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[“国土修理固成神話”の続き]
――いい感じに塩を固めて造ったオノゴロ島に降り立ったイザナギとイザナミのお話

<オノゴロ島>

イザナギ「着いたぞ、イザナミ!」スチャッ

イザナミ「もう!島ができて嬉しいのはわかるけど、いきなり飛び降りないでよ~」

イザナギ「いいじゃん、死ななかったんだし」

イザナミ「……まぁいいけど」

イザナギ「しかし、降りてみたはいいものの、吹きっつぁらしで落ち着かないなぁ」

イザナミ「そりゃあまだ形ができたばかりだもの。これから本格的に整備しなきゃね」

イザナギ「じゃあとりあえずここに柱を立てて、御殿でも造るか」

イザナミ「えっ?ホントにこんなところでいいの?もっと立地とかちゃんと考えた方が良くない?」

イザナギ「でも、せっかくイザナミと一緒に初めて降り立った記念の場所だし……」

イザナミ(記念の場所……?イザナギと私だけの……記念の……)

イザナミ「やっぱり私もここがいい☆」キャピッ

イザナギ「よし、そうと決まったら早速――」スッ

イザナミ「あっ、カムムスヒ様から貰ったヤツ!!」

イザナギ「ふっふっふっ、これをこうして、こうやって――」シュッ…トントン


イザナギ「“Hey Siri”」

Siri「ご用件は何でしょう?」

イザナミ「喋った!すっご~い!天の沼矛より、ずっとスゴい!!」

イザナギ「“カムムスヒ様に電話”!」

Siri「カムムスヒちゃんに電話をかけています……」

イザナギ&ナミ(“ちゃん”呼び!?)


―ガチャッ

カムムスヒ『もしもし?イザナギかい?』

イザナギ「はい、カムムスヒ様!」
イザナミ「私もいますよ、カムムスヒ様!」

カムムスヒ『フフッ、どうやら無事一つ目の島ができたようだね』

イザナギ「そうなんです。それで、お願いがあるのですが……」

カムムスヒ『何だい?ちなみに太くて大きな丸太と、建築資材はひと通り手配したよ』

イザナギ「えぇっ!?本当ですか!?」

イザナミ「さすがカムムスヒ様!何でもお見通しですね!」

カムムスヒ『何でもではないさ。私にわかるのは、知っていることだけだよ』

イザナギ「では、早速取りに伺います!」

カムムスヒ『その必要は無いよ。さっき佐川で送ったから、じきに届くんじゃないかな?』

イザナミ「何から何まで……本当に助かります」

カムムスヒ『なぁに、造化三神は見ているだけで役に立たないポンコツばかりだと思われたら困るからね(クスクス』

イザナギ「そ、そんなこと思いませんよ!」

イザナミ「そうですよ!ポンコツ“ばかり”だなんてとんでもない!比率的には――」

カムムスヒ『それじゃあ、引き続きよろしく頼むよ』

―ガチャッ


イザナギ「ふぅ、こんなにもあっさり資材が手に入るなんてなぁ」

イザナミ「じゃあ、資材が届くまでしばらくお茶でも――」


―ズドォォォォォォン!!!!!!!!


イザナギ「おわっ!?な、なんだなんだ!!??」

イザナミ「何か大きなものが落ちてきた気配が……って、これは!!」



イザナギ「丸太……だな」ボケー

イザナミ「待って!まだ何か落ちてくる!!早く逃げなきゃ!!」


―ズドォォォォォォン!!!!!!!!
―ウァァァァァァ!!!!!!!!


―ズドォォォォォォン!!!!!!!!
―キャァァァァァァ!!!!!!!!


―ズドォォォォォォン!!!!!!!!
―ダレカタスケテー!!!!!!!!


イザナギ「あ……あぶなかったぁ……」ハァハァ

イザナミ「ちびるかと思った……」ハァハァ

イザナギ「まったく、木材の雨が降るなんて天気予報でも言ってなかったのに!」

イザナミ「木材……?あっ、もしかしてこれがカムムスヒ様の送ってくれた資材なんじゃ……」

イザナギ「えっ!?……いやいや、そういう荷物なら普通もっと丁寧に届けるでしょ」

イザナミ「でも“佐川で送った”って言ってたし……」

イザナギ「これが“佐川の荷物投げ”か!……って、いくらなんでも客に投げつけるなよ!!」

イザナミ「とりあえず受け取りのサインしなきゃ」

イザナギ「サインったって、配達員どこだよ!?」

イザナミ「あそこ!」

イザナギ「あー、確かに天の浮橋に誰かいるっぽいな……」

イザナミ「天の沼矛の先に墨を付けて……っと」チョチョイ

イザナギ「リーチの長い筆記用具扱い!?」

イザナミ「ホント、ミナカヌシ様の仰っていたとおり、天の沼矛って“何かと便利”ね」

イザナギ「そういう便利さでいいのか……?」



イザナギ「ま、まぁとにかく、資材も届いたことだし建築作業に取り掛かろう」

イザナミ「えぇ~、お茶は~?パンケーキは~?タピオカは~?」

イザナギ「ちんたらしてるといつまで経っても終わらないぞ。イザナミだって早くマイホームほしいだろ?」

イザナミ(マイホーム……私たちの……愛の巣!?)

イザナミ「私頑張る☆」キャピッ

イザナギ「よし、じゃあまず最初に届いたこの丸太を柱にして――」

―――――――
――――
――


<オノゴロ島:八尋殿>

イザナギ「いやぁ~、思ったよりあっさり完成したな!」

イザナミ「すごーい!めっちゃオシャレでインスタ映えしそう☆」

イザナギ「とりあえず、最初に立てたこの柱は“天の御柱”と名付けよう」

イザナミ「じゃあこのお家は“45坪くらい殿”ね!」

イザナギ「いや、ダサっ!ネーミングセンスがミナカn――」

イザナミ「待って、それ以上言わないで!!さすがにそれは耐えられない!!」

イザナギ「広さを由来にするにしてもさぁ、もっとこう…捻りを利かせて……」



イザナギ「“八尋殿”!一辺が八尋くらいだから、八尋殿にしよう!」

イザナミ「それで!!」



イザナギ「さて、じゃあ引き続き家具でも作るかなぁ~?」

イザナミ「えっ!?まだ作業するの??さすがにもう休みましょうよ」

イザナギ「いやいや、神なんだからこのくらい余裕だろ?」

イザナミ「やだやだぁ~、私もう疲れたもん=3」

イザナギ「やれやれ、イザナミはすぐ疲れるんだなぁ。いったいどんな(軟弱な)身体してるんだ?」

イザナミ「えっ!?」

イザナギ「???」



イザナミ(イザナギが私の身体に興味を……。これってもしかして……って言うか、どう考えても)



イザナミ(誘われてる!!??)キューン!!



イザナミ「え、えっと……その、私の身体には、これだけ成長しても、まだ成長し足りないところが一箇所あります……///」


イザナギ(ん?何言ってんだ??頭が足りてないって話かな??)

イザナギ「そうか。俺はむしろ(イザナミに比べたら頭脳が)あり余ってるくらいかな」


イザナミ(キャーwwwなに言ってんの、イザナギのエッチ!!)アワアワ

イザナミ「そ、その余っているもので私をどうしようって言うの///」


イザナギ(どうもこうも、一緒に国造りしないといけないわけだし……)

イザナギ「もちろん、イザナミの足りないところを俺が補って、国を――」

イザナミ「わかったわ!イザナギがそこまで言うなら、結婚してあげる☆」


イザナギ「……」


イザナギ「はぁっ!?どうしてそうなった??」

イザナミ「それで、結婚式ってどうやるの?」

イザナギ「えっ!?えぇ~っと、それは……」


イザナミ「もしかして、知らないの……?」

イザナギ「し、知ってるさ!まず神聖な柱を男女で別々に回るだろ?」

イザナミ「ふぅ~ん。どっち回り?」

イザナギ「女が左回りで、男が右……」

イザナミ「それから?」

イザナギ「出逢ったところでお互いに愛を伝えあえば、それで契りは――」

イザナミ「OK、じゃあ早速やりましょう!Here we go!!」グイッ

イザナギ「うわっ、ちょっ!!」ズルズル

 ・
 ・
 ・

イザナミ「じゃあ、ここから私は右回り、イザナギは左回りね」

イザナギ「お、おい!イザナミ、話を――」

イザナミ「よーい、ドン♪」スタスタ

イザナギ「ヴェェェ!?」



イザナギ(ど、どうする?イザナミは何か勘違いしてるんじゃ……)トコトコ

イザナギ(やっぱりちゃんと話をして、誤解を解かないと……)トコトコ

イザナギ(俺とイザナミは一緒に生まれた、いわば兄妹なんだから、結婚なんて……)


―ピタッ


イザナミ「あっ……///」

イザナギ(とかなんとか考えてるうちに出逢ってしまったぁぁぁ!!)

イザナギ「あの……///」

イザナギ(早く出ろよ、言葉!仕事しろよ、俺の口ぃぃぃ!!!)


イザナミ「あぁ……なんて素敵な殿方なのでしょう……///」ウルルン


イザナギ(やめろぉぉぉ!!そんな上目遣いで俺を見るなぁぁぁ!!!)

イザナギ(落ち着け!俺の妹がこんなに可愛いわけがない!!)

イザナギ(そうだ、冷静になってよく見れば、イザナミなんて――)


イザナミ「……///」モジモジ

イザナギ「あぁ……なんて素敵な乙女なのだろう(白目」

イザナミ「やぁ~ん♪イザナギ大好きぃぃぃ~☆☆」ギュー!!



イザナギ「ハハッ……女から先に声掛けるのは良くないよな……。そんなことされたら、耐えられるわけないよな……(白目」

―――――――
――――
――


<しばらく後>

イザナギ「頑張れイザナミ!ほら、“ヒッ・ヒッ・フー”」

イザナミ「ヒッ・ヒッ・フーヒッ・ヒッ・フーヒッ・ヒッ……く、苦し……」

イザナギ「吸えぇぇぇ!!“ヒッ・ヒッ・フー”の後、ちゃんと息を吸えぇぇぇ!!」

イザナミ「よくわかんない……あなた、お手本……」

イザナギ「よし、よ~く見てろ!」

イザナギ「ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ) ヒッ・ヒッ・フー(ハッ)」



イザナミ「よしよぉ~し、パパは何やってるんでちゅかねぇ~?」

イザナギ「旦那が必死にラマーズ法やってる隙にしれっと出産するのやめて!!」

イザナミ「……。ねぇあなた、なんだかこの子――」

イザナギ「ん?」

イザナギ「こ、これは……」

―――――――
――――
――


<またしばらく後>

イザナミ「グスッ……グスッ……どうして……」

イザナギ「イザナミ……」


イザナギ(最初に生まれたのは不具の水蛭子(ヒルコ)だったから、泣く泣く葦の船に乗せて流した……)

イザナギ(今度こそはと思ったのに、次に生まれた淡島(アワシマ)も……)

イザナギ(このまま私たちの間にはちゃんとした子が生まれないのだろうか……)


イザナミ「一体、何がいけないの……?私たち、こんなに愛し合っているのに……(シクシク」

イザナギ(これ以上イザナミに涙を流させるわけにはいかない……。それなら……)

イザナギ「イザナミ、一度高天原に戻ろう」

イザナミ「なんで?あなたは私と二人っきりじゃもうイヤなの?私がろくな子を産めないから?」

イザナギ「そうじゃない!私もイザナミとの子が欲しいと思っているよ」

イザナミ「だったら早く次の子を作りましょうよ!!」

イザナギ「いや、これまでと同じようにして、またイザナミに悲しい思いをさせたくないんだ」

イザナミ「でも、どうすればいいかなんてわからないもん!!」

イザナギ「だから、それを訊きに行くんだ。さぁ、行こう?」



イザナミ「……“Hey Siri”」

Siri「ご用件は何でしょう?」

イザナギ「この流れで横着しようとするなよ!」

イザナミ「だって出産続きで疲れたんだもん……」

イザナギ「それなら私がおぶってやるから。ほら、一緒に行こう」

イザナミ「……それなら行く」ギュムッ!!

イザナギ「しっかり掴まっておくんだぞ」

イザナミ「……」ギュー!!!!

イザナギ「ヴッ!!イザナミ……締めすぎ……」

Siri(仲良しですねぇ……)


―完―

【キャスト】
イザナギ
イザナミ
Siri
カムムスヒ

作:若布彦(昔の人が私よりシュッとしてるなんて認められないので、1尋は5尺です)

・・・次のお話はこちら⇒”国生み・神生み神話

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