!説明パートじゃSSが書けないの!!)
・・・次のお話はこちら⇒“天孫降臨神話/到着編”
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[“猿田毘古神話”の続き]
――葦原の中つ国へ降りるニニギにアマテラスが餞別を渡しまくるお話
<高天原>
アマテラス「さて、ウズメさんの働きのおかげで、葦原の中つ国への案内役を得ることができました」
アマテラス「これで安心してニニギを送り出せます」ホッ
アメノウズメ「まぁ、これまでもバンバン行き来してたし、今さら案内役なんて必要ないけどね~」
アマテラス「何を言っているのです、ウズメさん!山をナメているのですか!?」
アメノウズメ「えっ、なんで唐突に山!?」
アマテラス「葦原の中つ国から見れば高天原は雲の上の国……」
アマテラス「つまり、天降りはエベレストから下山するようなものです!」
アメノウズメ「全然違うから!中つ国に降りる途中で遭難した、なんて話も聞いたこと無いし!」
アマテラス「わかっていませんね、ウズメさん。そういう油断が、山では命取りになるのですよ」
アメノウズメ「いや、だから山じゃないって」
アマテラス「何にせよ、案内役がいるに越したことはありません。備えあれば憂いなしです」
アメノウズメ「はいはい……」
アマテラス「しかし、考えてみれば案内役が国津神のサルタヒコさんだけというのも少々不安ですね……」
アメノウズメ「そうかい?さすがに途中で迷ったりはしないと思うけど??」
アマテラス「いいえ、山では何が起こるかわかりません。常に二重、三重の保険をかけねば……」
アメノウズメ「だから山じゃない……って言うか、それ山と関係ないでしょ!」
アマテラス「ここはやはり、天津神からも優秀な側近を同行させましょう!」
アメノウズメ「……まぁ、中つ国を統治するのにも手は要るし、側近を付けるのはいいと思うけど」
アメノウズメ「それで、誰を同行させるんだい?」
アマテラス「そうですねぇ……諸々の知識や判断力、緊急時の対応力等を勘案すると――」
アマテラス「アメノコヤネさん、フトダマさん、ウズメさんにイシコリドメさん……」
アマテラス「それから、タマノオヤさんでどうでしょうか?」
アメノウズメ「ひぃ、ふぅ、みぃ……」
アメノウズメ「合わせて五柱か。なんか戦隊モノみたいだね」
アマテラス「では、この五柱を“ニニギ見守り戦隊☆五伴緒(いつとものお)ジャー”と名付けましょう」
アメノウズメ(うわっ、名前ダッサ……)
アマテラス「よろしく頼みますよ、“伴緒ピンク”さん!」
アメノウズメ「……は?何の話――」
アメノウズメ「って、よく見たらしれっとアタシもメンバーに入ってんじゃん!!」
アマテラス「サルタヒコさんの素性を明らかにしたそなたの働きは見事なものでした」
アマテラス「そんなそなたの手腕を見込んでの大抜擢ですよ!おめでとうございます!」
アメノウズメ「えぇっ!?この(ダッサい)戦隊入りは栄転扱いなのかい!?」
アマテラス「当然です!ニニギの側近なのですから、最高の処遇ではないですか!」
アメノウズメ「……(めんどくさ……)」
アメノウズメ「まぁ、お嬢がそうしろって言うんなら構わないけどさぁ……」
アマテラス「では改めて、よろしく頼みますよ、“伴緒ピンク”さん♪」
アメノウズメ「その呼び方はマジで勘弁して!!」
―――――――
――――
――
<後日>
――ザワザワ
アマテラス「ついに出発の日がやってきましたね、ニニギ」
ニニギ「私の統治者デビュー記念日として申し分ない、良い日和です」キラリンッ☆
アマテラス「では、そなたに餞別としてこれを授けましょう」スッ
ニニギ「これは……」
アマテラス「いつぞやの岩戸籠りの際、“わたくしの神々しさを崇めるために”天津神の皆さんが造った勾玉と鏡です」
アメノウズメ(ねぇ、“天岩戸神話”ってそんな話だったっけ?)ヒソヒソ
オモイカネ(いえ、全然違いますね)ヒソヒソ
アメノウズメ(お嬢……ニニギが生まれる前の話だからって“盛った”な……)ヒソヒソ
アマテラス「それから、この草薙の剣もそなたに授けましょう」スッ
ニニギ「うわっ、なにやら妖しげな剣ですね……。ってか、生臭っ!」
アマテラス「これはスサノオからわたくしへの愛の籠ったプレゼントなので、本当は手放したくないのですが……」
ニニギ「いや、そんなに大事なものなら結構ですよ……。なんか爬虫類っぽい臭いしますし……」
アマテラス「いえ、遠慮せず受け取ってください。きっとスサノオがそなたを守ってくれます」
ニニギ「はぁ……ありがとうございます……(うぇぇ~……)」
アマテラス「さ・ら・に!今回はなんと、出血大サービスで――」
ニニギ「えっ!?まだ餞別があるんですか??」
アマテラス「フフッ♪可愛いニニギのためですからね。今回だけ特別ですよ♪」ウキウキ
オモイカネ「あのぉ~……」
アマテラス「何ですか、オモイカネさん?せっかくのプレゼントタイムに水を差さないでください」
オモイカネ「いや……あまり餞別を奮発しすぎるのもどうかと思いますよ?」
アメノウズメ「そんなケチ臭いこと言うなよ、オモイカネ~。最後の機会なんだから」
アマテラス「そうですよ!伴緒ピンクさんの仰るとおりです!」
オモイカネ「伴緒ピンク??」
アマテラス「そう言えば説明がまだでしたね。実はウズメさんはニニギ見守り戦隊☆五伴緒ジャーのピンク担当で――」
アメノウズメ「ワーワーワーッ!!!!」
アメノウズメ「と、とにかく!同行組のアタシとしては餞別は多い方が助かる!!」
オモイカネ「そうは言っても、資産を流出しすぎると高天原が財政が悪化しますし……」
アマテラス「その点はご心配なく!必要なものはちゃんと残すように考えています!」
アメノウズメ「おっ、さすがお嬢!意外と抑えるとこは抑えてんだね!」
オモイカネ「それならいいのですが……」
ニニギ(要するに、出血大サービスって言っても大したものはもらえないのかぁ……)
アマテラス「では改めて――」
アマテラス「出血大サービスで――」ドドドドドッ
アマテラス「オモイカネさんとタヂカラオさんとアメノイワトワケさんもお付けします!!」バーン!!
アマテラス「わぁ~~」パチパチパチパチ
ニニギ「……」
アメノウズメ「……」
オモイカネ「……」
アマテラス「わぁ~~」パチパチパチパチ
――スンッ
アマテラス「コホン……ということでオモイカネさん、よろしく頼みますよ」
オモイカネ「ちょ、ちょっと待ってください!私に葦原の中つ国へ降りろと!?」
アマテラス「はい。聞こえませんでしたか?」
オモイカネ「ですが、先ほど“高天原に必要なものはちゃんと残す”と……」
アマテラス「ですから、こちらでの祭祀に使う祭具や宝物はきちんと取り置いていますよ?」
オモイカネ「物ではなくて、私は必要ではないんですか!?」
アマテラス「あぁ~……まぁ、オモイカネさんがいなくてもどうにかなりますよ」アッケラカーン
オモイカネ「そ、そんなぁ……」ガーン!!
アメノウズメ「必要とされてなくて残念だったね、オモイカネ♪」シシシッ
オモイカネ「……うるさいですよ、“伴緒ピンク”さん」イラッ
アメノウズメ「あんた喧嘩売ってんのかい……?」イライラッ
オモイカネ&ウズメ「ガルルルルル……」バチバチ
アマテラス「そなたたち!ニニギの晴れの日に喧嘩はやめなさい、みっともない!」
オモイカネ&ウズメ「ふんっ!」プイッ
アマテラス「さて……ニニギ、わたくしからの餞別は以上ですが、不足はありますか?」
ニニギ「宝物も従者も、これだけいただければ十分です。ありがとうございます」
アマテラス「そうですか。では、この鏡はわたくしの御魂として、わたくしを拝むようにお祀りなさい」
ニニギ「えぇ~っと……なんかとりあえず丁重に祀ればいいんですね。わかりました」
アマテラス「それからオモイカネさん」
オモイカネ「はい……?戦力外の私に何か御用ですか……?」ボケー
アマテラス「何を言っているのですか!そなたは戦力外などではありません!」
オモイカネ「は……?」
アマテラス「わたくしがそなたをニニギに同行させることにしたのは、そなたに葦原の中つ国の政治を司らせるためです」
オモイカネ「……!?」
アマテラス「確かに、そなたがいなくても高天原の政治はどうにかなります」
アマテラス「しかし、それは高天原が別天津神様のご威光の遍く行き渡る平和な国だからです」
アメノウズメ「まぁ、確かに高天原じゃあ大してトラブルも起きないからね」
アマテラス「そのとおり。未だどこに反乱者がいるとも知れぬ葦原の中つ国とは事情が異なります」
ニニギ「う~む……国譲りが済んだと言っても、完全に平定されたわけではないのか……」
アマテラス「故に、わたくしはオモイカネさんに葦原の中つ国を託すことにしたのです」
オモイカネ「……!!」
アマテラス「万事に明るいそなたであれば、きっとニニギを補佐して葦原の中つ国を良い国にしてくれることでしょう」
アマテラス「期待していますよ、オモイカネさん♪」ニッコリ
オモイカネ「……ア、アマテラス様ぁぁぁ~!!!」ナミダドバー
ニニギ&ウズメ(こいつ、ちょろいなぁ~……)
アマテラス「オモイカネさんも立ち直ったところで、そろそろ出発としましょうか」
ニニギ「はい。私は準備万端ですよ!」キラリンッ☆
アマテラス「よろしい。では改めて――」
アマテラス「お行きなさい、ニニギ!!」バーン!!
アマテラス「そして、ニニギ見守り戦隊☆五伴緒ジャー!!」ババーン!!
アマテラス「あと、その他3名!!」バババーン!!
ニニギ「行くぞ、皆の者!!」
アメノウズメ「だから“五伴緒ジャー”はやめて!!」
オモイカネ「あれ!?結局“その他”扱い!!??」
―――――――
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――
<高天原:別天津神室>
ミナカヌシ「さて……」
ミナカヌシ「久しぶりに私たちの出番のようだね」
カムムスヒ「久しぶり……ですか?タカミムスヒはこのところ出ずっぱりでしたけど?」
タカミムスヒ「……!?」ギクッ
ミナカヌシ「そう言えばそうだった!タカミムスヒ、君ばかり出番をもらってズルいぞ!」
タカミムスヒ「……!」アセアセ
ミナカヌシ「えっ?カムムスヒも3話前に出てる??」
カムムスヒ「!?」ギクッ
ミナカヌシ「本当だ!私だけのけ者にするなんて酷いじゃないか!!」
カムムスヒ「し、仕方ないじゃないですか!実際古事記にも書いてあるんですから!」
ミナカヌシ「ハァ……造化三神も残酷な格差社会なのだね……」シュン…
タカミムスヒ「……」ポンポン(肩を叩く音
カムムスヒ「あ~もう、いじけないでください。そんな愚痴を言うために呼ばれたわけではないでしょう?」
ミナカヌシ「……そうだね。呼ばれたからには、きちんと仕事はしてあげるとしよう」
タカミムスヒ「……」
ミナカヌシ「ふむ、どうやらニニギたちが葦原の中つ国へ向けて出発したようだね」
カムムスヒ「それにしても、三種の神器を全てニニギに託すとは、アマテラスも奮発したものです」
ミナカヌシ「大事なスサノオからの贈り物まで手放すとは、意外だったね」
タカミムスヒ「……」ウンウン
カムムスヒ「従者にも高天原の主要な神ばかり指名していましたし、少々甘やかしすぎでは?」
ミナカヌシ「まぁ、やはり孫というのは可愛いものなんだろうね」
タカミムスヒ「……」ウンウン
ミナカヌシ「孫と言えば……タカミムスヒも意外と野心家なんだなぁ~」ニヤニヤ
タカミムスヒ「……?」
ミナカヌシ「とぼけたって無駄だよ。あんな露骨に自分の近親者に実権を握らせておいて」ニヤニヤ
カムムスヒ「確かに、ニニギはタカミムスヒの孫でもありますし、政治担当のオモイカネもタカミムスヒの御子ですね」
ミナカヌシ「これじゃあ実質タカミムスヒが葦原の中つ国の支配者みたいじゃないか」ニヤニヤ
タカミムスヒ「……!」アセアセ
ミナカヌシ「まぁ、別に私は誰が支配者でも構わないけどね♪」クスクス
ミナカヌシ「ところで、この後“例の二柱”は五十鈴宮に祀られるんだろう?」
カムムスヒ「そうですね。五十鈴川のほとりの、いわゆる伊勢神宮に祀られます」
ミナカヌシ「でも、後世では伊勢神宮の祭神はアマテラスだけになってしまっているよね?」
カムムスヒ「はい。“もう一柱”が誰だったのかという記録すら残っていないようです」」
カムムスヒ「大方、政治的ないざこざで“もう一柱”は除名された、といったところでしょうか?」
ミナカヌシ「ともすればツートップになれたかもしれなかったのに、惜しかったなぁ~」
タカミムスヒ「…………」
カムムスヒ「外宮のトヨウケノカミは変わらず渡会で祀られ続けているんですけどね」
ミナカヌシ「要するに、トヨウケは世渡り上手ってことかな?」
カムムスヒ「それはどうでしょうか……?」
ミナカヌシ「どれ、他のメンバーの未来についても見てみようか」
タカミムスヒ「……」イェーイ
カムムスヒ「アメノイワトワケには、クシイワマドやトヨイワマドといった別名が付くようですね」
ミナカヌシ「そうして、宮廷の御門の守り神として祀られるわけか。なかなかの出世ぶりだ」
カムムスヒ「一方、アメノタヂカラオは佐那の地に祀られるようですよ」
ミナカヌシ「佐那なら神宮とも近いし、悪くない立地だね」
カムムスヒ「五伴緒はそれぞれ――」
ミナカヌシ「“五伴緒ジャー”だろう?ほら、Repeat after me――」
カムムスヒ「アメノコヤネが中臣連(なかとみのむらじ)、フトダマは忌部首(いみべのおびと)の祖神で……」
ミナカヌシ「無視!?」
タカミムスヒ「……♪」クスクス
カムムスヒ「アメノウズメは猿女君(さるめのきみ)、イシコリドメは作鏡連(かがみづくりのむらじ)、タマノオヤはそのまま玉祖連(たまのおやのむらじ)の祖神となったようです」
ミナカヌシ「はいはい、説明ご苦労さま~」ケッ
カムムスヒ「くだらない無駄絡みをスルーされたからって、勝手にいじけないでください」
ミナカヌシ「無駄絡っ……!?カムムスヒ、君はユーモアってものが――」
カムムスヒ「あ~ほら、もう尺がありません。うだうだ言っていないで早く締めますよ」
ミナカヌシ「いや、尺なんて毎回まちまちなんだからどうでもいいだろう?」
ミナカヌシ「そんなことより、君はもう少し私に対して敬意を――」
カムムスヒ「それでは、“天孫降臨神話/出発編”はこれにてお開き。また来週のお楽しみです」
ミナカヌシ「あっ、こら!勝手に締めるんじゃない、カムムスヒ!」ギャーギャー
カムムスヒ「これ以上続けても仕方ないでしょう?終わりです、お・わ・り!」
ミナカヌシ「久しぶりの私の出番を終わらせるなぁ~!!」
タカミムスヒ「……」バイバーイ
―完―
【キャスト】
・アマテラス
・アメノウズメ
・ニニギ
・オモイカネ
・アメノミナカヌシ
・タカミムスヒ
・カムムスヒ
作:若布彦(助けて造化三神!説明パートじゃSSが書けないの!!)
・・・次のお話はこちら⇒“天孫降臨神話/到着編”
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