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[“天地開闢神話”の続き]
――天地が別れ、造化三神を含む別天津神と神世七代が生まれた後のお話

<高天原>

イザナギ「新技が完成したぞ、イザナミ!」

イザナミ「えぇ~、またくだらないヤツじゃないの?」

イザナギ「いやいや、今回は自信作だから。カムムスヒ様が見たら、キャラ作り忘れて素で噴き出すレベル!」

イザナミ「キャラ作りとか言わないの!中間管理職として苦労していらっしゃるんだから」

イザナギ「まぁとにかく見てみろって。いくぞぉ~……」



イザナギ「タカミムスヒ様の真似!」

イザナギ「……」ムスッ



イザナミ「……」

イザナミ「なにそれ、ウケる~☆☆」キャッキャッ

イザナギ「だろ?だろ?いやぁ~、自分の才能が怖い」ドヤァ!!


―ピンポンパンポーン


『イザナギ・イザナミ、至急、別天津神室まで来てください』

『繰り返します。イザナギ・イザナミ、至急、別天津神室まで来てください』


―ポンパンピンポーン


イザナギ「……あれ?」

イザナミ「これってもしかして、ヤバいパターン……?」

―――――――
――――
――


<高天原:別天津神室前>

イザナギ「あ、あの……」

カムムスヒ「おや、早かったね。それじゃあ早速中へ――」

イザナギ「カムムスヒ様!そ、その……俺…じゃなくて、私……」

イザナミ「あのっ!イザナギも別に悪気があったわけじゃないんです!ですからどうかご慈悲を!!」

イザナギ「いや!私はどんな罰でも受けます。ですが、イザナミは何も悪く――」

カムムスヒ「まぁまぁ、待ちなさい。君たち、何か勘違いしているようだね(クスクス」

イザナギ&ナミ「……勘違い?」

カムムスヒ「大丈夫、別に叱るために呼び出したわけではないよ。付いておいで」スッ

イザナギ「……?えっと、じゃあ……失礼いたします」ペコリ
イザナミ「失礼いたします」ペコリ

―――――――
――――
――


<高天原:別天津神室>

カムムスヒ「ミナカヌシ、タカミムスヒ、イザナギとイザナミが来ましたよ」

ミナカヌシ「やあ、早かったね」

タカミムスヒ「……」ムスッ
カムムスヒ「!」

ミナカヌシ「二柱(ふたり)とも、調子はどうだい?」

イザナギ「はい、特に変わりありません」
イザナミ「おかげさまで」

ミナカヌシ「それは良かった」
タカミムスヒ「……」
カムムスヒ「……」

ミナカヌシ「では、早速だけれど本題に入らせてもらうよ。カムムスヒ、例の物を――」
カムムスヒ「…………」

ミナカヌシ「カムムスヒ?」

カムムスヒ「……えっ?あ、はいっ!例の物ですね!」テテテッ



カムムスヒ「これを」スッ

ミナカヌシ「ありがとう。しかし、カムムスヒが目下の者の前で呆けるなんて珍しいね」

ミナカヌシ「なぁ、タカミムスヒ?(クスクス」
タカミムスヒ「……♪」

カムムスヒ「……(イラッ」

ミナカヌシ「何か気になることでもあるのかい?」

カムムスヒ「いえ、お気になさらず。さぁ、話を続けましょう」

ミナカヌシ「フフッ、そうだね」

イザナギ&ナミ(……???)



ミナカヌシ「さて、そなたたち、これが何だかわかるかい」スチャッ

イザナギ「槍……?いや、矛でしょうか?」

ミナカヌシ「正解だ。これは“天の沼矛(あめのぬぼこ)”といって、まぁ高天原の宝物の一つだよ」

イザナミ「確かに、とても美しい矛ですね」

ミナカヌシ「そうだろう?これをそなたたちに進ぜよう」

イザナギ「えっ!?そんな、畏れ多いです!!」

イザナミ「そうですよ!私たち、そのようなご褒美をいただくに値する働きはまだ何も――」

ミナカヌシ「いやいや、これは褒美というわけではないんだ。むしろ、“これを使って”働いてほしいんだよ」

イザナギ「……どういうことですか?」

ミナカヌシ「そなたたちも天の浮橋には行ったことがあるね?」

イザナミ「はい、何度かカムムスヒ様に連れて行っていただきました」

ミナカヌシ「そこから下界が見えただろう?正直に言って、どう思った?」

イザナギ「“どう”と言われましても……」
イザナミ「ただ脂のようなものが漂っていただけですし……」

ミナカヌシ「まぁそういう反応になるだろうね」

ミナカヌシ「しかし、私たちはあそこに美しい国を作らなければならないんだ。それが私たちの使命だからね」

イザナギ「美しい国ですか……?」
イザナミ「あんなところに……?」

ミナカヌシ「そう。だからそなたたちには、下界の地を固め、国土を整えてほしいんだ」

イザナギ「えぇっ!?」
イザナミ「そんな、どうやって!?」

ミナカヌシ「フフッ、心配いらないよ。これを使えばできるはずさ」シャキーン!!

イザナギ「天の沼矛にはそのような力が……?」

ミナカヌシ「そうだよ。この矛は何かと便利なんだ」

イザナミ「ですが、そのような大役、私たちにお任せいただいてよろしいのですか?」

ミナカヌシ「いいんだよ。天津神みんなでそう決めたからね」

イザナギ「“みんな”とは?」

ミナカヌシ「“みんな”は“みんな”さ。とにかく、これはもう決定事項なんだ。頼んだよ」

イザナギノミコト「えぇ~っと……わかりました。謹んで承ります!」
イザナミノミコト「ご期待に沿えるよう、精一杯頑張ります!」

ミナカヌシ「フフッ、頼もしいね。それじゃあ下がっていいよ」

イザナギ「はい!失礼いたします」ペコリ
イザナミ「失礼いたします」ペコリ

カムムスヒ「あっ!君たち、ついでにこれも持ってお行き」

イザナギ「こ、これは!?」

カムムスヒ「困ったときはいつでも私たちを頼りなさい」ニコッ

イザナミ「ありがとうございます、カムムスヒ様!!」

カムムスヒ「それじゃあ、二柱(ふたり)とも頑張るんだよ」

イザナギ&ナミ「はい!行ってまいります!!」テテテッ

 ・
 ・
 ・

カムムスヒ「ふぅ……」

ミナカヌシ「いやぁ~、意外と持ちこたえたね、カムムスヒ」ニヤニヤ
タカミムスヒ「……♪」

カムムスヒ「もう!からかわないでください!」

ミナカヌシ「それにしても、噴き出しそうになるのを必死にこらえる姿は面白かったなぁ」

カムムスヒ「タカミムスヒが悪いんですよ!真顔でいきなり“私の真似をするイザナギの真似!”なんて言い出すから!!」

タカミムスヒ「……」ムスッ

カムムスヒ「プッ!!」

ミナカヌシ「あっ、噴いた」

カムムスヒ「だ、だから変なこと言うのはやめてください、タカミムスヒ!!」

ミナカヌシ「フフッ、いっそ無理せず下の者の前でも素のキャラで通せばいいのに」

カムムスヒ「そうはいきません!私がしっかりしないと、造化三神にはまともな神がいないと思われかねませんから」

ミナカヌシ「心配しなくても、私がいるじゃないか」

カムムスヒ「えっ?」
タカミムスヒ「……?」



ミナカヌシ「……えっ?」

―――――――
――――
――


<天の浮橋>

イザナギ「さて、早速天の浮橋まで来てみたはいいものの……」

イザナミ「ほぇ~、やっぱり下界は遠いねぇ~」

イザナギ「思ったんだけど、この矛じゃ絶対届かなくないか?」

イザナミ「ふっふっふっ、そこは私に任せて☆」キラリンッ

イザナギ「えっ!?何かいい考えがあるのか?」

イザナミ「こういう時はね、こうやるの!」



イザナミ「「伸びよ、如意棒!!」」クワッ!!



―シーン



イザナミ「……てへぺろ♪」

イザナギ「いや、“てへぺろ♪”じゃないから。凄い寒い空気流れてるからね、今」

イザナミ「伸びると思ったんだけどなぁ~……」

イザナギ「伸びるか伸びないかはともかく、そもそもこれ如意棒じゃないから。天の沼矛だからね」

イザナミ「そっか!ひらめいた!!」

イザナギ「いやいや、なんか妙案みたいに言ってるけど、絶対名前のとこ変えるだけでしょ!」



イザナミ「「伸びよ、天の沼矛!!」」クワッ!!



―シーン



イザナミ「……てへぺろ♪」

イザナギ「うん、そうなると思った」

イザナミ「う~ん……どうやったら伸びるんだろう……?」

イザナギ「この期に及んでまだ伸びる可能性は諦めないんかい!」

イザナミ「えいっ、えいっ!伸びろっ、伸びろっ!」ブンブンッ!!

イザナギ「いやいや、そんな適当に振ったって伸びるわけが――」



―コォロ



イザナギ「ん?今、何か音が……」

イザナミ「えっ?なになに??」ブンブンッ!!



―コォロコォロ



イザナギ「やっぱりだ!天の沼矛を振る度にかき混ぜるような音がしてる!!」

イザナミ「あっ!よく見たら矛を向けた先がちょっと渦巻いてるよ!」フリフリ

イザナギ「そうか!この矛、実際の距離に関係なく、向ければ届くんだ!」

イザナミ「すっごーい!遠近法詐欺ってヤツ?」フリフリ

イザナギ「なんかそれは全然違う気がするけど、とにかくこの調子で頑張れ、イザナミ!」

イザナミ「えっ、もうムリ……。腕ヤバい……」

イザナギ「バテるの早っ!!ほら、一緒に持ってやるから頑張ろう」

イザナミ「……うん。イザナギが手伝ってくれるなら頑張る」



―コォロコォロ

―コォロコォロ

―コォロコォロ



イザナギ「見ろ、イザナミ!いい感じに塩が固まってきたぞ!」

イザナミ「…ゼェ…ゼェ……ほ、ホントだぁ~」

イザナギ「よぉし、あと一息だ!」

イザナミ「まだやるの!?」ガーン

 ・
 ・
 ・

イザナギ「できたぞ!塩が自ずから凝り固まってできたから、“オノゴロ島”だ!」

イザナミ「つ、疲れたぁ……」フラフラ

イザナギ「よし、イザナミ!早速降りてみよう」グイッ

イザナミ「ちょ、ちょっと待って!少し休ませ――」

イザナギ「よっ!」ピョンッ
イザナミ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!!」ミチヅレー



―ヒューーーー(落下音)

 ・
 ・
 ・

―完―

【キャスト】
イザナギ
イザナミ
カムムスヒ
アメノミナカヌシ
タカミムスヒ

作:若布彦(塩蔵)

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